表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/74

第30話 二大組織の長たち

※まえがき

今回は三人称です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 某国某屋敷。

 カーテンを締め切った薄暗い食堂にて、数名の老人たちがそれぞれ席についていた。

 一番下手の席に座る男の顔面は青ざめ、頭を抱えている。


「なんと詫びればいいか……」


 別の男性が口を開く。


「残念だが、君の家はおしまいだ。もうじき君も処刑され、バカ息子のもとへ召されるだろう」


「本当に申し訳ない。まさかコーロが、勝手にテロを起こすとは」


 男はあのコーロの父であった。

 魔法学校でフェイトを殺そうとした、ナルシストの貴族の男である。

 フユリンに倒された後、生まれたことを後悔するほどの拷問の末、死亡していた。


「警戒すべきは、魔法の類で君から我ら『反悪役令嬢勢力(ヴァクシンズ)』の情報が漏れてしまうことだな」


「それだけは絶対にない!! 私は防衛魔法に長けている。気づかれないように状態異常無効の魔法を使うくらいわけない!!」


「…………」


 出入り口である観音扉が開いた。

 黒髪の、若い青年が入ってくる。


 途端、老人たちは立ち上がり、頭を垂れた。


「遅れてすまない、みんな」


「メディスン様!!」


 青年は挨拶を済ませるなり剣を抜き、コーロの父親の首を跳ねた。


「これで解決だろう」


 飛ばされた頭部が、カーペットの上を転がる。


「さて、みなに報告がある。僕の情報網によればどうやら、フェイト嬢は彼女と旅をしているらしい」


「か、彼女?」


「ほら、僕が前々から目をつけていた例の女。フユリン」


 メディスンはゆっくりと歩き出し、上座の席に腰掛ける。

 メイドが運んできた紅茶にミルクを入れて、マドラーでかき回す。


「そろそろ、一度彼女に接触しようと思う」


「で、ですが……」


「ですが、では事は進まない。コーロくんは視野の狭い愚息であったが、行動力だけは君らより優れていた」


 老人たちが黙り込む。

 誰も、メディスンの発言に異を唱えることはできなかった。

 何故なら彼こそ、反悪役令嬢勢力(ヴァクシンズ)のリーダーだからである。


「おそらく協力関係は築けないだろうが、構うものか。もし僕の計算通りなら、今年中には悪役令嬢教会を、最低限マリアンヌを処分できるはずだ」


 クリーム色に染まった紅茶を、メディスンは一気に飲み干した。


「早くこの世界を蝕む病を、取り除こうじゃないか」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 同時刻。

 とある屋敷のベランダで、一人の悪役令嬢が優雅に紅茶を飲んでいた。

 カールをかけた長い金髪。氷のように冷たい眼差し。黄金のドレス。


 悪役令嬢協会会長、マリアンヌ・トウガラシロップであった。


 庭一面に咲き誇る花を横目に、カップを唇に近づける。

 そこへ、側近の騎士が駆けつけた。


「マリアンヌ様、ご報告があります」


「何事ですの?」


「悪役令嬢ハンターの手によって、バード嬢がゴブリンになったと知らせが」


「あぁ、例の」


 フユリンたちの活躍は、マリアンヌの耳にまで届いていた。

 もちろん、名前や顔はまだ不明である。


「バードって確か……思い出せないですわね。とにかくそんな痴れ者、さっさと殺してしまいなさい。全国の悪役令嬢たちに警備の強化の通達を。なんなら『災悪姫騎士団シュヴァリエ・ドゥ・マラディエ』を出動させなさいな」


「はい。それと、先日反悪役令嬢勢力(ヴァクシンズ)が起こした学園内テロの件ですが、依然としてフェイト・ハノーナ様の安否は確認できません。行方不明です」


「そうですの……」


 マリアンヌの瞳が、悲しそうに細くなる。

 あの魔法学校で発生した暴動の参加者は、悪役令嬢協会の手によって処刑されている。

 当然、その前にフェイトについて情報を聞き出したのだが、無駄だった。


 身元不明の女 (フユリン)によって気絶させられ、そこから先のことを知らないからだ。


「フェイトは私と気の合う親友ですの。もし例の悪役令嬢ハンターに拉致されたのだとしたら、不安でお昼寝できませんわ」


「捜査を続行します」


「ところで、『あの女』は?」


「……いえ、それもまだ」


「最古の悪役令嬢カトレアの親友、『ティア』。何としてでも捜し出すのですわよ」


「はっ!!」


 思い出す。

 カトレアを始末した瞬間を。

 肉体的には死んでいて間違いないだろうが、遺体は魔女に回収されてしまった。


 どの魔女か定かではないが、もし蘇生でもされたら、手間が増える。


「そういえば……」


 テロを起こした者どもが口にしていた。

 フェイトは、突然人が変わったように大人しくなったと。


 かつて存在した、善なる悪役令嬢たちのように。

 ならばもしや、フェイトもカトレアと同じく……。


「ふふ、だとしたら、わたくしは親友を殺さなくてはなりませんわね」


「はい?」


「いえ、なんでもありませんわ。ところであなた、何か気づきませんこと?」


「え?」


 騎士の全身が緊張で強張った。

 変わった。なにが? 庭のことか? それともマリアンヌ自身のことか?


「乙女に対して失礼ですわね。わたくし、前髪を一ミリ短くしましたのよ」


「いや、あの、気づいていましたが、その前にご報告が先かと……」


「そのうえ嘘までつくの? 死刑ですわね」


「そ、そんな!!」


「ふふふ、冗談ですわよ冗談。さすがのわたくしも、そこまで悪ではありませんわ」


 騎士がホッとする。

 マリアンヌは紅茶を飲み干すと、パチンと指を鳴らした。

 どこからともなく、護衛隊が集まってくる。


「やっぱり死刑」


「え!?」


「ふふふ、やっぱり死刑ですわ〜!!」


 マリアンヌは斬首される騎士に眼もくれず、自室へ戻っていった。

 廊下で待機していたメイドが部屋の扉を開けようとしたとき、


「マリアンヌ様!!」


 別の騎士が走ってきた。


「何事ですの?」


「ティアらしき人物を発見したとの情報が!!」


「ほう、ついに」


 マリアンヌの口角が釣り上がる。


「出発の準備を」


「マリアンヌ様自ら出向くのですか!?」


「もちろん」


 そういえば、指名手配にしている元魔法研究所所長(パッチ・サンダンス)はどうなっただろう。彼女も早く見つけだしたい。


 そう、ぼんやりと考えながら、マリアンヌは部屋に入っていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき


なんだかルビがいっぱいですね。


マリアンヌ編中、終わりです。

次回から新章。マリアンヌ編下。

応援よろしくお願いします!!


♡とか☆とかコメントとかフォローとか!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ