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第67話 ラミュの冒険 前編

※まえがき

三人称です!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 フユリン一行が険しい崖を進んでいるときに、それは起こった。


「うぎゃああああ!!!! 死ぬうううう!!!!」


 ラミュが落ちたのである。

 標高500mからの滑落。まず助かりはしないであろう。


 常人ならば、であるが。


「おーいててー。危うく死ぬところでしたよぉ!!」


 木々の枝がクッションとなったおかげか、はたまたラミュの並外れた生命力のおかげか、とにかくかすり傷程度で済んでしまった。


 辺りを見渡す。

 土と、木、それ以外に目ぼしいものなど何もない。

 ここは、薄暗い樹海のなかであった。


「ふぇぇ〜」


 崖の上を見上げる。

 フユリンたちの姿は見えない。

 距離が離れすぎて目視できないのだ。


「そ、そそそ、遭難ですかーーっ!!」


 こうして、ラミュのささやかな冒険がはじまった。






「か、川だ!! ふふふ、私知ってますよっ!! こういうときは川に沿って歩けばいいんですよねぇ!!」


 樹海のなかで唯一見出した希望を頼りに、ラミュは歩く。

 てくてく歩く。

 ちなみに川の流れに沿って歩いても森から出られる保証はないので、注意が必要である。


 とはいえこのラミュという女、運にだけは恵まれているようで、


「ぬおおおお!! 屋敷が見えてきましたっ!!」


 見事に森を抜けてしまった。

 雑草生い茂る平原の先にある屋敷を目指して、猛ダッシュ。


「おやおやぁ? 門番がいませんねぇ」


 屋敷全体をツタが覆っており、庭もまるで手入れされていない。

 すでに放棄された屋敷であることは、ラミュの目にも明らかであった。


「鍵が開いてる」


 門を潜り、敷地内へ。

 玄関扉も施錠はされていなかった。


 もうすぐ日が暮れる。

 無人ではあるが、一晩ここに泊まるしかないだろう。


「お邪魔しまーす」


 暗い邸内を、恐る恐る進んでみる。

 食堂に行けば食べ物とかあるんじゃないか。

 なんて、フユリンに知られたらバカにされる期待を胸に、視界に入った扉を開けまくる。


「むむ〜。食堂はどこですか〜? おや?」


 地下室へと続く階段を発見した。

 地下なら食べ物が備蓄されているだろうか。


「あれ? 仮に食べ物があったとしても、誰もいないんだから、腐ってる?」


 ようやく気付いたようである。

 しかしここでじっとしていても仕方ない。

 とにかく下へ降りてみようと一歩踏み出したとき、


「誰だ」


 背後から女の声がした。

 低く、暗い口調であった。


「うわああああっっ!!」


 驚きつつも振り返る。

 腰に剣を差した、朱色の髪の女性がそこにいた。


「あ、怪しいものじゃないですぅ!! 仲間とはぐれて遭難しちゃったんですよぉぉ!!」


「…………」


「あなたこそ誰なんですかぁ? あ、わっかりましたよぉ。わかりました。さてはあなたも遭難してここにやってきたんですねぇ!! しょうがないですねぇ。食べ物があったら分けてあげます」


「私の家だ」


「え!? で、でもここ……」


 奇妙な出会いであった。

 ラミュは気づいていない。眼の前にいる女が、災悪姫騎士団シュヴァリエ・ドゥ・マラディエ最後の一人、ラージュであることに。

 そしてラージュもまた、ラミュがフユリンの仲間であることを思い出していなかった。


 あのとき、橋での戦いでお互い顔は見ているはずなのだが、一瞬のことで忘れているのだ。


「はは〜ん、さてはあなた、お掃除が苦手なんですね!!」


「…………」


「と、ところで今晩、ここに泊まってもいいですか?」


「はぐれた仲間は?」


「いまごろ必死に私を捜しているはずですっ!! 私も明日、ウロウロしてみますっっ!!」


「……部屋ならいくらでもある。好きにして」


「わ〜い!! 私、ラミュ・メチャカワイイっていいます。あなたは?」


「ラージュ・カナリビジン」


「ラージュさん。ちなみに、どこかで会ったことあります? 見覚えがあるような、ないような」


「さあ?」


 ラミュの長い長い夜がはじまる。

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