これが、現実だった。
ダルキメスの城の中
無茶苦茶広い。
実際、イエルスと比べたらどーなんだろ?
どっちが大きいかな?
んー…イエルスのお城はあの部屋しか知らないから
比べられないか
で、こんなことどうでもいい
あたしを拾った青年、スタルが魔王様だったこと、
これ重要!!
いやはや、異世界召喚で大変な事に巻き込まれたな~
その問題のスタルはむこうでミヤコさん(メイドさんね)と話してるし…
説明してよ~
現状把握に忙しく頭を動かす。
まず、スタル=魔王なわけで
あたしが召喚された国、イエルスの敵の可能性が在る。
だってこれフラグでしょう
だいたい、主人公が異世界に召喚され、魔王を倒せと人間の国王様に言われる。
こういうのが典型的な筈…。
でも、イエルスの国王(がっつりショタっ子)、ウィーダが「貴女は、この国のシンボル」とか言ってたから
もしかするとただの相談役として召喚されたのかも…
こういう事は召喚した本人達に聞けばいいのだが
あいにく、聞く前に逃げた。
これが良かった事なのか悪かった事なのかもわからない。
そういえば、コントラットという関西弁のアホっぽい人物(?)が「契約を交わした」と、
言ってたよね。
彼はもしかすると『ナビゲーター』という役割をしているのかも…
ただ、『ナビゲーター』の割には持っている情報が少なくて、
イエルス側の人物なので信用もできないんだけどね。
ここまで考えた時、ふと、ある事に気付いた。
何も信用できない…?
なんにも知らない世界にあたしは居るんだ!
本のページを無造作にめくるように、元いた世界での記憶がフラッシュバックする。
ゲーム会社に勤めている父
パティシエで、頻繁に抹茶のクッキー(とっても苦い)を作っていた母
もう会えない
ゲーム感覚で異世界ライフを楽しんでいたあたしを
殴ってやりたい、心からそう思った。
これが、現実だった。
先程までの自分は「帰りますか?」と聞かれれば即刻「やだああああ」と答えるだろうが、
今の自分なら迷うはずだ。
コントラット視点
「黙れ」と、言われて黙っていた自分は、辺りが冷たくなるのを感じた。
巫女は悲しんでいる。
そう理解した。
巫女に憑依し、互いの意識を共有しているのだからこそ、理解できたことだ。
本来、歴代の巫女はこの世界の者からすぐれた力を持つ者を選び、
国の象徴として崇める。
選ばれた者は将来を約束されたと言っても過言ではない程だ。
身内には必要以上の金を与え、選ばれた者自身は永久的に城で暮らす。
美しいドレス、豪華な食事、ふかふかなベッド
衣・食・住の全てを保証される。
選ばれた巫女は始めのうちはとても喜んでいた。が、
会う者は皆、己の知らぬ存在
父、母、友には永久に会う事はできず、
外に出る事も出来ない。
自由を奪われるのだ。
なに不自由のない生活だが不自由である。
初代の巫女が言っていた。
その通りだ。
異世界から呼ばれた巫女も、始めは喜んでいた。
だが、全てを悟り、悲しみを覚えたようだ。
[この後、どう転ぶんやろうな~]
これは自分には関係ない事である。
ここでは自分は傍観者なのだ。
[とりあえず、巫女はんはしばらくへこんで~]
予想を立てる。
[どうなるんかな?]
この後の展開が予想できない
そりゃ、魔王が介入したのだから当然だ。
[なんか、楽しみやな~]
誤字脱字がありましたら、
指摘していただけるとありがたいです。