二つの風鈴
そこそこ大きなログハウスに、二人の男が集められた。木の臭いに包まれたリビングには、置手紙が置かれていた。
『どちらが本当の風鈴ですか』
机の上には、それ以外何も置かれてはいなかった。一人は「いったいどういうことだ」と戸惑い、もう一人も「馬鹿げている」と呆れていた。ただ二人は帰ろうとは思わなかった。独り身で、明日食っていけるかも怪しい二人にとって、このログハウスは魅力的だった。冷蔵庫から食材は尽きず、電気や水も通っており、ただ見知らぬ男がいること以外は、まったく不自由のない生活を送ることができた。
しかし、二人の脳裏から風鈴の手紙が離れることはなかった。仲も良くなり、冗談を言い合える関係になるほど時間が経ったとき、一人の男が火蓋を切った。「本当の風鈴はどちらかという手紙、どういう意味だと思う?」と尋ね、もう一人の男も「さぁ、まったくわからない。どちらが本当って、そもそも風鈴が二つあったわけじゃないしな」と解決はしなさそうだった。二人はログハウスに呼ばれた日をもう一度思い出した。あの日、二人は突然呼ばれただけだった。誰かに何かを唆されたわけでも、あなたは実験に協力してもらいます的な、そんなものは何もなかった。
それから二年ほど、いっさいの進展もないまま時間は過ぎていった。二人は部屋をわけて過ごしていたが、同じリビングを生活圏とし始め、提供された食事にも飽きたため、自給自足を始めたりした。ある時一人の男が、都市部に出向いて嫁を作って、ここに連れて来れば将来安泰なんじゃないかと、提案をした。もう一人の男も賛同し、出かける準備をし始めたのだが、ログハウスの扉は開くことがなかった。初めからそうだったかのように微塵も扉が動くことはなかった。二人は確信した。理由が合ってこの二人なのだということ、帰らす気はさらさらないこと、きっと望む何かが起きるまでこの現象は止まらないのだと確信した。しかし、それが分かると二人は恐怖した。そして、もう一度風鈴の謎について考えることにした。一人が風鈴とは自分だと主張した。もう一人がそれに反応して、いや私も風鈴だ。と主張した。二人は驚いた。そしてお互いを説得した。君は風鈴ではなく、ただの鈴だと、チリーンと鳴いて、ほら高いだろうと自慢した。もう一人も、風鈴の風情感がないと言い、チリーンと鳴くと、拍子抜けな音が鳴り、二人は笑った。そうして手紙の意味を思い出した。




