第七話 彼は私に告白をした。でももしかしたらそれは亡くなった彼の妹の代用品になれ、という意味か?
バス停のベンチでそんな壮絶なことを語る健二は、とても辛そうで見ていられなかった。
事件のことはなんとなく知っていた。中学一年生の女子児童が不良グループに強制わいせつされ、後に殺害された。だが、犯行に及んだ人たちは逮捕されたはずだ。それを健二に訊ねると、
「捕まったのは斎藤が用意した替え玉だよ。『吐夢走夜』には一切警察のメスが入ってない」
唖然としてしまった。そんなことがまかり通るのか。
「僕のせいで……妹は死んだ。僕が呑気に犯罪なんてしてる陰でそんなことが起こって。自分が許せなかった。だからしばらくして僕は族から抜けたんだ」
そんなことない、自分を責めないでと言おうとしてその言葉を咄嗟に呑み込んだ。私はそんなことを言えるほど偉くもなんともない。健二とはただの知り合いだ。彼を励ます資格なんて、持っていない。
彼は私の瞳を見つめた。それは何かを訴えかけるようで。ひしひしと健二の想いが伝わってくる。それに心がざわついた。
「――ねぇ、僕は君の目標になれないかな? 君がずっと憧れを抱いて人生を投げ出さないための存在に僕はなりたいんだ。おこがましいかな? 僕じゃ無理かな」
儚げに健二は言った。私は唇を噛んだ。卑怯だ。そんな風に言われたら、断れないじゃないか。健二は好きだと告白しているのだ。私もそれに応えないといけない。
私は頷いた。すると彼は照れ笑いを浮かべた。
でも、もしかしたら彼は妹の夢と私を重ねて、夢の代わりを私に求めているだけなのかもしれない。そうなら嫌だ。「妹さんの代わりは嫌ですよ」と小さな小さな声が漏れ出た。その声は健二には届かなかった。