第43話 ラブレスィブ⑨ 人間のまねごと
※まえがき
途中から三人称です。
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騒乱の最中、ラミュとフェイトを集める。
「三人でやるぞ。私がやつの動きを一秒止める。そうしたらフェイト、お前がやつを捕まえて、『固定』しろ」
「固定?」
「お前の防御魔法は結界タイプだ。お前ではなく、あいつを結界で囲み完全に固定するんだ。素早い動きで逃げられないようにな」
さながら檻だ。
フェイトの視線が下がる。
「や、やってみます。私が余計なことを口にしたばかり、こんなことになったのですから」
確かにそうだが、遅かれ早かれこうなっていただろう。
むしろ、私たちがいるうちに呪いが暴走してくれたのは不幸中の幸いだ。
「そしてラミュ、最後に爆発魔法でトドメをさせ」
「はいっ!!」
良い返事だ。
そうと決まればさっそく作戦開始だ。
ラミュとフェイトが抜けた以上、赤ん坊どもを食い止める戦力が減ったわけだからな。
「クロックアップ!!」
加速した状態で、ホーリーボールを発射する。
黒い上半身だけの化け物が、素早い動きで回避した。
先ほどはまったく見えなかった動きが、いまなら見える。
「それでも、かなり速いが。……ハイスピードホーリーボール・ラピッドファイヤ!!」
今度は光弾の一斉発射。
当然、すべてかわされる。
が、構わない。それを待っていた。
考えなしにラピットファイヤを放ったわけではないからだ。
あいつを、誘導するのが目的である。
確実に一撃を決めるための場所への。
「ホーリースパーク!!」
化け物の移動先を予測し、ビームを放つ。
私の最大級の攻撃魔法は、見事化け物に直撃した。
クロックアップが解ける。
化け物は怯んでいる。
「フェイト!!」
「はい!! やります、必ずやり遂げます。うわああああ!!」
フェイトが両手を前に出した。
そのまま、何かを握りしめるような動作をすると、空中にいる化け物が悶えはじめた。
まるで、大きな手で握られて、苦しんでいるように。
「これは……結界を手の形に変形させたのか」
さしずめ、見えない巨大な腕。
クリアウォール・ザ・ハンドとでも名付けてやるか。
しかしフェイトのやつ、咄嗟にそこまでやってのけるとは、案外天才かもしれん。
それとも、魔法の方が優れているのか。
どこで覚えた魔法なんだか。
「ラミュ!!」
「はいぃ!! エクスプロージョン!! ……あれ?」
爆発が発生しない。
失敗したのか?
「エクスプロージョン!! エクスプロージョン!! はぁ、はぁ、うわああん!! ごめんなさいぃ!! 魔力切れですぅ!!」
「まったく」
ならば私が、と言いたいところだが、実は私もラミュと同じく限界だ。
なんせ、この街に到着したのが今日だからな。
アイセントとの二度の戦闘で、だいぶ体力が減っているのだ。
「ラ、ラミュちゃん!! フユリンさん!! わ、私も、もう!!」
「くそっ!! アイセント!!」
屋敷に向かって、叫ぶ。
あいつの聴力なら聴こえているはずだ。
「聴こえているんだろ、アイセントォォ!!」
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※ここから三人称です。
ラブレスィブの寝室で、アイセントはただじっと、悶え苦しんでいる主人を見つめていた。
呪いが完全に肉体から抜けたわけじゃない。まだ繋がっているのだ。
あの化け物が暴れれば暴れるほど、ラブレスィブは確実に死へと向かっていく。
「う、うぅ……」
側にいるイヤルテが、ラブレスィブの汗をタオルで拭う。
「ちっ、脈が弱くなっている。このままじゃ本当に……おいアイセント、私と一緒に回復魔法をかけるぞ」
「…………」
「おい」
アイセントはもう、なにもしたくなかった。
良かれと思っていたことが、回り回って主人の呪いを強めていたのだ。
アイセントの覚悟が、呪いの餌を生み出していたのだ。
自分は愚かな欠陥品。
胸の中にあるチクチクを取り払おうと足掻いた結果が、これ。
魔法人形はただ、命令だけを忠実に守っていればよかったのだ。
「ご主人様と共に、私の機能も停止させる」
「ふざけんな!! なに諦めてんだよ、なに勝手に殺してんだよ!!」
そのとき、
「アイセントォォ!!」
外からフユリンの声が響いてきた。
「お前、生意気に感情を持つくらいなら、立ち向かえ!! いいか、人間はな、己の失敗の責任を取る生き物だ。困難を乗り越える生き物だ!! 人間のフリをするなら、立ち止まるな!!」
「…………」
「ほっとけばラブレスィブは死ぬ。みんな死ぬ。だがここで化け物を倒せば、助かるかもしれない。ラブレスィブが見たいと夢見ていた海も、山も、見せてやれるかもしれない。伝説の悪役令嬢カトレアみたいな冒険を、させてやれるかもしれない。そうだろ!?」
「…………」
アイセントの腕が震える。
胸が熱くモヤモヤする。
もっとラブレスィブの側にいたい。
だけど、また失敗したら。
怖い。怖い。
こんな気持ち、はじめてだ。
でも、でも!!
「いま、ラブレスィブを救えるのは、お前だけだ!! アイセント!!」
「ッ!!」
途端、アイセントは飛び出した。
窓を超え、高く高く跳躍する。
化け物のもとまで。
刀を抜いた。
魔力を纏わせる。
アイセントは、自分が何をしているのか理解できていなかった。
咄嗟だった。無意識だった。本能だった。
救いたかった。諦めたくなかった。
ラブレスィブを守りたかった。
「白雪ノ太刀」
間合に入った。
刀を振り上げる。
魔力を帯びた刀が、静かに、音もなく、呪いを切り裂いた。
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※あとがき
次回でラブレスィブ編終わりです。
長かった〜。
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