魔王
「ふー、ご馳走さんした!」
スタルに奢ってもらってパスタ食べたよ~
うん。美味しかった。
「いや、ホントありがとね
あんたに会わなかったら行き倒れるトコだったよ~」
「行き倒れ…か…」
そりゃ、あたしはこの世界を知らないし無一文だし…
あ、そういえば元いた世界でのあたしは死んでたんだよね
お墓は丸い形がいいなぁ~
誰かが墓石の角に頭ぶつけてご臨終ってことにならない様に
ぼんやりと、物騒な事を考えていると
強い風が吹いた。
「うひゃ!」
「!?」
うわぁ、右目に何か入った…ん?
スタルのフードが風によって外れた。
今まで見えなかった顔があらわになる。
美しい黒髪に血のように赤い瞳
イケメンだった。
んでもってあたしのタイプだった。
「えっと……
ナギは…そんな姿をしていたんだね」
…ん? あたし?
スタルの目は揺れていた。
フードが外れた事に動揺しているらしい。
知らないけど
「あたしの事見えてなかったの?」
「顔が見えないように目深に被ってたら
下しか見えなくってな…」
自嘲ぎみな笑みをスタルは浮かべる。
「えーと、ナギはこれから行くとこがあるのか?」
「な、無いよ。うん。」
あー、なんか情けなくなった…
本で読んだ主人公達は居場所が在ったのに…
なんだ、あたしってなにも無いんだ…
ふと、前の世界が恋しくなった。
ホームシックって言うのかな?
「無いなら…その……
俺のとこに来い」
遠慮がちな誘い
……え?…
一気に現実に引き戻された
「俺のとこに来い」とか、恋愛フラグ? どこの少女漫画だよ!
でも行くね、二次元のイケメンとの同居とか、夢だろ!!
ん? そういえばここって二次元じゃなくって異世界か
あ、回答してない…
「そっちがいいなら喜んで!」
スタルはふっと笑った。
「魔王様ぁぁぁぁぁぁ!!」
一人のメイドが走って来た。
狐のような耳としっぽがあるのでおそらくは魔族だろう。
ちゃんとした魔族(?)は初めて見た……
……………!?…
さっきこの子スタルはのこと「魔王様」って!!!
「ミ、ミヤコ…」
「魔王様! 何も言わずに外出するのはおやめ下さい!!」
また魔王って言った!
スタルって魔王様なの!?
あたしの前に現れたイケメンな青年は
実は魔王様だったらしい
ん?「俺のとこに来い」をあたしって肯定したよね
……大変だぁぁぁぁ!!!
「とりあえず、帰りますよ!
縁談がある………」
メイドさん…もとい、ミヤコさんはあたしに気付いたのか
言いかけた言葉を消し、愕然としているあたしを見る。
「えっと……こちらの方は?」
「さっき知りあったヤツで…ナギという女だ
城に戻るんだろ。俺はもう行くぞ。」
スタルは歩き出した。
戸惑いを隠せない様子のミヤコさんもそれに合わせる。
「おい、ナギ!」
「ふ、ふぇ!!」
なんか変な声が出た。
く、空気読もう!
説明は後でして貰う!!
誤字脱字がありましたら、
指摘していただけるとありがたいです。