始まり
よろしくお願いします!
「おら!!! さっさと立てぇ!!!」
「ぐあはっ!!」
腹部に鋭い膝蹴りが入る。
力が入らない僕はその膝蹴りが内臓に直接めり込み、内蔵を直接殴られるかのような様なひどい衝撃を受けた。
「早く立て、そんでこの荷物を運べ……ちんたらしてんじゃねぇぞ、また蹴りあげられてぇのか?」
「は、はい……すぐ……立ちます……っ」
痛みと吐き気で立てる気がしないが、立たなければまた蹴られる。
そお思うと、限界と悲鳴をあげる体とは裏腹に僕は立ち上がり、荷物を持ってご主人の後を追従する。
そういえば前にもこんなことあったな…その時は助けてくれた人がいるけど。ありさ、大丈夫かな……。
僕の生活は、1ヶ月ほど前からこんな感じだ。
生活環境はクソ、衛生面もクソ、何よりご主人が…あのクソ野郎がクソ。
ここに来てからまともにご飯も食べていなければ、風呂にも入っていない。睡眠は硬いゴツゴツとした地面で取るのだが、むしろ死ぬまで……死ぬ直前ってくらいまで働かされてるせいでぐっすりだが、朝は頭を蹴られて起こされる。
外を見た感じ、僕以上にひどい扱いを受けている奴隷はいない。そのせいで恨みは募るばかりだ。
たまに脳裏に浮かぶ……日本が恋しい。
何故僕がこのような状況になっているか。
それは……クラスメイトに裏切られたからである。
★★★
「なぁ〜平戸くんよ〜ちょっとでいいんだ、1万円貸してくれねぇか?」
まただ、一体こいつに何度金を貸せば……いや、あげればいいのだろう。
「しっかりマイナス2倍にして返すからよぉ、ギャハハハハwww」
「安西さんいいすねぇそれ! 2万もくれるなんて優しいなひらとぉギャハハハハ」
「お前らひらととか呼んであげるなよ、他のひらとさんが可哀想じゃねぇかwなあ、日陰くん?あーはははっっは!!」
安西……こいつは留年している同級生。
歳上なのをいいことに、何故かこの学年を牛耳ってるやつだ。
おかしいだろ、普通留学生って煙たがられる側だろうに……
「ごめん、今日は財布持ってきてないんだ……」
「はぁ? お前最近ちょっと調子乗ってねぇか? その言い訳前も聞いたような気がするんだけど?」
「……ごめん、本当にないんだ、だから今日のところは見逃してく____」
「この前聞いたって言ってんだろうが!!」
ドスッ
「うっ!」
腹に鋭いパンチが刺さる。急に来たパンチにすぐに反応出来ずモロに食らってしまった。
「おいおい〜それくれぇで座ってんじゃねぇぞ〜そらぁ!!」
ガチン!!!
「ぐぅ!」
座り込んでる所に蹴りを入れられ、顎をカチ上げられた。
「あ……うっ……」
視界が揺れる。安西の顔もよく見えない……。
「おっとー、人通り悪ぃっつってもこれ以上廊下でやるのはまずいなぁ」
よかった、終わってくれそうだ……。
「じゃあお外行こっか」
……っ!!!!!!!
「ごめんなさい! お金はいくらでも払うからもう許して!!!」
「おーどうした急にぃw それに歳上には敬語を使うもんだぞっ……おら!」
「ぐふっ」
「ほらどうした〜早く敬語使えよぅ〜、頭もっと強く踏んで欲しいか? ほらグリグリしてやるからさっさと言えよ〜ギャハハハハ」
「てめぇ安西さんに何タメ聞いてんだよおら!」
「おれもおれも〜ははっ!」
「うっ、っぐ!! お願いです、許してください……!」
「……そうだな、じゃあ俺の奴隷になれ、俺の言うことには絶対服従。いいな?」
一体、こいつの奴隷になったらどんなことをさせられるのだろう……いや、だいたい検討はついている。そして僕は絶対にそれは耐えられない。
だけど、この状況を切り抜けるにはこれしか……。
「……わかっ____」
「あっ、みんな〜あ、安西先輩も!」
「お、ありさちゃんじゃねーか! どうしたこんな所に?」
「そうそう! 平戸くん探してるんだけどいますか?」
「ありさちゃ〜ん俺には敬語使わなくていいんだぞ〜、かわいい子はむしろタメで話してほしいからさ」
「でもなんか歳上に敬語使わないのってなんか違和感で〜安西さんで許してください♡」
「ありさちゃんかわいい! 許しちゃう!」
「(キモ)あ、そうだ、平戸くん……?」
「ああ、こいつ? 今ちょっと一緒に遊んでんだ、また後でにしてくれねぇか?」
「うーん、でも先生に連れてこいって言われちゃって……連れてこれなかったら先生にダメな人って思われちゃうなぁ」
「……あーそれはいけねぇなー、おいうずくまってないで起きろ」
「……」
「安西さん、こいつ気絶してますよ」
「はぁ……たく……お前、蹴り起こせ」
「え、俺っすか?」
「お前、俺に逆らうのか?」
「い、いえ! おい! 起きろこら!!!」
ガッ
「うっ……」
「いつも見るけど平戸くんと安西さんの関係ってすごいね、これが普通なんでしょ?」
「ああ、そうだぜ! こうやって殴り合えるダチ中のダチだ!」
「へぇ〜なんかかっこいいね!(そんなわけないでしょこのクソ!)」
「だろぉー? ほら立てって……お前、俺のありさに触れでもしたら殺すからな?」
「……はい」
「じゃあありさちゃん!またそいつ使い終わったら連れてきてね〜」
「わかりました〜安西さん!(使い終わったらって何よ!ほんとにふざけてるわねあの人達!)」