森のくまさん4
森に一匹のくまがいました。
いつも 元気いっぱいな くまくんですが 最近は 元気がないんです。全然 笑わないし おしゃべりもしないし よく見ると 口がへの字になっていて 不機嫌な顔なんです。大好きな はちみつを持って行っても 口のへの字が 少し一の字ぐらいになるぐらいでした。それどころか 大好きな くまさんの顔を見ても 変な顔で笑おうとするだけでした。
「くまくん どうしたの?」
「何かあったの?」
て くまさんが 聞いても 何も言わずに 口をへの字にしたままだった。
「どうして 何も言ってくれないの。」
「いつも 何でも 言ってくれたのに。」
「わたしの事 嫌いになったの。」
と くまさんが言うと くまくんは 目が回るほど 首を左右にふりました。
「じゃ どうして 何も言ってくれないの。」
でも やっぱりくまくんは何も言いませんでした。
「もう くまくんなんか知らない。」
いつもは優しい声のくまさんの声が少し大きくなりました
それを聞いて とうとう くまくんは 大きな声で泣き出してしまいました。
その時 くまさんは くまくんの歯を見てびっくり!
くまくんの一番奥の歯が真っ黒になっていたのです。
「くまくん 歯が真っ黒になってる。」
「歯が痛くて お口が開けられなかったのね。」
くまくんは 慌てて口を閉じて手で口をおさえました。
「くまくん 歯が痛くなったら 歯医者に行かなきゃ 治らないよ。」
それを 聞いた くまくんは慌てて口を閉じ首を左右にふりました。
「歯を治さないと 大好きな はちみつ ずーと食べれないよ。」
「それでもいいの。」
くまくんは首を左右にふりました。
「わたしと おしゃべりできないよ。」
くまくんは さっきより早く首を左右にふりました。
「じゃ 歯医者に行こう。」
「一緒に 行ってあげるから。」
と 言われても くまくんは首を横にふりました。
すると くまさんは小さな声で
「わたし‥くまくんとおはなしできないかと思うと‥」と 言いながら 目からは涙が溢れそうになっていました。
それをみた くまくん 慌てて 小さな声で「行く。」と 言いました。
すると くまさんの目から涙が消え いつもの笑顔になっていました。
「じゃ さっそく行きましょう。」
と くまさんが歩き始めました。
でも くまくんはどうしても 一歩が踏み出せませんでした。
「くまくん。」と くまさんの声
どうしょう。今度こそ ぼく くまさんに嫌われてしまう。
どうしょう。歯医者さんに 行かなくちゃ。
でも でも ぼく ありさんから聞いたんだ。ありさんも甘い物が大好きで 歯が痛くなった時 歯医者に行って‥ その時 あまりの痛さに 雲まで飛んで行きそうになったって。
ありさんが 雲までだったら ぼくだったら雲を通り越してお日様まで行ってしまうかもしれない。
そうしたら もう くまさんにも会えない。
そんな事考えたら ううん やっぱり ぼく
行けない。
「くまくん 一緒に行こう。」と 言ってくまさんはくまくんの手を握ってくれた。
くまさんの手の温もりがくまくんの身体の中に伝わって来た。くまさんの温かさは くまくんに勇気を与えてくれました。
「ね。」「一緒に行こう。」と 言われて くまくんは小さく頷いた。そして ゆっくりと歩き始めました。
あー幸せだな。くまさんと一緒に手を握って歩けるなんて ぼく なんて幸せなんだ。
あ〜 なんだか ぼく 痛いのが消えてしまった気がする。もしかして ぼく 治ってきたかな。
いや 治ってない。
痛い。痛い。
あ〜 やっぱり痛い。
あ〜 こんな事なら‥
くまくんは甘い物が大好き。その中でも はちみつが大好き。はちみつが口の中に広がったときの喜びは あ〜 たまらない。
だから はちみつの甘さが少しでも残るように 出来るだけ はちみつを口の中に溜めておいたんだ。そうしたら その内に 歯が痛くなってきて その内に口も開けられないぐらいになって‥ お腹はグーグーなるし 痛いし もう ぼくはお腹のグーグーと痛いのとで大変だったんだ。
こんな事なら はちみつを口の中に入れておくのを ちょっとにしたらよかった。
と 考えていたら 目の前にあの文字が見えて来た。
”歯〃の字が書いてある看板が‥
ぼくの 足は止まってしまった。
「くまくん」
「くまくんが 頑張って 歯が痛いのを治したら プレゼントあげる。」
「だから 頑張って。」
「え!」
くまさんからプレゼント。
「だから‥ね。」
それを 聞いてくまくんは思い切って 歯医者さんのドアを開けた。
でも 目は閉じたままだった。
だって そこには きっと 大きな顔で 頭には角のが2本あって 目はつり上がっていて‥それから‥と その時、
「こんにちは。」
あれ 優しい声。
くまさんかな? そんなはずないか?くまさんなら ”こんにちは〃なんて言わないし じゃ 誰?
くまくんは 恐る恐る目を開けた。そこには 真っ白な毛で しっぽはふさふさで 目はどちらかと言えば 下がっている ねこさんがいた。
「あらあら お口が開けられなかったのね。」
「痛いの治さなくちゃね。」
「ここに座って。」
と 言って切株で出来た椅子を指差した。
「くまくん 頑張って!」
そうに言われて くまくんは勇気を振り絞って椅子に座った。
ねこさんは にっこりしながら
「ごめんね。手は離してくれる。」と 言った。
え!離すの?
と思ったけど 仕方ない くまくんは渋々手を離した。でも まだ手の中にはくまさんの温もりが残っていた。
「くまくん 歯を治すには ちょっと痛いのを我慢してもらわなくちゃいけないの。」
きた!お日様だ。
「だから くまくん 今までで 一番痛くて嬉しかった事を思い出して。」
今まで 一番痛い事か。一番痛い事と言えば そりゃ ぶんぶんに ぼくの鼻を刺された時だな。あの時は 痛かったよなあ。
その時 くまくんの歯に何かがあたった。 ”いたい〃 ”いたい〃 ”いた〜い〃
やっぱり 我慢できない。と思って 椅子から立ち上がろうとした。その時 くまさんと目があった。
我慢 我慢
でも やっぱり ”いたい〃”痛い〃
がまん− 。
「もう少しよ。痛い事の後は嬉しかった事よ。」と ねこさんが言った。
嬉しかった事‥それは ぼくの鼻は痛かったけど その後は ぶんぶんとなかよしになった事だ。そして 今では ぼくの大切な友達になったことだ。
でも‥
くまくんは ポロポロ泣き出してしまった。
それを見て ねこさんは、
「くまくん 頑張ったから もう 歯はそんなに痛くないと思うよ。」
「それに 痛い後は嬉しい事よ。」
うん。
そういえば 痛いのがちょっとになってる。
嬉し事‥か。でも やっぱり くまくんの目からは涙が出てきた。
「どうしたの?くまくん。」
ねこさんがぼくの顔を覗きこみながら聞いてきた。
「あのね。」
あれ?ぼく 口を開けて離せるようになってる。
「あのね。ぼく 今までで一番痛かったのはぶんぶんにぼくの鼻を針で刺された時だったんだ。大事な鼻を刺されて 最初は すご〜く 怒っていてなかよしじゃなかったんだ。けど 最後にはなかよしになって 今では ぼくの大切な友達になったんだ。」
「よかったわね。」
「よくない。ぼくの鼻を刺したぶんぶんは ぼくのせいで死んじゃったんだ。ぼくが‥」
「でも ぶんぶんと 友達になれたんでましょう。友達になれたと言う事は ぶんぶんは くまくんの事を許してくれたんじゃない?」
「お星さまになったぶんぶんも きっとくまくんの事を許してくれてると思うよ。」
「そんな事ない。」「だって ぼくのせいでぶんぶんは‥」
「くまくんが そのぶんぶんの事を思って いる事が大切な事。友達をなくした他のぶんぶんもくまくんの気持ちがわかったから友達になったと思うよ。」
「だから 許してくれてると思うよ。」
「そうかな?」
ねこさんとくまさんがにっこりわらってくれた。
「これからも 今の気持ちを忘れないでね。」
「うんー。」くまくんは小さく頷いた。
「はい。じゃ 最後にお口を開けて。」
そういうと ねこさんはくまくんの歯に白いものを塗ってくれた。
「はい。」「これで おしまい。」
「もう 手をつないでもいいわよ。」
ねこさんにそう言われて くまくんとくまさんは照れ臭そうに手をつないだ。
「はい。」「頑張った プレゼントよ。」と言ってねこさんは真っ白い木に真っ白毛がついた はぶらしを渡してくれた。
「大好きな物を食べた後は また 次も大好きな物が食べれるように はみがきしてね。出ないと 今度は もっと もっと 痛いよ。」と 言ったねこさんの目は少しつり上がった気がした。
ぼくは 慌てて 何度も頷いた。
「ありがとうございました。」
「こちらこそ ありがとうございました。」
「え!」「なぜ ねこさんがありがとうって言うの?」
「くまくんに 友達を思う大切な心を教えてもらえたから。」
「え!」「ぼく 恥ずかしいなぁ。」
と くまくんは片手で顔を隠した。
なぜ 片手か?って それは くまさんの手を離してないから。
「気をつけてね。」
「はい。」「さよなら。」
くまくんとくまさんは手をふりました。
「さよなら。」
ねこさんも手を振っていました。よく見るとねこさんのふさふさのしっぽも揺れていました。
「くまさん ありがとう。」
「いいえ。」「くまくんと またおしゃべりできるようになってよかった。」
「くまくん 頑張ったプレゼント まだだったね。」
「うん。」「何かな?」
「ぼくの大好きなものかな‥」
と その時 くまさんが くまくんのほっぺに チュとキスをしてくれました。
「え!」
あまりの事で ぼくは お日様のところまで飛んで行きそうだった。
なんで 飛んでいかなかったって だって くまくんとくまさんの手はつないだままだったから‥