崩界
新作です。
書きためた所までは、毎日投稿する予定です。
光が消えて夜が訪れ、陸は砂と化し、空気が死に侵食され、海は干上がった。
神が、精霊が、世界が死んだ。
崩壊を待たずに殺されてしまった世界で、宙に浮く人影が三つ。
狂ったように笑い続ける小さな少女と、苦渋に表情を歪める白ずくめの少年。
二人は、世界が死んでもなお殺しあいを止めることはなかった。
逆に、少年の側にいる青髪の少女は、幼さの残る人間離れした美貌を恐怖に染めている。
攻撃の余波が掠めるだけで、今にも消えてなくなってしまうかのような儚さがあった。しかし決して、彼女は弱い存在ではない。
むしろ、この世界の人間の中でも屈指の強さを誇った。
だが、星が降り、炎がそれを焼滅させ、隙があらば死を呼ぶ絶叫が響く中、彼女は無力だった。
周りを気にせずに神気を解放した〈大神〉と〈神子〉の前に全ての生命は無力だ。
半透明の黒のレース、フリル、リボンをふんだんにあしらったゴシックアンドロリータを着た黒目黒髪の少女は、黒く染まった死の神気を撒き散らす。
放つ攻撃は、一触れで相手に死をもたらし、世界すらも殺す〈死と夜を司る大神〉、それが彼女だ。
対する少年は純白だ。
放つ神気は万物を癒し、この死んだ世界内で唯一少年の周囲だけは、生命の生存が許される。
首に巻かれた白のマフラーと、羽織られた白のコートは攻撃の余波で翻り、ほつれようが破けようが、即座に修復されていく。
恐怖で動けない少女を守るためか、光速を越えて放たれる攻撃を避けるのは無理だと悟ったのか。少年は全ての即死攻撃をその身に受ける。
だが、万物を癒し、持ち主を蘇生すらさせるその神気は、少年に永遠の生を与える。
文字通り生死の境を行来しながら、素早く作成される巨大にして緻密な魔法陣と、繊細にして膨大な魔法紋から、少年は魔法を放つ。
蒼炎が、黒雷が、白氷が、龍を模して鎌首をもたげ、砂塵が、爆風が、閃光が、竜の咆哮を模して飛来する。
そのことごとくを〈大神〉の神気は殺し尽くす。
終わりの見えないこの戦いの中、それでも少年は、永劫を生きる〈大神〉に想いを告げた。
「絶対に殺す! クソババアァァァァ!!」
潰れた喉は、瞬く間に癒された。
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