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たまは私のもの

【十一月九日 雨】


 あの日以来、毎日たまに会いにバス停に行っている。時々姿が見えないこともあるが、一週間の内に五日くらいはそこにいるようなので、どうやらあそこはあの子のお気に入りの場所らしい。


 本当は私の部屋で暮らしてほしいのだが、いきなり連れて行けば、あの子は驚くかもしれない。まずは、私の顔を覚えてもらうことが肝心だ。あの子は夕方にもいつもいるので、その時間帯にも私はバス停に通うことにした。


 前の時と違って、あの子はボロボロだったわけではなかったので、そんなに急いで保護する必要がなさそうだとも思っていた。


 それでもいつかはまた一緒に暮らしたかった。そのためには、部屋の片付けをしないといけない。


 前のたまが死んで以来、何もする気になれなかった私は、当然部屋だって散らかりっぱなしだったのだ。


 あの子は綺麗好きだから、こんな汚い部屋は嫌だろう。まずは部屋中をピカピカにして、たくさんおもちゃも用意して、あの子が快適に過ごせるようにしなくてはいけなかった。



****



【十一月十四日 晴れのち雨】


 今日は、初めてたまの声を聞いた。近くを散歩中の犬に吠えられてびっくりしたのか、可愛らしい声で小さく叫んだのだ。


 なんて可憐な声なんだろう。私は感動で打ち震えるのと同時に、すかさず犬とたまの間に割って入って、あの子を守った。


 たまを傷つけるものは私が許さない。もうたまを、むざむざと死なせたりするわけにはいかない。私がたまを守ってみせる。



****



【十一月十七日 晴れ】


 今日は動揺することがあった。たまに話しかけている男を見てしまったのだ。


 その男は、隣町にある高校の制服を着ていた。どうやら私と同じで、たまを気に入っているらしい。「うちに遊びにおいで」なんて、いかにも気軽な口調でのたまっていたのだ。


 私はすっかり忘れていたのだが、今のたまは野良だった。首輪もしていない、可愛い可愛い黒猫。そんなたまを、人が放っておくはずがない。


 たまは、あの男についていってしまった。


 あの男に飼われてしまうのだろうか。たまの本当の飼い主は私なのに。


 たまが私以外のものになるなんて、許せない。許さない。


 部屋はまだ完璧に片付いていなかったが、かねてよりの計画――たまをうちに連れてくるという計画を、早く実行に移すべきかもしれなかった。


 たまと再び一緒に暮らす。真にあの子を私のものにするのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)これは狂ってるドス黒いメンタルを文学的に展開したホラーですね。いいですぇ~この世界観。グッときますねぇ~。 [気になる点] ∀・)この作品の主人公がどんな人物か。女性なのか男性なのか…
[良い点] 読まさせいただきました。 日記形式で書かれていて、読みやすく、ペットロスに共感ができました。 他の猫を生まれ変わりだと思わなければ、精神が安定しない主人公の描写は、病気的で面白かったです。…
2021/12/11 05:16 退会済み
管理
[良い点] こ、これは……なんか…… サイコホラー?の様相を呈してきました まさかと思うが…… 早まるなよー。
2021/10/28 13:14 退会済み
管理
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