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寄るなイケメンっ!私は私の道を行くー覇道を極めし悪役令嬢ー  作者: 折若 ちい


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7話 王都の闇を照らす「覇道の灯」

王都、シュトライト。

 夜の帳が下りる頃、この街はいつも、高価な魔石ランプを灯せる富裕層と、薄暗いロウソクの火で耐える貧困層に二分されていた。


しかし、その夜の「中央広場」は異様な熱気に包まれていた。


「見よ! これこそが、セシリア・ヴァン・ローゼンバーグ様が辺境の地で発見し、民のために精製された『救済の火』である!」


広場の中央、噴水の縁に立ち、朗々たる声を張り上げているのは、王都の女性たちの憧れの的であったはずの近衛騎士、アルヴィスだった。

 彼は白銀の鎧……ではなく、ローゼンブルク領の作業ロゴが入った特製のマントを羽織り、手に持ったランプを高く掲げた。


シュアァァァァッ!


ランプから放たれたのは、これまでの魔石ランプとは比較にならないほど強く、そして温かみのあるオレンジ色の光だった。


「な、なんて明るさだ……! それに、魔石特有のキーンという不快な高音もしない!」

「おい、あれを見ろ! 燃料の値段が書いてあるぞ!」


掲げられた看板には、既存の魔石の「十分の一」という、常識外れの価格が躍っていた。


「……バカな! そんな値段で商売が成り立つはずがない!」

「……いいえ、セシリア様は仰った。『エネルギーは贅沢品ではない、生存の権利だ』と! 民よ、もう暗闇に怯える必要はない。ローゼンブルクが、貴殿らの夜を買い取った!」


横ではディートリヒが、流れるような優雅な仕草でパンフレットを配っている。

 通行人の令嬢たちが、彼の美貌に目を奪われつつも、その内容に驚愕する。


「……あ、あの。ディートリヒ様、なぜ貴方のような方が、追放されたセシリア様の手伝いを……?」


ディートリヒは令嬢の手を優しく取り、その耳元で、甘く、しかし狂気に満ちた声で囁いた。


「……追放? 勘違いしないでいただきたい。彼女は、王都という狭い鳥籠から解き放たれ、世界の覇者への道を歩み始めたのだ。……私はただ、その偉大なる背中を追う権利を得たに過ぎない。君もどうかな? 既存の腐敗した価値観を捨て、彼女の『効率』という名の愛に触れてみては?」


「ひ、ひゃあぁ……っ!」


令嬢は顔を真っ赤にして逃げ出したが、手にはしっかりと「ローゼン・オイル定期購入契約書」が握られていた。


この噂は、瞬く間に王宮へと駆け巡った。


「……どういうことだ。説明しろ!」


王宮の会議室。エリオット王太子は、手元に届けられた「ローゼン・オイル」のサンプルを忌々しげに睨みつけていた。

 彼の周りを囲むのは、宰相の息子カイルや、その他有力な貴族たちだ。


「殿下……。報告によれば、王都の商店の八割が、すでに魔石の注文をキャンセルし、このオイルへの切り替えを始めています。……それだけではありません。このオイルに使われている魔導式、あまりに高度すぎて、我々王宮魔導師団の手には負えません。……解析不能です」


カイルが苦渋に満ちた表情で告げる。


「バカな! あいつはただの性格の悪い女だったはずだ! 魔法の才能も、平均より少し上程度だったではないか!」


「……それが、そうではなかったようです。彼女は、自らの真の力を隠していたのか、あるいは辺境の過酷な環境が彼女を覚醒させたのか……。今や、市場の主導権は完全にセシリア嬢の手の中にあります」


「く、くそ……っ。リリィ、君はどう思う? セシリアに手紙を書いて、『王家の慈悲で買い取ってやるから、レシピをよこせ』と言ってやるべきか?」


そばで怯えていたリリィが、おずおずと口を開く。

「エリオット様……。あの、実は……私の実家の男爵家も、昨日このオイルの代理店契約を結んでしまったみたいで……。セシリア様のサインがないと、うちの領地、冬を越せないって父様が泣いていて……」


「な……っ!? 君の実家まで取り込まれたというのか!?」


エリオットは拳を机に叩きつけた。

 彼が「真実の愛」とやらでリリィを甘やかしている間に、セシリアは「経済」という名の巨大な蜘蛛の巣を張り、王国全体を絡め取っていたのだ。


「……セシリア。貴様、どこまで私をバカにすれば気が済むんだ……!」


怒りに震えるエリオット。しかし、彼の心の奥底には、自分を一切顧みず、世界を変えていくセシリアへの、言いようのない「焦燥感」と「敗北感」、そして認めたくないほどの「興味」が芽生え始めていた。


一方その頃、ローゼンブルク領では。


「……ふむ。王都の魔石ギルドが破産申請を出したわね。……予定より二日早かったわ」


セシリアは、山のように積まれた利益確定報告書を冷徹に処理しながら、優雅にコーヒー(これも自社開発)を啜っていた。


「さあ、次は……『債権者』として、王宮へ挨拶に行きましょうか。……覚悟しておきなさい、エリオット。貴方のプライドを、一ゴルドも価値がないゴミとして買い叩いてあげるわ」


悪役令嬢の、本当の「断罪」が始まろうとしていた。

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