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第19話 バード① 女がいない街

 旅を続けていると、川岸でゴブリンの群れを見かけた。

 森と隣接しているので、そこに生息していた連中なのだろう。


「ぬわっ!! フユリンさん!! 変な臭いしますよ!!」


「腐敗臭だな。ラミュ、フェイト、鼻を塞いでおけ」


 簡素な荷台に座っていたフェイトが頷く。

 あのゴブリン共、おそらく死肉を貪っているだろうな。


「ん……人間を食べているのか」


 馬に乗ったまま近づく。

 ゴブリンたちがこっちを向いた。

 おや、人の顔をしたゴブリンがいる。


 確かあの顔……。


「シャイニーさんですっ!!」


「あぁ、お前を踏みつけていた」


 ラミュに出会った街で、私がゴブリンにした悪役令嬢だ。

 どうやら、すっかり中身もゴブリンになって、仲間たちと楽しくやっているようだ。

 ゴブリン共に光弾を放ち、追い払う。


 やつらが食べていたのは、やはり人であった。

 若い女。

 腹が裂けている。


 それに、体中に塞がれたての切り傷まで。


 フェイトが小さな悲鳴をあげた。


「酷い……。さっきのゴブリンたちに襲われたのでしょうか」


「いや、臭いからして死後数日経っている。それに、体がだいぶ細い。おそらく、どこかへ向かう途中に餓死して、ゴブリンに死体を発見されたのだろう」


 たしか、この先にジーオという都市があったはず。

 そこの人間か?


 私たちは穴を掘り、女を埋めてから旅を再開した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ジーオは農業が盛んなことで有名であった。

 私たちがいる国随一の面積を誇る麦畑があり、その他菜園や牧場の数も多いのだとか。

 自分たちの食べ物は自分たちで作れるうえ、輸出量も国内一位。

 故に、街の経済はだいぶ潤っている。


「わーお、綺麗な街ですねえ!!」


「石造り、窓にはガラス、水路まである。なかなか発展しているな」


 ふとフェイトを見やると、難しい顔をして首をかしげていた。

 ちなみに、彼女は現在布切れで口元を隠している。

 『悪役令嬢フェイト』だとバレると面倒事になりかねないから。


「どうしたフェイト」


「あ、いえ。以前のフェイトの記憶、ぼんやりとしか覚えていないって、話しましたよね?」


「あぁ」


「その記憶が告げているんです。この街にいる悪役令嬢は、危険だと」


「悪役令嬢……バードという女だったか」


 街の領主の一人娘。

 協会名簿に名前がある以上、ちゃんと悪女なのだろう。

 私がこの街に訪れたのも、そいつを潰すためである。


 改めて街を見渡す。

 すれ違う男たちの視線が向けられる。

 それにしても、この街……。


 ラミュが口を開く。


「なーんか、ジロジロ見られていますねえ。たくさんの男から見られていますねえ。私が可愛すぎるからでしょうか。参りましたねえ。困るんですよねえ。私ってほら? 純情タイプじゃないですかぁ? いろんな男性と関係持てないタイプなわけじゃないですかぁ? 一人に選べないですよー。試練でも出しますか。私が提示した条件をクリアした人間だけが私の恋人になれるみたいなぁ?」


「とりあえず宿を取るか」


「第一の試練は私たちに最高級の宿を貸すこと、みたいにしますか。それで三分の二を振り落としますぅ」


「……」


「第二の試練、どうしましょうかねえ」


「……」


「なにが良いと思います? フェイトさん」


「え、私!?」


 フェイトを仲間にしたせいで、こいつが話しかける対象が増えてしまった。

 クソッッ。


「う、うーん、とりあえず50m走らせて誰が一番速いか決めるとか、かなあ?」


「よーし街の男どもぉ!! 一列に並べぇい!!」


 フェイトもフェイトで乗っかるな。

 ていうか足の速さなんぞで男を選ぶなよ、ガキじゃあるまいに。


 ラミュはガキか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 宿で部屋を借り、窓から街外れにある城を眺める。

 あそこに悪役令嬢バードがいるはずだ。

 噂によると、滅多に人前には出ないらしい。


 フェイトが近づいてきた。


「フユリンさん、城に侵入するのは明日なんですか?」


「そうだな。今日は旅の疲れを癒そう。ところで、悪役令嬢協会を変えたいと言っていたが、具体的にはどうするんだ。いい加減考えは纏まったのだろう?」


「実は……まだ……。とにかく、一人一人に会って、悪いことをしないよう説得するつもりです」


「……わかっていると思うが、私はすべての悪役令嬢を潰す。改心したって許さない。お前は利用価値があるから見逃しているだけだ」


 フェイトがしょんぼりとうなだれた。

 私の頑固さと自分の無力さにゲンナリしたのだろう。


「……はい」


「私が悪役令嬢に戻りたがっているのも忘れないでくださいよーっっ!!」


「そうだな」


「適当にあしらわれたーっ!!」


 相変わらずの煩さに頭を痛めていると、部屋の扉が勝手に開いた。

 棒やクワを持った男たちが、ゾロゾロと入ってきた。


「ななな、なんですかーっ!! いくら私が可愛すぎるからってーーっ!!」


「ラミュ、黙れ」


「はい!!」


 男の一人が喋りだす。


「お前たち、なにしにここに来た」


「観光だが」


「悪いが、お前たちの旅はここでオシマイだ。生贄になってもらう」


「突然だな。理由を聞かせろ。どうせ殺すにしても、情くらいかけてほしいものだ」


 男たちが顔を見合わせる。


「俺たちの娘を守るためだ。三人なら……三週間は余裕ができる」


 全貌が見えてきたな。

 この街に入ったときに感じた違和感。

 若い女がいなかったこと。


 ゴブリンに食われていた女のこと。


 おそらく、悪役令嬢と関係がある。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき

応援よろしくお願いします〜。

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