第33話 リンリン② ウケキャッキャーーッッ!!
※まえがき
今回は三人称です。
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スウィリーというハーピィ族がいた。
まだ子供ながら美しい羽と、聴くものをみな魅了する歌声を持っている女の子だった。
彼女の魅力は多種族さえも惚れさせ、山一帯のアイドルのような扱いをされていた。
そのスウィリーが、ボロボロの姿でゴブリンたちに連行される。
巨大な洞窟の入り口まで。
棒で叩かれて膝をつくと、洞窟から誰かが出てきた。
ハーピィの女王、スウィリーの母の頭蓋骨で作られた王冠を被った、一匹のゴブリン。
現在山を支配する悪役令嬢、リンリンだ。
「ウケケーーッ!! (どこに隠れていたのか知らないが、ようやく私の前に現れたね小娘が)」
手下に成り下がったオークたちが、白い椅子を持ってくる。
多種族の骨を組み合わせた玉座だ。
リンリンはそれに腰掛けると、スウィリーを指差す。
「ケケ、ウキャーッッ!! (あんた、女神のように好かれているんだってねえ!! 気に食わないわ!! 晒し首にしてやる!!)」
「私は別に、そんなふうに振る舞ったつもりはありません!!」
「キャキャケケーーッッ!! (黙りな小娘!! この山で最も美しいのは、私でなきゃ気が済まないんだよ、このクソカスがぁぁ!!)」
「うぅ……」
「ケケケ、ウキャ!!(なんだいその反抗的な目は。まーだ自分の立場がわかっていないようだねえ!! おい、あいつを連れてこい!!)」
指示をされたゴブリンが、小瓶を差し出す。
そこには、小さな人型の妖精が閉じ込められていた。
「キキ、キャキャキャ!! (この森の最後の妖精さ。他の妖精どもは皆殺しにした!! お前がいますぐ頭を垂れて、忠誠を誓えば、こいつだけは助けてやるってんだよスカタン!! 出来の悪い頭でも理解できただろう!?)」
「なんてことを……」
誓ったところで、どうせ自分は殺される。
そもそも、あの妖精を助ける保証はない。
ポロポロとスウィリーの瞳から涙が溢れだす。
あいつが来てから、山は変わってしまった。
弱肉強食の世界ではあったが、それなりに平和だった。
外来のゴブリンなんて簡単に追い払えるはずだったのに。
リンリンは魔法が使えた。
強化魔法で強くなった手下のゴブリンたちが、次々と多種族の住処を襲っていったのだ。
何故リンリンは魔法が使えるのか。
何故悪役令嬢を名乗っているのか。
答えは一つ。
マリアンヌによって改造されたゴブリンだからである。
魔法研究所にて実験と教育を施され、山の生態系を狂わせるよう指示されたゴブリンだからなのだ。
それ自体に深い意味はない。
単なる、マリアンヌの好奇心と暇つぶしである!!
「ウケケケケーーッッ!! (私はあのマリアンヌ様に認められた悪役令嬢なんだよ!! この山の全てが、私のものだーッ!! なあ? マーチンよ)」
顔だけ人間のメスゴブリンが、楽しそうに頷く。
かつて影武者という姑息な策を用いながらも、フユリンの手によってゴブリンにされた悪役令嬢である。
もはや人としての知能はないが、何故か彼女たちの仲間になっていた。
「ウキ、ウキケケケ(私はお前ら平凡な魔物より遥かに高い知能を兼ね備えている。私の支配から逃れることなど、誰もできないのだーーッッ!!)」
「くっ……」
「ケケキ、ウケケケ!! (さーて、んじゃそろそろあんたの小綺麗な顔の側を引っぺがしてハーピィ族の連中に送りつけてやろうかね!! その前にこの妖精をぶっ潰してやらなきゃか!!)」
リンリンが手を挙げると、部下のゴブリンが斧を振り上げた。
そのとき、
「まったく、悪役なのは当たっているが、令嬢とは呼べんだろうに。いまさら令嬢の定義ついて議論する気はないが」
三人の人間が、姿を現した。
銀髪の女が、リンリンを睨む。
「まぁ、悪役令嬢だと言うのなら……さっさと潰すか」
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※あとがき
叫び声と込められた意味の長さがどう考えても違う。
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