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第68話 ラミュの冒険 後編

※まえがき

今回も三人称です!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 住人はいたが、残念ながら食料の備蓄はない。

 その日のラミュの晩御飯は、ラージュが持参したパン一切れにとどまった。


「しょうがないですねぇ、一緒に寝てあげますよぉ。なんせ私、オバケとか信じるタイプですからっ!!」


「怖いんだ」


「怖いか怖くないかでいえば……怖いです!!」


「別にいいけど」


 寝室をランプで照らし、大きなベッドに二人で寝転ぶ。

 まるでお泊まり会みたいだと、ラミュはわくわくした。


「ここの家の人なんですよね? ご家族はどうしたんですかぁ?」


「死んだ」


「あ、ごめんなさい。……普段はなにをされてるんですか?」


「人殺し。命令された通りに、人を殺してる」


「わーお」


 ちょっとだけラージュから離れた。


「ま、まぁこんなご時世ですからねぇ。いろいろありますよぉ。私だって人を殺したことありますしぃ」


 ラージュがじっとラミュを見つめる。


「なんで? そういうことするタイプに見えないけど」


「すご〜〜〜〜〜〜〜く嫌なやつがいたんですっ!! 私の家族を洗脳して、妹の未来まで奪おうとしたやつがぁ!! そいつに引導を渡してやったのですっ!!」


「…………」


「もうとことん苦しめてから倒してやりましたよっ!! 人殺しはそれだけですが、私は、それが正義で正しいことだったと、今でも断言できます」


「家族や妹は?」


「もう平気です。説明すると長くなるんですけど、とにかく平気ですぅ!! まぁ、過去は変えられないんですけどぉ」


 ラミュの脳裏に蘇る。

 悪魔に媚びへつらい、身を捧げてしまった家族たちの姿を。

 記憶は消したが、肉体についた(けが)れまでは落とせなかった。


「妹は洗脳されていなかったの?」


「はい。ギリギリセーフでした。いやぁ、私が悪役令嬢協会から追放されたのがもう少し早かったら、危なかったですねぇ!!」


「悪役令嬢だったんだ」


「元ですけど」


「よかったね。大切な者を守れて」


「はい!! あ、いつか会わせてあげますよ。めちゃくちゃ可愛いんですよ私の妹はぁ!!」


「いつか、機会があれば」


「なければ作ります!! いまは旅の最中ですから難しいですけどっ!!」


 どうやらラミュのなかでは、とっくにラージュは友達になっているらしい。

 勝手に友達認定されているのだが、別にラージュは不愉快に感じなかった。


「羨ましい」


「へ?」


「私は、守れなかった」


「なにをですか?」


「家族を殺したのは、私なんだよ」


「え……」


「悪役令嬢にそそのかされてね、どうしようもなくなったから殺した」


「…………」


「悪役令嬢はこの世に存在しちゃいけない」


 ラージュが手を伸ばす。

 ラミュの喉に触れる。


「幸運だったね、マリアンヌ様が死んで」


「な、なんでですか?」


「私は災悪姫騎士団シュヴァリエ・ドゥ・マラディエなの。私が担う仕事は、主にマリアンヌ様が殺せと命じた悪役令嬢を殺すこと。基本、追放された悪役令嬢がターゲットだったから。まぁ、マリアンヌ様とまったく面識がなかったのなら、ターゲットにはならなかっただろうけど」


 ラミュの心臓が激しく鼓動する。

 脳細胞が駆け巡る。


 ラージュは災悪姫騎士団だった。

 そうだ、あのとき橋にいた。だから見覚えがあったのだとようやく気づく。


 だが、なぜ騎士団にいる?

 話を聞く限り、悪役令嬢に恨みがあるはず。

 悪役令嬢を殺すために、悪役令嬢で構成された騎士団のメンバーになったというのか。


 わけがわからない。

 向こうは、こちらに気づいているのだろうか。


「あ、えっと……」


「私とラミュはよく似ている。似ているけど正反対だ」


「そ、そうですか?」


「うん。本当に羨ましい。会えてよかった」


 不思議と、ラミュは恐怖心を抱かなかった。

 困惑こそあれど、この場から逃げ出す気になれなかった。


 ラージュの瞳の奥にある、寂寥の念を感じ取ってしまったからかもしれない。


「いつまで、続けるんですか? シュヴァリエ」


「さぁ。恩人のマリアンヌ様はもういないし、新会長に忠義を示す義理もない。でもいまさら、マトモな人生なんて送れないのも事実」


「そんなことないですよ。私だってどうにかなったんですから」


「……ふふ」


 その笑みが含むものは何なのか、ラミュは聞けなかった。

 これ以上何を言えばいいのだろう。

 ラージュをどうするべきなのだろう。

 それもわからない。


「必ず、いつか会わせてあげますよ。私の妹を」


「楽しみにしてる」


 前向きな約束だけを交わし、ラミュはラージュと共に眠った。





 朝、目を覚ましたときにはラージュの姿はなかった。

 彼女が使っていた枕に添えられた、置き手紙を発見する。


『またね』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 屋敷をあとにしたラミュは、とりあえずまた川沿いを歩いてみることにした。


「おい」


 振り返ってみれば、そこにはーー。


「まったく。ようやく見つけたぞ」


「フユリンさん……」


 フェイトとアイセントも一緒であった。


「なんだ、ずいぶん元気がないな。いつもの騒がしいお前はどうした。腹でも減っているのか?」


「い、いえ。……もう!! どこほっつき歩いていたんですかぁ!! 捜したんですからねぇ!!」


「こっちのセリフだ。ほら、さっさと馬に乗れ。手を貸してやるから」


 ラミュのささやかな冒険が終わった。

 丸一日なにをしていたのか、どこで寝ていたのか、誰と会ったのか、ラミュは告げなかった。

 ラージュとは敵対関係にある事実を、受け入れたくなかったから。

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