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カノジョとの出会い

よろしくお願いします。

 夕日に染まるどこにでもある家屋の玄関に、ランドセルを背負った少女、里奈が飛び込んできた。


「ただいまー!!」


 待ちきれないといった様子で、帰るやいなや階段を駆け上がっていく。


「おかえりなさい、里奈。今日はいよいよ、ノゾミに会いに行く日よ」

「うん!わかってる!」


 二階の廊下を駆け抜ける足音、クローゼットの扉が開閉する音、そして、何かを探しているようなガサゴソという音。それらの音が、里奈の胸の高鳴りを物語っていた。


 母親は、そんな娘の様子を想像しながら、あの日、ケイゾーから電話があった時のことを思い出していた。

 ノゾミが放牧されるというニュースが流れたあの日、ケイゾーから連絡があった。「ノゾミが帰ってきたから、都合の良い日を教えてほしい」と。里奈にそのことを伝えると、間髪入れず即答した。

「明日行く!!」と。

 あの子がこんなにもはしゃぐ姿を、最後に見たのはいつだっただろうか。もしかしたら、あの震災の日以来、初めてかもしれない。


 母親がそんな感慨にふけっていると、里奈がすごい勢いで階段を駆け下りてくる音が聞こえてきた。


「準備できた!!」


 そう高らかに宣言する里奈。その満面の笑みを見て、母親は微笑みながら言った。


「じゃあ行きましょうか」


 車に乗り込み、里奈と母親はケイゾーの牧場へと向かった。車内は、里奈の弾むような声と、それに応じる母親の穏やかな声で満たされていた。里奈は、ノゾミに会える喜びを、まるで歌うように語っていた。


「ノゾミ、元気にしてるかな?あのね、学校であった面白い話、たくさん聞かせてあげたいな。ニンジンも持ってきたんだよ!」


 母親は、そんな里奈の姿を微笑ましく見つめながら、心の中で思った。


(里奈がこんなに嬉しそうなのは、本当に久しぶりだわ。ノゾミ、本当にありがとう)


 ノゾミの故郷である河合牧場に着くと、ケイゾーが出迎えてくれた。


「よく来てくれたね、里奈ちゃん、奥さんも。ノゾミも里奈ちゃんに会えるのをすごく楽しみにしていたんだ」


 河合牧場に着いた里奈と母親は、ケイゾーの案内で、広い牧場の一角にある柵の前に立った。そこは、緑豊かな草原の中に、木製の柵で囲まれた、ネットやテレビで何度も見てきた場所だった。


「さあ、里奈ちゃん。ノゾミが待ってるよ」


 ケイゾーが柵の扉を開けると、里奈は勢いよく中に入った。草原の奥には、漆黒の毛並みが美しい馬が、静かに草を食んでいた。


 それが、ノゾミだった。


 里奈は、期待に胸を膨らませ、ノゾミに向かってゆっくりと歩き出した。すると、ノゾミも顔を上げ、里奈を見た。二つの瞳が、草原の真ん中でぶつかり合った。

 その瞬間、まるで時間が止まったかのように、里奈とノゾミは互いを見つめ合った。そして、次の瞬間、二人は同時に走り出した。

 里奈は、喜びを爆発させたように、ノゾミに向かって駆け出した。ノゾミもまた、待ち焦がれていたように、里奈に向かって駆け出した。黒い鬣を風になびかせ、力強い足取りで草原を駆けるノゾミの姿は、まるで疾風のようだった。

 二人は、草原の真ん中でぶつかり合った。里奈は、ノゾミの首に抱きつき、ノゾミは、里奈の体を優しく包み込んだ。それは、言葉では言い表せない、深い感動の瞬間だった。

 ノゾミは、里奈の頬を鼻先で優しく撫で、里奈は、ノゾミの温かい首筋に頬ずりをした。二人の間には、言葉を超えた絆が生まれた。それは、まるで、運命で結ばれた二つの魂が、再会を果たしたかのような、奇跡的な瞬間だった。


「はじめまして!ノゾミ!!」

「ブヒッ!!」

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