ゴッドハンド小豆
私が休暇でいない間に負傷者がでたとのことだ。
どうやら前線での戦闘中に地雷を踏み抜いたらしい。運良く直撃はしなかったらしいが、負傷して後方へ退いてきたらしい。
小豆ちゃんが手当てをしている。『J.S』に乗り込んで、負傷者を台の上に乗せて何かやっている。
「呼吸、脈拍共に正常。出血量範囲内。施術、開始します。」
『J.S』の背中からライトが伸びてきて、腕からはマジックアームが2本出てきた。目の部分を覆うようにゴーグルが出てくる。手術が始まった。小豆ちゃんはゴーグルを見たまま手を動かし、2本のマジックアームを操っている。
見る見るうちに傷が縫合されていく。とても慣れた手つきだ。まるでベテラン医師かのような風格である。
「ふぅっ…。終わりました。お疲れ様でした。」
小豆のもとにわかばが駆け寄る。
「お疲れ様ー。」
「ああ、ありがとうございます。久しぶりにやったので、緊張しちゃいました。」
「そんなことないですよ。とてもスムーズでした。」
「はい。縫合糸はあんまりモタモタしてると感染症になっちゃうんで早くないといけないんですよ。」
何気ない会話を繰り広げられる今がとても幸せなんだと思う。事実、もうすでにうちの部隊からも離脱者が何人か出ている。衛生兵である小豆ちゃんはがんばっているが無理なものは無理なのだ。
中でも流れ弾が当たって通信兵が戦線離脱したのは大きかった。おかげでうちの通信環境はがたがただ。
「おーい二人とも。」
「司令官。どうかしましたか?」
「この前うちの通信兵が戦線離脱しただろう?その補充要員が来るらしいんだ。まだ正式な決定じゃないらしいからいつ来るかはわからないんだけれども、一応伝えておくだけ伝えておこうかと思って。」
「なんて人なんですか?」
「如月弥生って子らしい。」
「弥生…ちゃんですか…。」
「うむ。うちに来たときは仲良くしてあげるように。」
「はい。」
通信兵はうちの課題でもあった。通信兵がいないために情報戦で敵軍に劣っていたのだ。
近代戦において情報戦での敗北は死を意味する。勝利を得るためにも通信兵が必要なのだ。
通信兵、みんなだいすき通信兵。
私はそんなまだ見ぬ通信兵を待ち望むのであった。