第69話 ティタノーサ① 逃れられぬ宿命
「フユリンさん、少し寄り道しませんか?」
旅の道中、地図を広げたフェイトが提案してきた。
まったく、つくづく寄り道が好きな連中だ。
「どこへだ。周りを見渡しても、草原と遠方の山しかないぞ」
「ここから南に進むと、パスティルという街があります」
「それで?」
「私の……フェイトの故郷なんです」
「だからなんだ。まさか親と感動の再会でもしたいのか」
「はい。『いまの私』の親ではありませんがやはり、顔を出す必要があると思うんです。だって一応、フェイトは行方不明扱いになっているのですから」
「ここで待ってる。一人で行って来い」
「…………わかりました」
フェイトが荷車から降りた。
脇目も振らず、振り返ることもせず、歩きだす。
もちろん、アイセントが同行する。
こいつは令嬢に従うよう制作者に指示されているから、基本フェイトの忠実な従者なのだ。
まったく、本当の主人はラブレスィブだろうに。
ラミュまで馬から降りた。
「私も連れてってくださいよぉ〜!!」
どいつもこいつも。
「あぁ待て待て。わかった、わかったから」
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パスティルなんて街はなかった。
いや、もう街として機能していなかったが正しい。
「な、なんですかこれぇぇ!!!!」
ラミュが叫ぶのも無理はない。
私も声を上げてしまいそうだった。
人が死んでいる。
街中のいたるところで、血を流して死んでいる。
男も女も、老人も、子供も。
アイセントが近場の死体に触れた。
「腐敗の兆しあり。死後3日が経過」
「3日前に殺されたのか」
「争った形跡はなし。急所を槍で一突き。……他の遺体も同様」
いったい何があったのだ。
チラリと、フェイトを一瞥する。
真っ青になって俯いていた。
無理もない。だってここは、いわばフェイトの第二の故郷なのだから。
もしかしたら、この街で過ごした記憶を思い出しているのかもしれない。
「屋敷に向かうぞ。フェイトの親がいるはずだ」
門番も、警備兵も、執事もメイドも死んでいる。
これじゃあきっと、屋敷の主人もだろうな。
屋敷中を歩き回る。
だんだん歩速が増していく。
「フェイト、心当たりはないのか。この街がこんな目に遭うような」
「わかりません。特に恨みを買うような要因はないはずです。領主も、平凡な方々でしたし」
やり方からして、犯人は大勢いるだろう。
何故なら単独犯、及び少数であったなら、街の人間の大半は逃げているはずだし、もっと争った形跡があるからだ。
だが、おそらくこの街の人間のほとんどが、瞬く間に殺されている。
不思議なのは、大勢の人間が街を襲ったにしては、殺傷方法が槍による刺殺しかないこと。
剣で殺された者や、魔法で殺された者すらいなかった。
槍を武器にしたたくさんの敵が、迅速に人々を殺しまくった。
金を奪うわけでも、女を犯すわけでもなく。
「もしかして……」
屋敷の広間の扉を開ける。
二つの遺体が重なっていた。
おそらく、フェイトの両親。
その上に、女が座っている。
「やはり、ティタノーサか」
分身魔法と槍の使い手にして、災悪姫騎士団のメンバー。
そして、マイリンなるフェイトの友人と、瓜二つの女。
「やあ、フェイトちゃん」
「…………」
「生きてると思ったよ。この辺を通って、ここに寄り道するのもね」
「ティタノーサ、さん」
「ははは、マイリンだよフェイトちゃん」
「なんで、こんなことを……」
「フェイトちゃんがいかに無力か教えたくて」
「ティタノーサ!!」
「だからぁ、マイリンだって」
「違う、マイリンさんは死んだのです!! あなたはティタノーサだ!!」




