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エピローグ 

少女は5歳になる日まで、両親と暮らしていた。その家族は愛し愛される関係を築いた普遍的な家庭に見えた。時に喧嘩しながらも、一人暮らしするその日まで穏やかな生活が送れるだろうと。きっと、少女もいつまでも幸せな生活が続くと信じて疑わなかったはずだ。

けれど、どんなに幸せそうに見えても、人は裏の感情を抱えている。その感情が表に出たのならば、幸せな日常というものはあっという間に崩壊していく。



その日は、少女が5歳になる誕生日だった。ワクワクしていた少女はいつも起きる時間より、早い時間に目が覚めた。1年で一番幸せな日。自分の欲しいものが買ってもらえて、自分が好きなものが夜ご飯に出てきて、ケーキを食べられる特別な日。

だから、普段おねだりするところを見かけない少女でも、母に対して「イチゴがいっぱいあるケーキがたべたい」と甘えるのだろう。

少女の母は「今日はいつもの誕生日より特別な日だから、準備に時間がかかるの。準備している間、別の場所で()()()で待てる?」と言った。

そして、少女は母とともに施設に行き、施設にいた大人に対して、母に教えられた通り「わたしをあずかってほしいです」と言った。少女が言葉を発する時には、少女の母はその場から消えていた。



それから、小学生になるまでの間、少女はずっといい子で両親の迎えを待っていた。

施設の大人たちは、読み聞かせなどを子供たちに行っていた。その数ある読み聞かせの中でも、少女は英雄譚を気に入った。その話は、勇者とその仲間たちが力を合わせて魔王を打ち倒すというどこにでもあるストーリーだ。魔王を倒す勇者や自在に魔法を扱う賢者よりも、少女は自由に生きる冒険者に憧れを抱いた。

それから、少女は少しでも冒険者に近づくために、仲間を集めたり、強くなろうとした。

例えば、いつも少女を遠巻きにしているほかの施設の子供たちと一緒に遊ぼうとした。ある子供は「おまえはいやなやつだからいっしょにあそびたくなんかない」と言った。また、ある子供は「おまえきらい」と言った。その言葉を聞いた少女は、無理やり誘うのはいい子がすることではないと考え、施設の子供たちと一緒に遊ぶことを諦めた。

ある時は、絵本に描かれていた冒険者が剣を振るう姿を真似て、落ちていた木の枝を拾い、素振りのようなことを行っていた。それを見た施設の大人は「危ないから、木の枝を振るうのはやめようね。安全な室内で遊ぶように」と言った。いい子は大人の言うことをちゃんと聞くと考えた少女は、外で遊ぶことをを諦めた。



小学生になった頃、ようやく、少女は己が無知で鈍感なことに気がついた。

少女のことをある人は厭う目で見ていた。また、ある人は薄気味悪いという目で見ていた。あるいは、嫌悪の目で見ていた。疎ましい、不気味、嫌い、どこに行っても歓迎されていなかった。

なぜ、両親は迎えに来てくれないのだろう。

なぜ、施設の子たちは一緒に遊んでくれないのだろう。

なぜ、施設の大人たちは外で遊ぶことを赦してくれないのだろう。

いい子でいるために、少女はそんな疑問の数々を無意識のうちに考えないようにしていた。

でも、そんな疑問は抱くに値しない。だって、自ら捨て子になったという事実が全ての真実を編み出すから。



少女の両親は少女のことを愛していた時期も確かにあった。

けれど、次第に自分たちの言葉を盲目的に信じる少女のことを疎ましく思うようになった。何一つ疑問を抱かず、自らの意思を持たない人形のような存在。

だから、少女の両親は最後に「いい子に待っていて」という言葉を残した。もし、その言葉と反するような行動をした場合、ちゃんと血の通った人間だと証明されるから。

結局、言葉は呪いのように少女に染み付いて離れず、人形の烙印を押された。

少女は、人形ではないのにもかかわらずに。


 

児童養護施設の職員たちは、少女のことを不気味な存在としてしか見ることができなかった。

少女1人だけで訪ねてきて預かって欲しいと言ってきたり、1人で木の枝を振り回していたり。よく分からない行動をする気味悪い子供。

そのため、他の子供に悪影響を及ぼさないように、監視と隔離の意味を込めて、外に出ることを禁じた。

少女は、他の子供と何も変わらないのにもかかわらずに。



自ら児童養護施設を訪ねてきた嫌な奴。それが大なり小なりの子供たちの見解だった。

児童養護施設の子供たちは居たくてそこに居るわけではない。暴力から逃れるため、育児放棄されたから...etc。そういった要因があって仕方なしに児童養護施設に居るにしか過ぎない。

そのため、自発的に児童養護施設に居る少女は異端的な存在であり、悪意を当てられる的だった。必然的な行動として、子供たちは異分子を排除しようとした。

少女は、異分子ではないのにもかかわらずに。



人の言葉を行動を信じられなくなった少女は、人を遠ざけるようになった。それは人と人を繋ぐ鎖を失う行為であり、少女は誰よりも孤独になった。

主人公の生い立ち

New 人間不信

lost 存在を証明する鎖


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