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プロローグ

 ここは転生案内所。生き物は亡くなった後、ここに来て来世を決めることとなっている。そして、その案内所を管理しているのは、今生まれている生命の中で一番知能が高い『アルファー星』の者たちだ。アルファー星の者は、全生命が死んだ後にたどり着く、いわゆる天国を見つけた。もう百年も前のことだが…まだ他の星の生命は見つけていないようだ。

 

 私、ユイナは転生案内所の案内人、地球係だ。

教育所(人間界でいう学校)を卒業したあと、仕事に悩んだ。アルファー星の職業は全部レベルが高い。40社ほど面接に挑んだが、全て落ちてしまった。最後に残った仕事は、風俗だった…いや、たぶん他の仕事もたくさんあるはずよ?けれど家族に紹介されたのはそれで最後だった。風俗はマズい、、思っていた最中、親戚に案内所の仕事を紹介してもらい、面接を受けてみた。すると思ったよりウケが良くて採用してもらったのだ。まぁ、風俗で働くよりよっぽどましだ、と軽い気持ちで初仕事を迎えたが……地獄だった。


「魔法が使えるサイコーな世界に生まれ変わりたい!!」という意味わからん固定概念を抱えてやってくる人が大体で、そういう人は頑固でOK以外聞かない。一生懸命口説いて、やっと転生先に送れた…!と思ったらまた同じような人が案内所にやってくる。無限ムープが始まり、絶望する。それの連続だ。


  「ぐぅわぁ〜!つっかれたぁ〜」

休憩時間に入り、私は思わず声を発した。休憩時間はお酒が許されるから飲める内に飲まなきゃね。

 「お疲れ〜」とセンパイが声を掛ける

「くぅ~、まーた頭の硬い人が大勢きまして!対応に困り係長を呼んだら、係長はその人にペコペコ頭下げてるんですよ!上司がちゃんとやらんから客もちゃんとしないんですよ!!」

先輩は苦笑いだ。

休憩時間になると酒が入り、先輩にグチる。それが私のルーティン!

「ていうか、異世界で好き勝手出来るって精神が狂ってますよね!魔法ボンボン使って、自分は不死身で…って3年で世界終わりますよ!」

「でもさぁ、人間は私達より200年ぐらい寿命短いじゃん?死ぬまでできることは限られてるわけで、何もできずに死んじゃったら地球を恨んじゃうんだと思うよ。でも死んだ後に好きなように出来るっていう安心サポートみたいなのがあると、悔いなく死ねるってことだと思うよ」

先輩は人の気持ちを考えられるいい人だ。でも

「いーや!違いますね!たぶん夢ですよその人の!!5歳ぐらいに『僕はア◯パンマンになりたい!』って感じになりますよね!そこからずーっとその夢を追っかけてるんですよ!きっと!!!」

酒の入った私は融通が利かない。よくわからん論を先輩に押し付けた。

「まぁ、その人にも事情があるでしょ。でもユイナ、そんなんだと、『心の狭い人』って思われるよ。」

「うっ…」

私は『心の狭い人』というワードに弱いのだ。小さい頃からこんな感じの性格だった。小学生の頃。好きだった男の子に告白したら「ぼく、心の狭い人とは関わりたくないんだよね」と結講傷つくフラれ方をした。そこから性格を直そうと努力しているのだが……あまり変わりがないようだ。

「……努力します。」

私はしょぼんとした声で言った。すると私の声を待ったかのように放送が流れた。

「『ピーンポーンパーンポーン♪』皆さん。休憩時間終了です。自分の係に戻りましょう!」

ああ、もう終わりだ。先輩に「失礼します、」と言って私はその場を後にした。


自分の係に戻ると、係長が皆に話をしていた。

「えーっと、今日からここの係に入る、カズマさんです。入社したばっかりなので、みなさん、ここのことを教えてあげてください。あと、それから、えーと…」

係長は新入りの紹介をしたあと他にもなにか話したかったらしいが、忘れてしまったようだ。「ちょっとおまちを」と自分の部屋に駆け込んで行った。メモ取りに行くのかな?

すると先輩たちからキャアキャアと黄色い声がしていた。

何だ何だと先輩たちの方を見てみると、皆がカズマのところに集まっていた。よく見てみると、カズマは顔の整った、『イケメン』というものだった。私はそういうのには興味がない。もうちょっと力強く、頼りになりそうな人をタイプとしているからね。

「カズマさぁん、どうして転生案内所で働こうと思ったんですかぁ?」

先輩が気持ち悪いぐらい声をかけてカズマに質問した。

「えっと、いっぱい面接した中で、唯一受かったからなので特に…」

「へ、へぇ…」

カズマの返答に先輩は困ったらしい。もうカズマに話すことが思い当たらなくなったか、みんなドギマギしている。

「はじめまして。ユイナといいます。よろしく。」

まぁ一応礼儀として挨拶をしておいた。

「よ、よろしくお願いします!!ユイナ『先輩』!」

カズマの言った『先輩』という言葉に嬉しくなってしまう。

もう私も先輩と言われるような立派な人になったのか!可愛い後輩は大切にしないとね!私はにっこりした。カズマは少しだけ頬を赤らめているように見える。緊張したのかな?

すると、係長がメモを持ってはぁはぁ言いながら戻ってきた。


「え、えーっと、『仕事を効率化すべく、我が係では、ペアで一人のお客様を対応することと致します。ペアは自由決めてください。』」

係長が素晴らしいぐらいの棒読みですごく大切な事を言った。

ペアか。そういえば私は信頼している先輩はこの係には全くいないのだった。では、ここはあったばかりの『後輩』にするか。そしていつしか…!「さすが先輩!頼りになる!」

だとか、「最高です先輩!もうもはや神です!」とか言われるようになりたい!初めての『後輩』に!

けれど、その後輩は先輩たちに囲まれていた。

「カズマくん?もしよかったら私と組んで…」「ダメよ!私が先に誘ってるんだから!!」

おお、やっぱり女子は怖いな。後輩は諦めることにしよう。

最後、余った人でいいや。ずっと待ってよ〜っと


 「あ、あの、ユイナ先輩!」

遅くなりそうだったから目を瞑っていた私に誰かが話しかけた。ん?だれだ?と思いながら目を開けると目の前にカズマが立っていた。

「よかったら、ボクと組んでくれませんか?!!」

「はい?」

「あ、えーと、いま自己紹介してもらって、名前を知っているのはユイナ先輩だけだったので…」

カズマは私と組みたいらしい。私は大歓迎だ。けれど…

先輩たちは多分大反対だ。今も怨念の目を向けられている。

「私は別にいいけど…」

と言うとカズマは目を輝かせて

「ホントですか!?ありがとうございます!」

と私の手を握ってブンブンと上下に振った。

私が苦笑いをして、おそるおそる先輩たちの方に顔を向けると……呪い殺してやる、と言わんばかりの目で見られている。中にはもう呪いの儀式の格好をしている人もいる。

私の案内所生活はどうなってしまうのだろうか。

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