あまいの。すっぱいの。
あえて名前は出しませんでした。
そこもふくめて、見てほしいです。
彼っていうのは主人公の好きな人じゃないですよー!
私は、知ってる。
あなたが見てる人のこと。
私を見てるわけじゃない。
私のとなりを見てるんだよね。
でも、無理だよ。
この子、あなたの親友を見てるんだよ。
多分、あなたの親友も、この子を・・・。
あぁ、お願い。気づかないで。
この子の気持ちに。
あなたは知ったら身を引くでしょう。
つらい顔を、するでしょう。
でも、うすうす感じてるんでしょ?
だから、言えないんだよね?
親友の恋を、応援できない私でごめん。
好きなひとが苦しいのは、嫌なの。
うまくいったら私は悲しい。
でも、好きな人が悲しいよりずっとまし。
だから私は、あなたの恋を、応援できないの。
ごめん、ごめん、ごめん。
終わりだと、おもった。
もう、だめ。
あの子が彼に、告白した。
返事は、保留。
これで彼があなたに相談なんかしたら。
私が話を聞く、そう言おうと向かったけれど。
遅かった。
私の歩みが柱の角でとまる。
もう、相談していた。
彼の言葉が進むたび。
あなたの顔が、強張る。
だめ、やめて、それ以上・・・。
もう、見ていられない。
いや!
そのとき、はっとした。
聞こえてくる会話。
おれが彼女にふさわしいか分からない?
あなたが、笑った。
・・・、
おもわず、飛び出してしまった。
「ふざけないでっ!あの子の告白なんだと 思ってるの!?ぐずぐず言ってるひまがあったらさっさっとふさわしい男になればいいんでしょ!そういうことで、傷つくひとだって・・・っ!」
驚きながらも、彼は笑ってそうだな、と。
走り去って行った。
残されたのは、あなたと私。
沈黙が支配した空間。
黙ってならんで廊下に座った。
幸せじゃない。
二人っきりでもうれしくない。
なんでそんな顔するの。
なんで平気なふりするの。
それ、成功してないのに。
痛々しい、笑顔。
はりついてはなれない。
「っ!おい!?」
かけられた声に、驚く。
気が付けば、泣いていた。
「あ・・れぇ、なん・・でぇ?自・・分でも、びっく・・・」
うまく、言葉にならない。
泣きたくないのに。
困らせたくないのに、とまらない。
一度ストッパーがはずれたからか、言いたいことが、あふれてくる。
「う・・ぇ、だれ・・のことが好・・きかなん・て・・、ば・・ればれ・・なんだよぉ、ばかぁ・・」
「は!?え!?俺!?」
「ほ・・かにっ・・だれが・・、なんで、いわな・・っい・・のぉ、あの子っ・・に、好き・・・って・・」
「っ!知って・・!」
「知ってたよ!」
「言わない・・・。」
「な・・んでっ!」
「言えないだろ?せっかくまとまりかけてんのに。」
「・・・・・・」
ねぇ、笑わないでよ。
そんな顔、みてらんないよ。
私だって、そんなの、知ってる。
言えないってことなんか、私のほうが、わかってる。
ずっと、見てきたから。
あなたを。
でも、言えないから。
優しいあなたは、困るでしょう。
もしも私が口出しせずに、あの二人がこわれても。
あなたはきっと、自分を責めて。
言えない。
苦しむ。
だから恐れていたのに。
こうなることを。
私は・・・・・・・・・・・・・
「かた、貸す。だから、私の前でまで、笑わないで・・・。平気な顔、しないでよ・・・っ。」
「え・・・」
「あの子は、いい子だから。たぶん、これからも、」
「ん・・・」
「ずっと、親友だよ。」
「ん・・」
「きっと、彼女もできる。」
「は・・・は・・、そ・・か・・」
「そーだよ。いい男だよ、あんたは。」
「ん・・」
そんなふうにして、きれいな涙を流すあなた。
こんな時なのに、見惚れる。
いつのまにか眠ってしまったあなたを。
見つめていた。
ずっと。
いま、こんなに落ち着いて、この子の恋愛成功報告を聞いてられるのも、
昨日、
「ふっきれた、ありがと。」
という短いメールをもらったから。
ふっきれたはずはない。
でも。
その心遣いがうれしかった。
このぶんなら、新しい人を見つけることもできる。
たちなおれる。
だから、いま初めて心からの祝福を。
「おめでとう」
私も。
次の桜が咲くころには。
あなたのとなりにいれたらいいな。
実は・・・、
寝顔を見てたの、あいつ知ってます。
狸寝入りだったのにあんまり見られて恥ずかしかったから
寝たふりしてた。
という伏線があったりします!