第34話 リンリン③ キャッキャウキャー!!
※まえがき
今回は一人称です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの骨の王冠を被っているのが悪役令嬢リンリンなのだろう。
正直ゴブリンが悪役令嬢なんて意外すぎて、未だに混乱している。
ん、あそこにいるゴブリンはマーチンか。
私がゴブリンにしたあと、こいつらの仲間になったようだ。
どうでもいいが。
「ウキャキャー!! (なんだぁてめぇら!! 人間風情が私に何の用だってんだい!!)」
元気に叫んでいる。
どうやら威嚇しているようだ。
「ラミュ、なんて言っているんだ」
「いやぁ、ゴブリン語は履修していなかったもんでぇ、わからないですぅ」
「まぁいい」
とりあえず、周りにいる手下のゴブリン共の動きを止めるか。
かなりいるが、電撃を流して気絶させる。
「パニッシュメント・バインド」
ゴブリンどもを拘束する。
続けてエレクトリックで電気を流した。
のだが……。
「ん?」
気を失っていない。
タフだな。
「ウキャキャーッッ!! (お前らァ!! すでに強化魔法をかけてある。部外者どもを抹殺しろーッッ!!)」
ゴブリンたちがバインドの縄を引き千切った。
厄介だな。
「ケケ、ウケケケケケ!! キャーッッ!! (ほら、他種族のバカどもも、ボケーっとしてないで奴らを殺しちまいな!!)」
他の魔物たちが四方から集まってきた。
オークにゴーレム、ワーム、コカトリスにスライム、ミノタウロスまで。
魔物駆逐法によって今や滅多にお目にかかれない野生の魔物たちが、こんなに。
人間のせいで山まで追いやられた上にゴブリンにまで支配されて、可哀想な話だ。
なんて、余裕をぶっこいてもいられない。
わりとピンチだ。
「ボスだけを狙う……クロックアップ!!」
高速化してリンリンに接近する。
ナイフを構え、突撃する。
だが、
「なに!?」
リンリンと別のゴブリンの位置が入れ替わった。
魔法か? 私の加速よりも速く、味方との位置を入れ替えたのか。
くそ、クロックアップの効果時間が切れる。
「ワッキャーーーーッッ!! (バカめがぁ!! 私は常に位置転移の魔法を自分にかけている。危機が迫ると自動的に、手下との位置を入れ替えるんだよマヌケ人間がァァ!! 謝るなら今のうちだぞド低能のクソカスがよぉぉ!!)」
「面倒なやつ」
他の魔物たちが一斉に私に襲いかかってくる。
再度クロックアップを発動し、距離を取る。
「くっ!!」
心臓が痛い。
直接握りしめられたような激痛。
これ以上、クロックアップは使えないな。
「フェイト、お前の力を借りられないか」
「はい、任せてください。でも、どうすれば……」
フェイトの新しい防御魔法は優れている。
しかし戦闘に慣れていない。
常に私にくっついて行動はできないだろう。
ならば、
「ラミュ!! なんでもいい、魔物どもを引きつけろ」
「えぇ!? わ、わかりました、やってやりますよぉ!!」
ラミュが両手を上げた。
「わーん、私だけは助けてくださいぃ。他の連中は殺しちゃっていいので、どうか私だけはぁ!! ぷんぷん!!」
魔物たちの視線がラミュに向けられた。
わかる。とても感情移入できるぞ魔物たち。
いま、私たちは同じ感情を共有している。
私の命令を実行した故の嘘だと理解しているが、口調がなぁ。
「そうやってみんなして私を殺そうとするんですかーーっ!! 私が、私が可愛すぎるからなんですかーーっ!! うぅ、モテる女は辛いですぅ。でもしょうがない部分ありますよね、私もたくさんの食べ物が並んでいたら、一番美味しそうなのから食べちゃいますから。ましてあなた達は魔物。欲望や本能に忠実な魔物。私を狙っちゃうのはしょうがないですよね。うえ〜ん!! わんわん!! ずびっ、ずび、ちゃぱちゃぱ。でも覚えておいてくださいね、こ〜んな可愛い私を殺したら、世間様は許しても神様は許しちゃくれませんからねぇ!!」
世間は許すのかよ。
魔物たちが額に青筋を立てた。
ボスであるリンリンも。
「ウケケケケキャキャーーッッ!! (私より可愛い存在など、マリアンヌ様以外ありえないんだよ、てめぇら、そこのチビの脊髄を引きずりだしてケツの穴にぶち込んでやれぇい!!)」
魔物たちがラミュへ襲いかかった。
ラミュの側にフェイトが立つ。
「クリアウォール・ドーム」
全方位から飛びかかる魔物たちが、弾かれる。
おそらく、見えない壁を半球状にしたのだろう。
手下どもは二人が引き付けている。
さて、ここからどうやってリンリンを潰すか。
動きを封じたいが、バインドを使おうとすると、転移魔法で逃げられる。
まいったな。
あぁ、そういえば。
「使うか、あの魔法」
普段は役に立たないから、すっかり忘れていたが。
「パニッシュメント・フラワー」
リンリンの足元を中心に、魔法の花が咲き誇る。
フラワーは悪役令嬢の気持ちを和ませる魔法だ。
メタモルフォーゼの発動条件と矛盾するため、これまで発動したことがなかった。
が、今回だけは特別。
「ケケ……。(わぁ、綺麗なお花さん)」
リンリンの表情筋がすっかり緩んでいる。
まるで『危機』や『危険』など無縁といった具合に。
私の側に魔法の蝶々が現れて、リンリンが追いかけ始めた。
気が緩んでいるだけに留まらず、向こうから近づいてくれるなんてありがたい。
「キャッキャ!! (あはは、まてまてー)」
間近に寄ったところで、リンリンの腕を掴んだ。
よし、ここまで上手くいったならもう決まりだ。
フラワーを解除してみれば、
「キャキ!?」
大きく目を見開いて、驚いてみせた。
慌てて転移するも、無駄である。
何故なら、掴んでいる私も巻き込んで移動するから。
「終わりだな。どうしたものか、すでにゴブリンになっているし……」
ふと、リンリンが被っている冠に視線をやる。
なにかの頭蓋骨を加工したようだ。ハーピィ族か?
そういえば、先程からハーピィの子供が私たちの戦いを見守っていた。
他の魔物たちに加勢するでもなく。
仲間ではないのか? 冠の頭蓋骨と関係があるのだろうか。
「……」
これまで私は、どんな悪役令嬢も殺しはしなかった。
死ぬのは一瞬で終わる。そんなもんじゃ怒りが収まらないからだ。
何もかも奪い去り、永遠の生地獄を生きてもらはなくては気が収まらないから。
こいつの手下となったマーチンのように。
だが、それができないと言うのなら。
「殺処分しかないな。魔物駆逐法によると、危害を加えてきた魔物を殺しても犯罪にはならん」
「キャッキャウキャーーッッ!! (私は、私はマリアンヌ様に選ばれた悪役令嬢だぞーっ!!)」
「黙れ。なんと言っているのかわからん」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
戦いが終わり、私たちは旅を再開した。
きっと山の魔物たちにも平和が訪れることだろう。リンリンを失ったゴブリンたちの末路は……考えるまでもないか。
「強敵でしたねぇ、私の囮作戦がなければ負けていましたぁ!! ですよね、フェイトさん」
「ふふ、うん。ラミュちゃんのおかげだよ」
「わーい!! やったーっ!!」
確かに、今回は三人で力を合わせたからの勝利である。
だからといってラミュを褒めるのは癪だが。
「いいですよ〜。フユリンさんが褒めなくても、フェイトさんに褒めてもらいますから〜」
「そりゃよかったな」
「そういえばマーチンがいましたね。すっかり心までゴブリンになっちゃって。いまの生活も楽しんでいるんじゃないですか? ゴブリンなりに」
「どうだろうな。メタモルフォーゼにはまだ秘密がある」
「?」
ゴブリン化したあと、徐々に知能が落ちていく。
が、定期的に人間だったころの記憶と知性が戻るのだ。
もちろん、また心までゴブリンになるのだが。
何度も何度も、自分を取り戻しては絶望と後悔に苦しみ、己を失う。
その繰り返し。
「急ごう。一秒でもはやくマリアンヌをゴブリンにするために」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※あとがき
当分、モンスターが登場する予定はないです。
一応、ファンタジーだけど。
応援よろしくお願いします。




