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第20話 バード② 存在価値の追求

※まえがき

今回は三人称です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 バードはマリアンヌに憧れていた。

 この時代、女が求めるあらゆる『モノ』を持っていた彼女に。


 親から『お前は愚鈍で、一族の恥だ』と散々言われていたバードにとって、マリアンヌは雲の上のような人だった。


 親のコネと財産を使って協会に入り、マリアンヌに挨拶したとき、彼女はじっとバードを見つめて笑った。


「透き通るような水色の瞳、美しいですわね」


 マリアンヌは滅多なことで褒めない。

 このときバードに到来した絶頂は、いまでも脳裏に焼き付いている。


 自分には学がない。芸術的才能もなければ、世界に名を轟かせるほどの悪行も思いつかない。

 普通に暮らしていれば、悪役令嬢の中でも底辺層の存在で終わる。


 そんなのは嫌だ。

 もっとマリアンヌに認められたい。褒められたい。

 名前を覚えてもらいたい。友達になりたい。


 そしてマリアンヌのように世界中の男を手玉に取り、幸福になりたい。


 この世で最も価値のある女になりたい!!


 だからバードは、己の唯一の長所である『美』に拘った。

 美しくなるためになんでもやった。

 食事制限、美肌のためのクリーム、ヨガ、薬の数々。


 関係が悪かった親も協力してくれた。


「マリアンヌ様に認められるなんて、さすが私たちの娘ね」


 はじめて親に愛情を捧げてもらった気がした。


 いろいろ試して三年後、久々にマリアンヌに会う機会を得た。

 とある庭園で開かれるお茶会に招待されたのだ。


 そこで、バードは見た。

 マリアンヌと親しげに話す、桃色の髪の女。

 美しい女。


 マリアンヌが妖しく光る月ならば、彼女は透き通るような青空を背景に咲き誇る、ピンク色の花。

 すべての人類が確実に見惚れてしまうほどの、美貌だった。


「あらあなた、えーっと」


「バードです」


「そうそうバード。紹介しますわ。わたくしの親友、フェイトですわ」


「あ、あの……」


「綺麗でしょう。特に桃色の瞳なんか、世界で一番綺麗な目ですわよねえ。わたくしですら羨むレベルですわ〜」


 瞬間、バードは悟った。


 美において、自分は彼女に勝てない。

 比較対象にもなれない。

 もはや自分には、なにもない。


 なにも……。


 それから数日後、偶然手の甲にメイドの鼻血が落ちたとき、自分の手が赤ん坊のような艶とハリを取り戻したように見えた。


 バードが壊れた瞬間だった。


 まずそのメイドを殺し、血を顔に塗った。

 顔が輝いているように感じた。

 もちろん、錯覚である。


 城にいる若いメイドを、片っ端から殺した。

 特に自分より年下のメイドを好んだ。


 親は何も言わなかった。

 娘がまたマリアンヌに認められるためなら、メイドの命などゴミのようなものだからだ。


 当初はバードにもそれなりの罪悪感が芽生えていたのだがーー。


「ごめんなさい。でも私が美しくなったら嬉しいでしょう? だってマリアンヌ様に褒めてもらえるんだから」


 やがて城からメイドがいなくなり、そして……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 城の地下室で、バードは入浴していた。

 街の娘たちから搾り取った血を溜めた浴槽に浸かり、今朝殺した娘の血をグラスに入れて飲んでいた。


 視界の先には天井から吊るされた娘たち。

 まだ、辛うじて生きている。


「やりなさい」


 騎士たちが、娘の腹を槍で軽く刺した。

 悲鳴と共に、血が滴る。


「ふふ、うふふふふ!!」


 若い女の悲鳴を聞くこと、それがバードの性欲を刺激する。

 何度も何度も殺すうちに、性的興奮を覚えるようになっていた。


「ちゃんと逃げないようにしなさいよ。この前の娘みたいに逃げられたら、許さないから」


「「「はい」」」


「ふふ、私はもっと、もっと美しく……」


 毎日毎日、他人の血を飲み続けていたせいだろう。

 鉄分の過剰摂取で肌は不気味に黒く染まり、複数の感染症を患って顔の肉がただれ、頭部はハゲていた。


 歯も何本か抜けて、目は真っ赤に充血している。


 それでもバードは、鏡の前に立つ度に自分の美しさにうっとりするのだった。

 もう、彼女の脳は正常な判断力すら失っている。


 そこへ、


「はぁ、想像以上の光景だな」


 フユリンとラミュが現れた。


「うげげげげえぇ!! こ、こんな状況はさすがの私も無理ですよーっっ!!」


 知らない女。町人が差し出した娘ではなさそうだ。

 ならば不届き者? すぐに排除してやる。


 バードが騎士たちに指示を出そうとしたとき、遅れて誰かが入ってきた。

 布で口元を隠しているが、あの目、髪、間違いない!!


「フェイト……さま……?」


 フェイトは部屋の凄惨さを目にした直後、


「きゃあああ!! ……あっ」


 ショックで気絶してしまった。

 バードは急いで浴槽から出ると、フェイトに近づき、布を取った。

 間違いない、この顔。この美しさ。


「な、なんで、あなたが……」


「お前、フェイトの知り合いか?」


 フユリンの言葉を無視し、バードの脳細胞が熱く燃える。

 フェイト。美しい女。マリアンヌに認められた女。

 欲しい、この美貌が欲しい。


 絶対飲む!! 絶対浴びる!! こいつの血を!!

 そしたら私は、こいつ以上に綺麗になれるに違いない!!


「私を無視するな」


 フユリンの蹴りがバードをふっ飛ばした。

 味わったことのない痛みが、バードに涙を流させる。


「邪魔をするな醜女が!! そいつを殺して、私は女神になるのよ!!」


「私はナルシストではないが、少なくともお前よりはマシな顔をしている自覚がある」


「………………は?」


「鏡をよく見ろ、化け物みたいな体をしているぞ、お前」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき

フェイトとマリアンヌの出会いの話、いつかやりたいですね。

イチャイチャラブラブ純愛百合小説になるはず。


応援よろしくお願いします。

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