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ミドル1

 翌朝、目が覚めると既にバリスもカイも起きているようだった。これは本当に急がないとまたセリアにどやされちまう。慌てて服を着替え軽く洗面で顔を洗う。そのまま広場へ向かうと今日はギリギリ間に合ったようだ。ただ、先に部屋を出ているはずのカイの姿が無い。

「おはようさん。年少組はまだ来てないのか? カイは俺より先に出たはずだけど」

 訓練前に柔軟をやっているバリスに聞いてみた。

「洗面で喧嘩してるのを見た。多分カイが昨日歯を磨かなかった件だろう」

「あれ、俺さっき洗面行ったけど居なかったぞ?」

「お前、急いでトイレの洗面で顔洗っただろう。じゃなくて風呂の方だ」

 宿舎は3階建てで、2階に男性用、3階が女性用となっている。1階の風呂場に洗面はあるのだが、面倒だったので俺は3階にもあるトイレの洗面で顔を洗ってきたのだった。

「相変わらず仲いいねぇ。ただ遅れてブレッドさんに怒られても知んねえぞ」

 ブレッドさんは今日俺たちの訓練に付き合ってくれる予定のストラガーの先輩だ。若干気配無いし無表情で怖いけど、いい人ではあると思う。うん。

「多分二人ともあんたにだけは言われたくないわよ。普段一番寝坊してるくせに」

 セリアが口を挟んでくる。

「俺は朝が弱いんだよ」

「弱いだけじゃなくて、いつも夜更かししてるからじゃないんです?」

 クロまでおかしそうにからかってくる。非道ひどい、今日は間に合ったのに! ギリギリだけど!

 そうして若干俺の立場がなくなりかけてるところに、(くだん)の二人がやってきた。カイはいつにも増してムスっとしている。

「ほらカイ! 急がないと遅れちゃうって! 早く早く!」

「うるさいなぁ。君がグチグチ言うから……」

「あんですって?」

「あぁもう良いから引っ張るなよ!」

 拗ねているカイの腕をレーナが引っ張ってくる。と、そこでブレッドさんが二人の頭をコツンと叩く。

「だが残念、既に一分遅れてる」

 レーナが飛び上がって驚き、そのまま何度も謝っている。カイもレーナに頭を無理やり押さえつけられて頭を下げる。特に厳しく追求するつもりも無いようで、ブレッドさんはすぐに俺たちの前に戻った。っていうかホントいつの間に来てたんだブレッドさん。


「さて、今日から君たちには大型の魔獣とも戦ってもらうよ。そろそろ安定して神器も扱えるようになってきたし、連携も出来てきたからな」

 開口早々、ブレッドさんは言った。正直そろそろかなとは思っていたので特に驚きはない。

 カイが呟く。

「やっとか。僕はとっくの昔から」

 セリアが呆れて言う。

「神器は使えてたけど連携は出来てなかったでしょ。一人で突っ込んで死にたいの?」

 ブレッドさんも同意見だったようで言った。

「そういうことだ。個々の力量より連携こそがそのチームの力に直結する。何度も教わっただろう?」

 それに対しカイはやはり不満げに

「別に俺は一人だって……」

 と、答えるがすぐにレーナが窘める。

「はーいはい駄々をこねない!」

 おほんと一つ咳払いをして、ブレッドさんが号令する。

「それじゃ全員もう一度隊列と役割の確認だ。構えて前から一人ずつ自分の役割を言え」



「前衛で敵の侵攻を食い止め、ラインを押し上げる」

 バリス。俺と同じ18歳でがっちりとした体格が特徴。口下手だし、青みがかった髪を短く刈り上げているのも相まって少し強面にも見えるけど、本当は優しい男だ。誠実で決断力もある皆の精神的な主柱。ま、つまりこのチームのリーダーだね。

 ロングソードと盾の神器を持つタンク役。と言いつつ火力も出せる頼れる前衛だ。


「神速の双剣を以て敵陣を切り崩し、殲滅する」

 カイ。15歳で年少組の片割れ。体格こそあまり大きくないが、とてもすばしっこい。服装がいつも黒っぽいし、髪や瞳も黒なので闇夜に紛れて暗殺とか得意そう(偏見)。ぶっきらぼうだし時々面白い言い回しするけど、意外と女性陣には可愛がられている。

 片刃の双剣を操り、瞬く間に複数の敵を切り伏せる。あまり敵の攻撃を受け止めるのは得意じゃないけど、回避して逆に攻撃を叩きこんだりとバリスとは違った意味で前衛を務めてくれる奴だ。


「中距離からの攻撃と防御。後衛に攻撃が行かないよう配慮しつつ前衛のサポートをする」

 ヘクター、つまり俺だね。神器は槍で攻守支援なんでもござれの万能型。ま、器用貧乏とも言うんだけど。これでも戦闘時は司令塔も兼ねてたりするんだぜ?


「先制と追い打ち担当かな。あとヤバい時は防御もするし、援護射撃もするし、うん、色々!」

 レーナ。カイと同じ15歳年少組。前向きな性格でチームの太陽みたいな子だ。真っ赤な髪を一つにまとめているのが印象的。因みに年少組って呼ばれるのはレーナとカイが大体いつも二人一緒にいるからだ。それも単にレーナがカイにひっついているからなんだけどね。

 弓と短剣の神器で遠距離攻撃を担ってくれてる。ポジションはガードも出来るということで俺と同じ中衛だが、俺が前衛よりの中衛ならばレーナは後衛よりの中衛だ。普段はやかましいが実は隠密行動や狙撃なども得意で俺とは別の意味で多芸。


「術による高火力広範囲好印象な3コウ攻撃担当。その代わり防御はからきしだからちゃんと守ってね騎士ナイトさん達♡」

 セリア。彼女も18歳で眩い金髪が映える一応美少女(それとデカい。どこがとは言わないけど)。一応って言うのは、つまり黙ってりゃ可愛いのにと言われるタイプで、まぁうん、口うるさい。実は料理が上手いし、良く言えば頼れるお姉さん枠?

 指輪型の神器で術攻撃を放つ。実際破壊力だけならピカイチ。ただ詠唱に時間かかる上に詠唱中無防備だし、術によっては味方巻き込むしで決して万能ではない。ってか好印象って何だよ。


「私は皆さんの回復が仕事ですね。そして防御術もします。誰も死なせません!」

 クローディア。皆クロって呼んでいる。澄んだ海のようなコバルトブルーの髪の間から覗く耳が妙にエロい。いや、決してイヤらしい目で見てるわけじゃないよ!? 性格は健気で純粋なセリアと違って可愛らしい女の子で普段は大人しいのだけど、好物のダンゴの話になった途端急に押しが強くなる。

 純ヒーラーで防御に限らず色々支援を飛ばしてくれもする。一応メイス型の神器なのでガードも出来るが、所詮「出来る」だけだ。だからやっぱり後衛に攻撃が行かない様注意しないといけないのは変わりない。



 以上6名のストラガーのチームが俺たち「レグネル」のメンバーだ。それぞれ生まれた場所や年齢などもバラバラだが、ほぼ同時期に神器を手に入れ、ここで集まって訓練を受けていた。

 俺たちストラガーは「神器」と呼ばれる武具を手に入れ、普通の人間を大きく超える力を引き出せるようになった。だがそれでも、一人ひとりの力はこの地上を我が物顔で独占し人間を家畜に貶めた魔人たちには遠く及ばない。だからこそ俺たちはチームを組み、力をあわせてこれに立ち向かう。そのための個々の戦い方を、チームの連携法を、俺達は今まで教わっていたのだった。


「今回の対象は東の森のジャイアントアントを倒してきてくれ。無論油断のならない相手だがお前たちが実力を発揮できれば苦戦することはない敵のはずだ。尚、私たちも今日サテュロスを狩りに行く予定だが、まだお前たちには骨が折れるだろう。万一見つけても手を出すなよ」

「「「「「「はい!」」」」」」

 それぞれ返事をするが、流石に皆声に多少の緊張があった。俺だってそうだ。

 特にクロはかなり固まっている。流石にもう少しリラックスしててもいいんじゃないかな。……まぁ、俺の隣で「よーっしやるぞー! 撃っちゃうぞ!」と、はしゃいでいるレーナ程じゃなくてもいいんだけど。この子はこの子で実戦ってのを理解してるのか不安になってくるなぁ……

 そんな事を考えているとバリスがブレッドさんに聞いた。

「出発は朝食後でしょうか?」

「あぁその予定だ」

「良かった。腹が減っているので先に頂きたかったんだ。ほら、皆取り敢えず飯を食べに行こう」

 その一言で皆普段の調子に戻る。そうだ、まだ起きて朝礼が終わっただけだ。もう少し出発まで時間はあるのだ。いつの間にかブレッドさんも居なくなっているようなので朝礼も終わりなのだろう。神器をしまい食堂へ向かう。

 ぐ~~

「あっ」

 セリアの腹の虫が鳴いた。

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