第62話 再会 後編
※まえがき
今回は三人称です。
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フユリンはただ一心に姉を見つめていた。
ずっと捜していた愛する家族が眼前にいる。
なのに、向こうはまるで期待するような反応を示していない。
「リシオン姉さん……」
「姉さん? 確かに私はリシオンですし、あなたと同じ髪色ですが、私に妹などいません」
「……は?」
数々の疑問と可能性が、閃光のように脳内を駆け巡る。
リシオンは何かをされたのか。
マリアンヌに。
だから忘れてしまったのか。
「メディスン、彼女が悪役令嬢ハンターなのですよね?」
「…………」
「メディスン?」
「あぁ、そうだよ。僕らの親愛なる同級生、マリアンヌの仇さ」
「忌々しい。よくもマリアンヌ様を」
砂嵐のように乱れていたフユリンの思考が、眩い光と共に弾けた。
やめてくれ。マリアンヌに様なんてつけないでくれ。
あいつは姉さんを、私たち家族を地獄に叩き落とした悪魔なんだ。
そんなやつを敬わないでくれ。
一方、アイセントとフェイトは、それぞれ橋の両側に立ち、一対二の状況へと追い詰められていた。
アイセントはコレールと、ラマリア。
フェイトはティタノーサと、名もわからぬ剣使い。
アイセントが魔法人形のコレールを凝視する。
怒りを感じない。無機質な表情で、まるで自分自身と相対しているようであった。
「感情プログラムの消去?」
自称パッチの助手、ラマリアが哀れみの眼差しを見せる。
「残念だけどね。彼女自身が望んだの。いやよね、こういうの。非人道的で。私も、パッチくんの作品に手を加えるのは忍びなかったんだけど」
「優れた感情プログラムを自ら消す。理解不能」
「しょうがないよ、彼女の最初の主人もマリアンヌ様も、コレールちゃんのせいで死んだようなものだもん」
コレールが突っ込んだ。
アイセントが応戦する。
感情がない分、動きに無駄や隙がない。
「厄介」
反対側では、フェイトがクリアウォールで巨大な不可視の壁を生み出していた。
落下中の隕石ですら止める強度だ、いかな強敵だろうが、破壊はできない。
「フユリンさんには、近づけさせません!!」
フェイトの瞳がティタノーサを捉える。
やはり似てる。親友マイリンに。
「あなたは……いったい……」
「くくく、だから、マイリンだって、フェイトちゃん。酷いなぁ、私たち友達なのに」
「そんなわけない!! マイリンさんは死んだんです!!」
「死んでいてほしいわけ? 親友なのに?」
「それは……」
「ま、いいや。ラージュ、あの壁は頼むよ。私には壊せないや」
ラージュなる剣使いが構える。
短い朱色の髪、赤い瞳。
災悪姫騎士団、最後のメンバー。
ラージュが突きを放つ。
防御魔法に、穴が空いた。
「なっ……」
ティタノーサが笑う。
「ははは、どうするのフェイトちゃん。自慢の防御魔法をこれじゃ型なし」
「ク、クリアウォール・ダブル!!」
不可視の結界を二重に張り、強度を高める。
「へー、そんなこともできるんだ。でもさ、違くない?」
「え?」
「その魔法は、攻撃にも転用できる。そうでしょ? なんでやらないの?」
確かに、クリアウォールは変幻自在である。
拳の形に変えれば、相手を殴り飛ばすこともできる。
「ふ、二人いるから、守りに徹さないと」
「くく、フェイトちゃんって卑怯だよね」
「なっ……」
「私の想いを継いで、みんな仲良く幸せハッピーな世界にしたいとか抜かしても、なーんにもしてないじゃん。人を傷つけることは仲間に任せて、自分は手も汚さず、『それっぽいこと』をしてるだけ」
「ひ、人を傷つけるのはよくないことだから!!」
「じゃあ仲間も止めなよ」
「…………」
「結局口先だけなんだねえ、フェイトちゃんは。私をイジメていた頃は目的の為なら手段を選ばないハングリー精神があったけど、いまのフェイトちゃんは『やってるフリ』だけ。あーあ、なんかがっかり」
フェイトの意識が自分自身に向けられる。
本当は気づいていた。
気づかないフリをしていた。
自分は何もしていない。
ただ少しフユリンに手を貸すだけで、ロクに戦ってもいない。
ただ少しフユリンに主張するだけで、ロクに仲良しハッピーな世界に変える努力をしていない。
わかっている。
わかっているのだ。
「私が死んだ時と同じ。フェイトちゃんは何もせず、周りが死ぬのを眺めるだけ」
「……わ、私は」
「こんなやつのために死んだなんて、私って可哀想」
「…………」
「謝らなきゃ。罪を償わなきゃ」
戦闘の意思が薄れていく。
クリアウォールが、消滅していく。
その瞬間、
「エクスプロージョン!!」
フェイトとアイセント、二人の戦場が爆破した。
敵味方含めて、全員が衝撃で後ろに飛ぶ。
「わわ、やりすぎちゃいましたーーッッ!!」
パーティーのポンコツ担当が、淀んだ空気を吹っ飛ばした。
「みなさん!! 私も混ざりますよぉ!!」




