メイドさんのこれから
番外編のようなものです。
メイドさん視点
「ちょっと、わたくしが持ってきてって言ったのは
ダージリンじゃなくてアッサム!!
何度言ったらわかるの!!!!」
あぁ、またやってしまった。
お嬢様は顔を目を吊り上げてわたしを叱る
「申し訳ありません お嬢様。」
急いで頭を下げる。
「全く、謝って済むなら警察はいりませんわ
ねぇ、お姉さま」
「そうですよ、お嬢様」
わたしの仕える主人
マリアンヌは、傲慢を絵に描いたような方で
その妹、マリアンネも似たり寄ったりだ。
現在、お嬢様姉妹は友人一人を招いて茶会を開いていた。
そんな中、わたしは持ってくる紅茶を間違えてしまったのだ。
「すみません……」
「だーかーらー、謝って済むなら警察はいらないの!!
まったく、あんたは何年経っても無能ね!!!」
頭を下げ続けるわたしに浴びせられる暴言
だが、暴言だけでは済まなくなった
「頭を上げなさい!!」
下った命令に従い、頭を上げる。
「右手を出して」
「はい」
言われた通りに右手を出すとお嬢様に掴まれた。
なにをするんでしょうか?
お嬢様はわたしの手を掴んでいない方の手で紅茶の入ったポットを
手に取った。
まさか……
嫌な予感は的中した。
お嬢様はわたしの腕に紅茶を注ぐ
「ッ! あぁ!!!」
あまりの熱さに呻き、
お嬢様姉妹とその友人のクスクスという笑い声が遠く聞こえる
「うぅ……う………」
何故、わたしがこんな目に遭わなければならないのでしょうか?
いいえ、何時もの事ですもの。 もう、気にしてはいけません。
「うふふ」
お嬢様の笑い声と共に、右手が自由になる
右手からは紅茶が滴り湯気が上がっていた。
「さがりなさい」
お嬢様の命令でその場から立ち去る。
「ちょっと、大丈夫!?」
同じ使用人の女性が心配そうに声を掛けてくれた
「だ、大丈夫です。 もう、慣れてますから………」
*****
*****
「さぁ、どうぞ。」
ベッドの天蓋を持ち上げて人一人が入れるくらいのスペースを作る。
新たな主人であるナギ様はブーツを脱ぎ、もぞもぞと天蓋をくぐった。
「ありがと、アンナさん。」
!? 今…なんて……
「ありがとう」今、わたしはその言葉を掛けられた。
何故? どうして?
「その…おやすみなさい」
ナギ様が喋った事にわたしは気づけない。
「ありがとう」初めて言われたお礼の言葉
あぁ、わたしは……もしかすると、この方に必要とされているのでしょうか……
ナギ様 貴女様が「嫌」と仰るまで、わたしは付いていきましょう。
そう決意し、一夜が明けた
「ナギ様!
起きてください!!」
「…ん……母さん…あと五分…寝かして…」
「まぁ! わたしはナギ様の母君ではありませんよ!」
ナギ様は朝に弱いらしい
わたしを「母さん」と言っている。
なんだかかわいらしい
このまま寝ていてもらっても良いのですが
生活リズムが崩れてはいけません
躊躇いながらも声を掛ける
「ナ、ナギ様?」
しばらくの間返事は無かったが、だんだんと目が覚めて来たのか
ナギ様はゆっくりと起き上った。
「おはよう
えっと……アンナさん」
元気じゃないあいさつをしたナギ様は、フラフラとドレッサーの前に立った。
「あ、ヤバ」
ナギ様は真っ白なローブを見て慌てる
あら、ローブを脱いでもらうのを忘れていました。
ですが、こんなこともあろうかと………
「ナギ様」
「ん?」
手に持った淡いピンクのドレスをナギ様に見せる
「きっと、お似合いになりますよ!」
頑張って選んだモノですから、きっと似合うはずです!!
さぁ、ナギ様!! どうしますか!?
いいえ、問答無用!!
絶対に着ていただきますからね!!
誤字脱字がありましたら指摘していただけるとありがたいです。