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第45話 婚約破棄

※まえがき

三人称です!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 カイレカイレは世界で最も神秘的な街として有名だった。

 氷が張り詰めた広大な湖。氷河の間を抜ける水色の川。ダイヤモンドダスト。

 夜にはオーロラに満天の星空。


 住人は基本的に漁師か木こりで、人口はそれほど多くはない。


 太陽がてっぺんまで昇ったころ、五〇人を超える団体がカイレカイレに到着した。

 列を成し、中心には巨大な黄金の馬車が緩やかに車輪を回していた。



 湖の付近に佇む木造の小屋が見えてくると、


「もういいですわ」


 馬車から女が降りた。

 カールを巻いた長い金髪。

 豊満な胸。

 黄金のドレス。


 悪役令嬢協会会長、マリアンヌ・トウガラシロップである。


「あれが家ですの? わたくしが飼っている猫の家より小さいじゃありませんの」


 マリアンヌが雪を踏む。

 小屋の主人に会うために、闊歩する。


 騎士が話しかけた。


「マリアンヌ様、先頭は我々が」


「失せなさい。真の悪役令嬢とは、自ら先陣を切るものですわ」


 玄関の前に立つ。

 数年ぶりに、自分の手で取っ手を握り、引いた。


 中にいた人物に、マリアンヌは目を見開いた。


「あなたは……」


「やあ、久しぶりだね、マリアンヌ」


「メディスン……」


 黒い髪、黒い目、高い身長に小さな顔。

 貴公子メディスンが、そこにいた。


 他には、誰もいない。


「なぜここにあなたがいるのですの?」


「あぁ、風の噂でね、君がカイレカイレに来ると聞いて、急いで走ってきたんだよ」


「あら嬉しいですわ〜。と・こ・ろ・で、この小屋にいた女はどこにいますの?」


「避難させたよ。ここは戦場になる」


「…………なるほど、もしやと思っていましたがあなた、反悪役令嬢勢力(ヴァクシンズ)でしたのね」


「さすがマリアンヌ。話が速い」


「ショックで泣いてしまいそうですわ〜。わたくしの『婚約者』が反乱分子だったなんて」


「心にもないことを。ところで、一つ疑問なんだが、何故ティアに会いに来たのかな? カトレアの親友なだけで、悪役令嬢でもなければ宗教的地位もないのに」


 そう問いながら、メディスンはテーブルの上にあった二つのカップに、ポットに入った紅茶を注いだ。

 メディスンがミルクを混ぜている間に、マリアンヌは自身の紅茶を飲み干す。

 毒などまったく警戒していなかった。いや、あえてしなかったのだ。


 真の悪役令嬢は警戒などしない。

 恐れるものなど、なに一つ存在しないからだ。


「彼女が『中心の女』だからですわ」


「中心?」


「この世界は、彼女を中心に創造されましたの。わたくしが会長に就任して、いろいろ準備が整ったから、『はじまりの女』共々死んでもらうことにしたのですわ」


「意味がわからないな」


「でしょうね。その方が幸せですわ」


 マリアンヌの視線が窓を捉える。

 その先に突如現れた、騎士を睨む。


「あぁ、僕の透明化の魔法で部下を隠しておいた。小屋の周りに八人の精鋭がいる」


「ふふ、八人? たった八人? メディスン、あなたがそんなにバカだったなんて残念ですわね。わかっていますの? 暗殺が失敗すれば、あなたの家も滅ぶことを」


「平気さ。君を含めて、みんなここで殺す」


「素直にわたくしの婚約者でいればよかったものを」


「ならば今こそ宣言しよう。マリアンヌ・トウガラシロップ、君との婚約を、破棄する」


「……いいですわ、わたくしが直々に、あなたを殺しますわ」




「ふふ、勘違いするなよ。君と戦うのは僕じゃない」


「はあ?」


 瞬間、部屋の隅からただならぬ殺気を感じた。


「私だマリアンヌ!! バインド!!」


 メディスンの魔法で透明になっていたフユリンが姿を現す。

 同じように、ラミュたちも出現した。


「私を覚えているかマリアンヌ!!」


 魔法の縄で拘束されても、怒気を放たれても、マリアンヌはフユリンになどまったく興味を示していなかった。

 いま、マリアンヌの脳内を支配しているのは……。


「フェイト!?」


「マ、マリアンヌ……さん……」


「あぁよかった、生きていましたのね。嬉しいですわぁ!! あなたが行方不明になって、私がどれだけ寂しい思いをしたことか」


 恐る恐る、フェイトが口を開く。


「も、申し訳ないですけど、いまの私はフェイトじゃありません。別の人格の、別の人間です」


「…………」


「え、えっと?」


 マリアンヌの表情が一気に冷めた。


「そうですの。カトレアと同じですのね」


「え!? な、なんでそれを!!」


「じゃあフェイトは死んだも同然ですわ。あなたが殺したのも同然ですわ。はぁ……よし、あなたをぶち殺してその体を回収しますわ。魔法人形に改造してわたくしの側近にしますの」


 無視され続けているフユリンが叫んだ。


「こっちを見ろ!!」


「なんですのぉ? うるさい虫けらが」


「私の名はフユリン。お前が攫ったリシオンの妹だ!! 姉さんはどこにいる!!」


「リシオンの? ……あぁ!! あのときの。へぇ……。背伸びましたわねえ。たくさん牛乳飲んでたくさん寝たんですのぉ??」


「ぶち殺すッッ!! パニッシュメント・エレクトリーー」


「リバティー・クリア」


 マリアンヌの肉体がバインドの拘束をすり抜け、小屋の外へ出た。


「くっ、アイセント!! あいつの四肢を切り落とせ!!」


「承知」


 アイセントが飛び出す。

 騎士たちの中に紛れたマリアンヌが、アイセントを指さした。


「不届き者たちを処刑しなさい。あぁ、フェイトとメディスンは生け捕りですわよ」


 構わずアイセントが突っ込む。

 刀を抜き、振り上げる。


「白雪ノ太刀」


 が、


「させねえよ」


 オレンジの髪をした少女が、棍棒で太刀を防いだ。

 アイセントが首を傾げる。少女の顔に、見覚えがあったのだ。


「イヤルテ?」


「あぁ? そりゃ私の兄弟だ。あんなザコと一緒にすんなよ」


 少女が棍棒を振るう。

 アイセントはサッと距離を取り、刀を構えた。


「私は悪役令嬢協会会長直属護衛隊。まぁ要は、災悪姫騎士団シュヴァリエ・ドゥ・マラディエの一人、コレール。お前みたいな旧型の魔法人形じゃあ、私には勝てねえよ」


「記録完了。任務続行可能」


「あぁ?」


 他の騎士たちも、メディスンの護衛隊と交戦を開始した。

 マリアンヌの体が宙に浮く。


「ここは任せますわ、コレール」


 ふよふよと空を飛びながら、マリアンヌは去っていった。

 下賤な虫けらを恐れているのではない。戦いが面倒だからだ。

 真の悪役令嬢は、面倒だと思ったことは絶対にしない。

 だがそれはあくまで、己の身が安全である場合の話。


「逃がすかっ!!」


 マリアンヌの体に、再度魔法の縄が絡みついた。

 下へと伸びる縄の先にはーー。


「しつこいですわね、リシオンの妹」


「護衛隊と離れて、一人になったのは愚行だったな」


「わたくしは常に独りですわ〜!!」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき

ついにマリアンヌとの戦いです!!

応援よろしくお願いしますっ!!

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