第66話 マエデュ② めでたしめでたし
街の住人にガチャ制度を敷いていた悪役令嬢マエデュ。
しかしその制度は不正なものだった。
衝撃の事実にフェイトは怒り心頭。
宥めようとした私まで怒られる始末。
一体全体、なんだというのだ。
てなわけで、毎度のように屋敷に潜入。
護衛の騎士を脅し、マエデュの居場所を聞き出した。
二階の自室でティータイム中らしい。
しかし、どうにも今回はやる気が出ないな。
おそらく、彼女の悪行をいまいち理解しきれていないからだろう。
嘘をついていたのはわかる。
詐欺に似た行為なのも。
だが、とくに違いのない絵のカードを……。
やめておこう。口にしなくても、またフェイトに怒られそうだ。
そんなこんなで自室に殴り込み。
マエデュは、テーブルにカードを並べていた。
対となるようにメイドが座っていて、同じくカードを置いている。
あのカードは……ムチムチなんちゃらか?
「なっ!? 誰よあなたたち!!」
「お前が悪役令嬢マエデュか。ここでお前の人生をつぶーー」
言い終わる直前、フェイトが前に出た。
「どうして詐欺ガチャなんてするんですか!!」
「詐欺? なんのことかしら?」
「ガチャを運営する神父さんからすべてを聞きました」
ズンズンと間合いを詰め寄り、マエデュの肩をがっしり掴む。
さらにぐすぐすと涙まで流してるし。
「こんな……こんなのあんまりですよ……ガチャは夢、ガチャ希望。それがまやかしだったなんて、酷すぎます」
「ふんっ、騙されるほうが悪いのよ」
自白したな。
よし、じゃあさっさとゴブリンにーー。
「ガチャで爆死しして自殺した人だっているんですよっ!!」
「うぐっ……」
うぐっ、じゃない。
なに精神的ダメージを受けているんだ。
「おいフェイト、もういいだろう。そもそも運が絡んでくるギャンブルみたいなものなんだろう? ただの絵が貰えるかどうかに、ここまで騒がなくても……」
「「ただの絵じゃない!!」」
おや? なぜマエデュまでムキになってるんだ?
マエデュ自身もハッとして、苦々しく歯を食いしばった。
「私だって、私だって、好きで騙していたんじゃないわよ!! 私も、ガチャが好きだった。愛していたわ。でも……」
あ、これ自分語りが始まる空気だろ。
「教えてあげるわ。そう、あれは三年前のこと」
本当にはじまったよ。
三年前、悪役令嬢協会ではマリアンヌが考えたカードゲーム『ドキドキ悪役令嬢R18版』が流行っていた。
マエデュもヘビーユーザーの一人であった。
しかし、ほしいカードがまったく手に入らない。
強いカードが少ないから勝てないし、自慢もできない。
それでも、マエデュは満足だった。カードと、それを手に入れるためのガチャを純粋に楽しんでいたから。
だがーー。
「マリアンヌ様は、不正をしていた。お気に入りの悪役令嬢にのみ、レアカードが出るように調整していたのよッッ!!」
尊敬するマリアンヌからの裏切り。
踏み潰されたガチャへのプライド。
この一件が、マエデュを変えた。
ガチャなんてしょせんは金儲けのための遊び。
騙される方が悪いのだ。
「搾取される側から搾取する側になるって決めたのよ。だって私は……悪役令嬢だから!!」
まったくマリアンヌのやつめ。死んでなお私に迷惑をかけやがる。
泣き崩れるマエデュの肩を、フェイトが優しく叩いた。
「騙される方が悪い。それは……違いますよマエデュさん」
「へ?」
「自分が騙されてしまったのなら、みんなは騙されないようにしましょうよ。マエデュさんなら、できますよ」
「ガチャは……みんなの夢だから」
「…………」
立ってるのがしんどくなってきたな。
適当な椅子に座り、ため息をもらす。
「私、やり直せるかしら」
「はい。良いガチャに変えていきましょう!!」
「……ありがとう」
フェイトが私を見つめる。
この流れでゴブリンにはしないですよね? とか念じた瞳だ。
私は悪役令嬢であれば理由関係なくゴブリンにする。
だが、私はいま、悪役令嬢になった姉さんを元に戻すための旅をしている。
指針をブレさせないというのなら、姉さんをゴブリンにしないのはおかしい。
はぁ……わかったよ。
「よかったなフェイト。悪役令嬢を改心させたじゃないか」
「はい!!」
「それにしても」
テーブルに並べられたカードを見やる。
様々なイラストが描かれたカードたち。
最後までわからんな。
これの魅力が。
試しに回してみようか、ガチャとやら。
案外、楽しいのかもしれない。




