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いつまで続くかはわかりませんがよろしくお願いいたします。
更新も不定期でございますので暇つぶしに読んでいただけますようお願い申し上げます。
「フォー君! 今日はお姉ちゃんとお茶しましょね~」
「余のことは気にするな、姉弟の親睦を深めよ」
何故、こうなった? 目の前にはイルドラード王とそれに嫁いだ長女が居る。一週間前に突然、イルドラード王国の先触れが来たと思ったら姉貴が来て、更にその三日後にはイルドラード王が黄金の馬車で現れた。本国に問い合わせても独自の判断で対処せよとしか言ってこない。
「ルルカよ、この愚弟はいつから間抜けになったのだ? 前は辛うじて目に意志を宿しておったぞ」
「う~ん、わかんないわ。貴方が私を外に出したがらないからフォー君に五年ぶりに会うもの」
「ほぅ、余の責任とはなかなか言うではないか。しかし、ルルカは我が宝の中でも極上の宝であるからな、目に入る範囲に置いておきたいのだ。許せ」
こいつら、本当に何しに来た。しかも、この雰囲気をどうにかしないと話も何も進みすらしない。
「イルドラード王、心乏しき私にそのお心を教えいただきたいのですが?」
「なに、臆病者で恥知らずの愚弟が王の真似事を始めてたと小耳に挟んだのでな、笑いに来たのだ!」
「ギル」
イルドラード王が振り向くと姉貴にビンタされて吹っ飛んだ。姉貴のビンタは防御力無視の一撃だからな。絶対、何かの加護を持っているはずだ。
「この世で余を殴ることが出来るのはルルカ、貴様だけだ。しかし、いつも思うが魔法防御すらも貫通してくるビンタは何か魔法でもかけているのか?」
「愛が詰まっております。一応、私もハイキリ流の免許皆伝は頂いているからそこら辺の淑女とは一味も二味も違いますわ」
ハイキリ流魔滅術は中型の魔物を己の身体のみだけで倒すことだけを考えられてオートス発祥の武術だ。てか、貴族のご令嬢が武術を習うかよ。
「さて、時間は有限であるから本題に移ろうとしよう。我々、イルドラード王国はシアロ帝国に不法占領されている領地を奪還する為に侵攻することを決めた。そこでオートスとイルドラードで軍事同盟を結びたいのだがその橋渡しになって欲しい」
「現在、オートス聖王国とイルドラード王国では不可侵条約が結ばれております。それ以上の条約が必要があるのですか?」
イルドラード王と姉貴の婚姻と同時に二か国で不可侵条約が結ばれていた。犬猿の仲であるオートス聖王国とイルドラード王国の王と王女の結婚も周辺諸国を驚かせたが更には不可侵条約を締結したことにより、軍事的緊張を生み出した。
オートス国内でも軍部と内政部の一部が婚姻に反対して、|同盟罷業≪どうめいひぎょう≫を敢行した。理由としては我が麗しきルルカ王女を憎し、イルドラード王に渡すわけにはいかないと叫び、当時の国王だった親父に直談判までした。最後は|姉貴の説得≪物理≫により、収束した。
「正規軍の援軍が欲しいわけでは無い。貴様らアルター部隊を派遣して欲しい」
「アルター部隊は現在、バーラ地方の治安維持の奔走している為に軍事同盟が結ばれても援軍にいけるほど余裕がございません」
今はダニエル率いる守備隊で治安維持は出来ているが正直めんどくさいことになるのが目に見えてるから引き受けたくない。
「治安維持で手が一杯とはもう少しマシな嘘をつけ。守備隊の下部組織として自警団を組織させ、定期的に訓練を行っているそうだな。それでも歴戦のアルター部隊が駆り出されるなんて、災害級の魔物でも現れているのか?」
「いいえ、魔物狩りも順調でありますが我々は所詮、よそ者ですから村人と長い時間をかけて馴染んでいかないといけないのです。アルター部隊も予定を組んで交流も兼ねて、治安維持に協力しているのでなかなか、予定が空かないのです」
アルター部隊が関わった作戦の大半が重要機密になっていて、戦歴は偽装されているから表に出ている情報は補給部隊の護衛が主になっているはず。かまをかけているのか、それとも監視されていたのか。まぁ、命令で行けと言われたら行かなきゃいけないけど。
「同盟の件は頼んだぞ」
「その件については本国に連絡致します」
「後、三日は世話になる」
この嵐もあと三日間で過ぎ去るのか。夏が始まるというのにくそ暑い中、イルドラードとシアロの戦争に行くのは勘弁願いたい。