表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/74

第49話 古の主人公ティア①

※まえがき

三人称です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 フェイトはメディスンに案内されるまま、街の中央にある少し立派な屋敷に訪れた。

 町長の家らしく、現在ここにティアが避難しているらしい。


「町長とティア嬢には話をつけてある。じゃあ、僕はこれで」


「え、いなくなるんですか?」


「あちらの人間コレールを逃したからね。僕の顔を見られている以上、急いで本国に帰らなくてはならない」


「まさか、家が潰されるとか……」


「ふふ、心配しなくていい。僕の家系は悪役令嬢協会を牽制できるくらいには力がある。それに、協会の一番の出資者でもある」


「出資者!? だ、だってあなたは協会の敵なんじゃ??」


「敵だからこそ、媚を売って懐に入るんだよ。とはいえ、結構面倒な状況ではあるけど。……まぁ、戦争が熱くなることはないだろう」


 フユリンによろしく。

 そう言い残し、メディスンは部下と共に去っていった。

 彼はとことん底が見えない。

 立場上味方ではあるが、いつ裏切ってくるかもわからない。


 とにかく、フェイトはメディスンのことを頭の片隅に追いやって、屋敷のドアをノックした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 屋敷の主人に案内され、中に入る。

 暖炉のある部屋に入ったとき、フェイトの心臓が一瞬止まった。

 揺り椅子に腰掛けている白髪の老婆に見覚えがあったからだ。


 いや、見覚えではない。面影だ。


「あなたが、ティアさん」


「はじめまして、フェイトさん」


 ニコリと微笑むティアの顔は、とても一〇〇歳を超えているようには思えなかった。

 外見年齢なら、六〇前後だろう。


「本当に……?」


「ふふふ、若く見えることが自慢なの。カトレアも羨ましがっていたわ。さあ、座って」


 対面するように、フェイトは椅子に座った。

 暖炉の熱のせいだろうか、喉が渇いてしょうがない。


「マリアンヌが、亡くなったそうね」


「えぇ、はい」


「まさか私まで殺そうとするなんて……」


 ティアの頬を涙が伝った。

 おそらく、思い出しているのだろう。

 親友カトレアの死を。


「それで、私に用って?」


「なぜ、マリアンヌはあなたを殺そうとしたんですか?」


「きっと、フェイトちゃんに説明してもわからないと思うわ」


「私には、前世の記憶があります。この世界の正体を知っています」


「うそ……」


 ティアの目が見開いた。

 使用人がコーヒーを運んでくる。

 フェイトはミルクと砂糖をかき混ぜて、苦みを我慢しながら喉を潤した。


「そう、じゃあ、あなたは、カトレアと同じなのね……」


「知っているんですか? カトレアさんの秘密も」


「教えてくれたもの。最初は信じられなかったけど」


「私は、知りたいんです。この世界に何があったのか。本来あなたは、何人かの男性と恋をしながら邪悪な王を倒すはずだった。カトレアさんは断罪されて若くして死んでいるはずだった。それなのに」


「カトレアも同じことを言っていたわ。『自分が転生したおかけで、未来が変わってしまった』とね。でも、邪悪な王なら倒したわ。カトレアと共に」


「悪役令嬢協会が誕生した理由も、ご存知なのですか?」


 昔の学者が発表した論文がはじまり。

 という一般教養はフェイトもわかっている。

 肝心なのはその先にある真実だ。


 第六位の魔女センプは、マリアンヌの敵側だと口にしていた。

 マリアンヌも、フユリンは魔女の駒だと最期に告げていた。


 おそらく、魔女は絡んでいる。

 悪役令嬢時代の幕開けに。


「カトレアが悔いていたわ」


「なにを、ですか?」


「魔女たちに、自分の正体を明かしたことを」


 フェイトはじっと暖炉の火を見つめ、思考にふけった。

 魔女は本来、この世界においてティアに力を与える存在だったはず。

 センプだってそうだ。

 ティアが助けた猫が魔女になり、恩返しとして彼女に魔法を託す。


 そうやってティアは強くなっていくのだ。


「カトレアが語ったお話が、魔女たちを二分したのよ」


「仲間割れ、ってことですか?」


「えぇ。世界を変えようとする者と、維持しようとする者に」


 その『変えようとしている者』が、悪役令嬢協会誕生の裏にいた。

 そしてセンプは、後者なのだろう。


「例の論文は、ただのキッカケ。偶然書かれたもの。魔女はそれを利用した。魔女の力で、人々の認識を歪ませたの。じゃなきゃ、『悪役令嬢は神の使い』だなんて暴論が、まかり通るわけがないでしょう?」


 しかし魔女たちは一枚岩ではない。

 認識を歪める魔法を、弱めた魔女もいた。

 悪役令嬢をまったく崇めない人間がいるのは、それが理由である。


「強行派の魔女たちはどうしたいんですか? 悪役令嬢を使って」


「さあ。たぶん、なにもかもめちゃくちゃにしたいのね」


 すべては、魔女たちのせい。

 世界の秘密を知った魔女たちの心の『病』が、悪役令嬢というウイルスとなってあらゆるものを壊していった。


 平和を、人々の尊厳を、ルールを。


「マリアンヌと魔女の関係は?」


「それはわからないわ。ごめんなさいね。私も、すべてを知っているわけじゃないから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ