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俺は死なない

 「目を覚まして……」


 声が聞こえた……ような気がした。

 聞き慣れた声だった。

 俺をいつも支えてくれる者達の声だった。

 だから惹かれて目を開ける。


 そこは、いつもの教会。

 周りを見れば、礼拝堂にビスケ、神父、バニラ、プラムの五人がいた。

 モンブランはというと、教会ではただうるさいだけなので昨日から電源をオフにされているらしい。


 ん……ああ、そうだったな。

 黒球のアポストロスが来襲してから一週間後、俺はみんなを呼び出したんだったっけか。

 いつの間にか俺はうたた寝をしていたようだ。


 「寝てたんですか?」

 「ああ、ビスケ。ちょっとだけな」

 「呼び出した張本人が寝てるなんて、相変わらず惰眠街道突っ走ってますねぇ」

 「お前も相変わらず辛口っぷりが半端ないな」


 いつものあいさつをいつも通りに済ませる。

 最近これが当たり前になってきたな。


 「マーブル、みんなを呼び出して一体なんの用なの?」


 バニラがさっさと済ませたいのか用件を聞く。

 残念ながら、さっさと済むような内容じゃないんだよな。


 「いや、一週間前に俺、アポストロスを命からがら倒したじゃんか」

 「それがどうしたのよ」

 「そこで色々聞いたことを、みんなに共有しようかと思ってさ」

 「聞いた?誰によ?」

 「……アポストロス」

 「あらそ」


 意外なことに、バニラは驚いてはいなかった。

 他のみんなも同様だ。


 「宇宙からわざわざ地球を目指してやってくるような連中だ。高度な知性を持っていたとしても、何ら不思議ではないと私は思っていたぞ」

 「みんな、プラムと同じ意見を?」


 満場一致で全員頷く。

 話が早くて助かるな。


 「じゃあ、そのアポストロスが言ってた神様の話も、驚かないで聞いてくれるか?」

 「神様、か。恐らく驚きはしないだろうが、私や神父のような信仰心を持つ者としては、興味深い内容ではあるだろうな」

 「ミーもぜひ聞いてみたい話ではある。ただ、信仰心が揺らぎそうでちょっと怖い気もするが」

 「元研究者のあたしも気になる内容よね。というか人間なら誰しもが気になる内容だろうけど」

 「私も……聞いてみたいです」


 予想通り、四人の男女が話題に食いつく。


 「で、アポストロスは神に関してどんなことを言ったのよ?」


 バニラが先陣を切って俺に問いかける。

 その姿勢に、未知を探求する人の可能性を感じた。

 それは闇を照らす小さな篝火のようだ。

 火を、継ぎ足さなければ。

 未知を照らし、外世界へと飛び出すきっかけとなれば。

 そういった思いを込めて俺は語りだす。


 アポストロスとは、他天体に君臨する知的生命体が進化して誕生した究極生命体であること。

 アポストロスやその生みの親である星にとっての神が、宇宙の外である外世界に存在していること。

 神への接触を果たすために、星々が全てのアポストロスを統合して世界の壁を突破しようとしてること。

 人類はアポストロスへと至れなかったため、地球の意思がアポストロスを呼び寄せて種を滅ぼし、再進化を促そうとしていること。

 俺達の敵の正体について、余すところなく全て話した。


 余りにも壮大すぎる話。

 こんな話を普通の人間に話したところで、感情が置いてきぼりになるだけだろう。

 自らに何の関わりもないと錯覚してしまうからだ。

 でも、ここにいるメンバーは普通ではない。

 みんな真剣に俺の話を受け止めていた。


 「これで全部話したけど、何か質問ってあるか?」

 「……結局分からないことがあったのだが、外世界にいる神様とは一体何なのだ?私の信仰している神様とは違うのだろう?」


 プラムの問いは、俺があの時アポストロスに聞いておけばと今も反省していることそのものだった。


 「んー……それについては俺もよく分からないんだ。黒球のアポストロスは神について詳しく語ったわけじゃないし」

 「むぅ、神様の定義がいよいよ曖昧になってきたな。宇宙の中心点に、外世界の神様。私の学んだ神学はどこへ吹っ飛んだのだ?」

 「そもそもの話、神学だって随分と曖昧じゃないのよ」


 ごもっともな否定はバニラから発せられたものだった。


 「確かにな。聖書の内容が事実だと証明する手立てなど、この世のどこにも存在しないだろう。少なくとも私は知らないしな」

 「聖職者なのにあっさりと肯定するのね」

 「記録の真偽を判別する方法がないことを承知の上で、私は聖書を信じている」


 人の積み上げてきた歴史は、その殆どが書物によって記録されてきている。

 歴史を語るということは、その書物に記された内容を語ることに等しい。

 そして書物は簡単に改竄してしまうことが可能だ。

 歴史の真実と虚実がどう織り交ざっているかなど、本来誰にも分かりはしないのだ。

 現存している遺物から推測できることを含めても、推測の域を出ないのは明らかだし。

 そこまでは、周知の事実。

 そこから先が、彼女の考え。


 「今日まで人類史が存続できたのは、そういった曖昧な希望かみを信じてきたからだろう?少なくとも、私はそうやって生きてきたが?」

 「宗教ごとに違う希望かみが提示されたせいで、悲惨な戦争に発展することもあったけどね?神への強い信仰は、逆に他の信仰を認めないもの。仮に他の信仰を認めてしまったら、今まで自分達が信じてきた希望は何だったのか?ってことになっちゃうもの」

 「確かに対立する信仰者同士から折衷案が生まれることはないだろう。しかし、闘争は進化の糧だろう?争いは文化の発展に欠かせないものだ。事実、園児から社会人に至るまで、みながみな競い合っていたではないか」

 「……闘争を支持する聖職者ってどうなのよ?それに、聖書では争いは罪とされているんじゃないのかしら?」

 「聖書の中身が正しいかどうかなど分かりはしないのだから、私の正しいと思った解釈の仕方があっても良いだろう?私の解釈は、生命にとって争いは進化に必要不可欠なもの、ということだ」

 「……高度で平和的な社会に浸りきった末、戦いもなく、目標もなく人類全体が停滞してしちゃってる現実が今、目の前にあるものね」

 「生物は他の生物を捕食しなければ、いずれ死ぬことを本能的に理解している。だからこの地球で生き残るために、数多くの残酷な闘争が存在するのだ。闘争の度に困難を乗り越え、知性を習熟させてきた霊長の長である人。なのに、どうして人から闘争本能を切り離せようか?」


 闘争……それはなにも戦争に限った話ではない。

 会社は営業成績や顧客獲得を。

 学生は学業成績を。

 保育園児や幼稚園児ですらが、何らかの形で順位を競うことは珍しくない。

 全て、戦いだ。


 戦いという名の試練を乗り越え、そしてやっと進化が促進されていく。

 人類史から武器戦争が根絶されても、経済戦争は残り続け、人類は英知を手にした。

 そして今、経済による衝突すらも必要としなくなった人類を待っていたのは、種の堕落による死だった。

 プラムの意見は矛盾しているように聞こえて、その実間違ってはいないのだろう。


 「神の教えの解釈もまた、人それぞれだ。でなければ分派などということも起こらなかっただろう。まあ、人を殺めた経験の多い私個人の考えだが」

 「なるほど。戦う状態が生物にとっての普通、かぁ。現にあなた、戦うことを望んでいたし?メンタルもまあまあ正常よね」

 「普通に会話が成立してるくらいだからな」

 「今の世の中じゃあ口を利ける人の方が珍しいものね」


 俺も全くの同意である。

 しかし、首を傾げて不思議がっている者もいた。

 それはビスケだった。


 「あー……あなた達の言ったことを簡単にまとめると、戦いで人が死ぬこともあるけれど、成長するためには必要ことでもあるんだよってことですよね?」

 「その通りだ、シスター。私の言ったことが難しかったか?」

 「闘争って言葉を拡大解釈していくんですもん。それに話題がどんどん逸れてってるせいで、意味が分からなくなってきてますし」

 「ミー達の思う神とアポストロスの思う神は違う、という話だったぞ。シスタービスケット」


 ビスケに助け舟を出す神父。

 口を挟んではいなかったが、会話はしっかり耳に入れているようだ。


 「あらゆる知生体の上位種であるアポストロスですら、会うこともできない存在なのだ。今ここで、どれだけ話し合っても仕方ない話だとミーは思うがな」

 「俺もそう思う。人は仮説を作ることができるけど、確証を得るのはそれを直接観測した時だけだ。俺達の疑問は、その神とやらに会うまでは一生解消されないと思うんだ」

 「……マーブル、あなたは神様に会いたいんですか?」


 ビスケの鋭い質問。

 俺の思っていることをなんとなく察しているようだった。


 「だって、アポストロスが会いたがってるんだ。俺達が会いたくないわけがない」

 「アポストロスと私達人間は、根本が同じ命でできているから?」

 「そうだ。もしかしたら俺達は、アポストロスと同じ目的を持つことで救われるかもしれない」


 今の人類の壁を突破することのできる希望。

 それが神への謁見なのではないだろうか?


 「きっと、星に創られた全ての知性が向かう先がそこなんだよ」

 「例え人類が改心して外世界を目指すことになったとしても、アポストロスはやってくるんでしょ?」

 「俺が守るよ」

 「二匹目のアポストロスに殺されかけたくせに?更に数多くのアポストロスが地球へやってくるのに?」

 「人が変われば、地球の決定も覆るかもしれないんだぞ。アポストロスとの戦いを回避出来る可能性はまだ残されてるんだよ」

 「……どっちにしろ、あたし達は外世界なんてとこまで行けないわよ。だって手段がないもの」


 バニラは上を見上げて静かに先を見る。

 遥か遠くの見果てぬ壁を探るように。

 宇宙は決して無限の大海ではない。

 彼女の視線は観測可能な宇宙の果てに突き当たる。

 でも、見えない。

 遠すぎるからだ。

 本人の認識なしに視線だけ果てに届いても、まるで意味がない。


 「天文学の発達によって研究者達は宇宙の果てを一度は観測したけれど、実際に人類が足を踏み入れることのできる範囲はせいぜい太陽系ぐらい。宇宙って想像するのが馬鹿馬鹿しくなるほど広いものよ。あたし達人類に、この旅は過酷すぎる」

 「じゃあ、旅をする準備をしよう」

 「それこそ人類全体で取り組まなきゃ実現不可能なことよ。だけど、それを達成できそうにないから地球に見限られたんじゃないの?私達は」

 「でも……それでも俺達は外へと行かなきゃいけないんだ」

 「……その話を今の人類に聞かせたとして、返ってくる言葉を私は予想できるぞ?」


 きっと誰より多くの人間を見てきた英雄が、遠い目をして言った。


 「そこまでして生き続けなくても良い、とな。恐らくそう言うさ」

 「……人の生きる意味がないからか?」

 「人の生きる意味がないから人類全体が停滞したわけじゃない。そんな事実の中でも、諦めなかった人間が人類の二割くらいはいたのだ。その二割がダメになった原因。それは、ただ単に心が疲弊していたからだ」


 ……諦念。

 人の活力が失われている時代を表す二言だ。

 目指す先の長い道のり。

 一体いくら世代交代をすればたどり着けるのか。

 自分の人生だけだったらまだ良い。

 だが、千年二千年経とうとも達成しえないかもしれない難業に、一体どれほどの人間が立ち向かえるというのか。

 過ぎた現実は心を自壊させる。

 俺は、そのことを忘れていた。


 「宇宙の先に進出するために生きようなんて言っても、人類は立ち上がらないだろう」

 「……新しい希望が必要なのか」

 「宗教による希望ではない、新しい何かがな。それが何かは分からないが」


 希望、それすなわち心からの望み。

 人特有の考え方である。


 人以外の動物は基本的に生きる理由を必要としない。

 だって、生きる理由を考えるだけの思考力がないのだから。

 種を保存することに生を費やすのだから。

 なので、動物は自殺行為に走らない。

 ただ、在るがままを生きている。


 人にそんな生き方、今更できやしない。

 考える力があるから在るがままを生きられないし、思い詰めて自殺することもある。

 だから前に、前に進むしかない。

 人類が新しい段階に進むための、新しい希望が必要なのだ。


 だが……思いつかない。

 どうしたら、人類全体が前向きな考え方を持ってくれるのか。

 どうしても、分からない。


 「……結局無駄だったわけね」


 そう呟いたのはバニラだった。


 「人類を説得するなんて方法は皆無よ。ネットで情報は拡散出来るだろうけど、説得材料がないじゃない。説得ができない以上、アポストロスは無数にやってくる。心眼が太陽系の惑星から数体のアポストロスが進行しているところを衛星で確認してるしね」

 「俺がなんとかするよ」

 「なんとかしている内に、アポストロスの攻撃で死ぬ羽目になるわよ」

 「……酷いことを言うんだな」

 「……今のは言い過ぎたわね」


 ビスケとバニラの口論を思い出した。

 彼女はどう見たってリアリストだ。

 希望的観測に頼らない考え方で今まで生きてきたはずだ。

 多分、俺の発言にストレスを感じているのだと思う。

 甘っちょろい幻想を抱いていると思われても仕方ないことを言ってるからな、俺は。


 「でも、もう無理よ。地球から観測することもできない世界に、私達が行けるわけないもの。みんな、死ぬわ」

 「……諦めてアポストロスに殺されるのか?」

 「ハッキリ言うけど、君はもうあたしの道標じゃなくなった。仲間ではあるけど、あたしの希望ではない。もう、意味のない世界で生きていたくないの」

 「俺のこと、希望だと思っていたんだな」

 「超常の存在なら、このどうしようもない諦念からあたしを救ってくれるって勝手に思ってた。けど、違った……もういいのよ。疲れたわ」


 一度感情が吹き出してしまえば、あとは決壊したダムの如くだ。

 ……なにか言わなければ、彼女が離れてしまう予感がした。

 でも、この口は開いてくれない。

 人類を救い出す希望がどんなものなのか、俺もよく分かっていないからだ。


 「……少し、君から離れるわ」

 「この教会から出るのか?」

 「まだ、分からない。でも、そうなるかもね」

 「……私はバニラに出てってほしくないですよ」


 友達として、ビスケがバニラを引き留めていた。


 「……ごめんね」


 一言だけだった。

 けど、本当に悲しそうな表情だった。

 涙が目尻に溜まっていたが、すぐに手で拭い去る。


 そして……バニラは礼拝堂から出て行ってしまった。

 俺は黙って見ているばかりで。

 自分が、情けない。


 「私も、ここから離れよう」


 またか。

 また俺から離れるのか。

 頼むから、もうやめてくれ。


 「プラム……お前もなのか」

 「私は、戦って生きてきた。今更戦い以外で、人に貢献しようとは思わない。お前が人を説得しようとするなら、私は役に立てそうもない。敵との戦い以外で会う必要もないだろう」

 「でも、ここから離れる必要はないだろ?」

 「私はな、疎外感が嫌いなのだ。忙しく動く仲間を前に、私はなにもできない。仲間に認められない。酷く、寂しいことじゃないか。だから、個人で戦う使命を課せられる超人に私はなったのだよ」

 「……一人で過ごすのも、十分寂しいことじゃないか」

 「仲間内で惨めな気持ちに苛まれるよりは、ずっとマシだ」


 心の戦いを忌避し、現実の戦いに逃げ込む英雄。

 大衆が抱きがちな英雄のイメージとは違う、暗いネガティヴを感じる。

 しかし実際には、生の偉人だってそんなに一般人と変わりないものだ。

 何か一つに特化した技能を有しているだけで、心が常人離れしているわけではない。

 普通に傷付くし、普通に諦めもする。

 そんな当たり前のことで、人は簡単に離れてしまう。


 「……戦いでも協力することはあるだろうが、連絡でのやり取りは……やはりやめておこう」

 「そうやって、せっかく作った繋がりを切るのかよ」

 「マーブル、お前が戦いのみに注力を尽くす存在だったなら、私はこのコミュニティーに慣れもしただろう。しかし違った。お前は、私の生きる世界と交差するするばかりで、完全に同調することはないのだろう?衛兵隊の時のような結束を私に与えてくれないのだろう?」


 プラム、お前もバニラと同じように俺に対して……


 「では、な」


 英雄はバニラの去った道を辿って歩いていく。

 もう俺も顔を俯くしかなかった。


 残ったのは神父とビスケと俺の三人。

 途端にビスケ達が離れてしまうイメージが浮かぶ。

 ……流石にそれはきっついなぁ。


 「神父、ビスケ……お前らはどうするんだよ?」


 ポーカーフェイスを気取っているが、内心は焦っていた。

 答えが、怖い。

 本当に怖い。


 「……では、貴様にはここから出て行ってもらおうか?」

 「!!!!」

 「というのはジョークで、ミー達はいつもと変わらんよ」

 「あんた……さっきのシリアス具合を考えたら、そういう冗談を今言うべきじゃないって分かるよな」

 「何を言う。深刻そうな顔をしているから、リラックスさせようとしただけだぞ?」

 「おかげ様で俺の心臓に負担がかかったんだが?」

 「それだけ貴様が仲間を大事にしているということか」

 「……俺は、そのつもりだった」

 「その気持ちは、今の人類を救うのにとても大切なものだ。ミー達はそれを否定するつもりはないぞ」


 ああ……心底良かったと思った。

 ほっとした自分がいた。

 仲間は必要なものだ。

 人という字は、人と人が支え合っていると言うけれど。

 もっと画数を増やしても良いと思うくらい、人はたくさんいても良いものだ。

 支えて繋がることで、俺達は強くなる。


 「でも、寂しくなりますね」


 ビスケは二人が出て行った教会の出口を見つめていた。


 「……そうだな」

 「マーブルは人類の滅びを回避する方法をまだ思いついていないんでしょう?」

 「正直、な」

 「なら、焦らずに考えましょう」

 「……お前は俺を拒否しないんだな」

 「元々私と神父は、教会を通してみんなを元気にしたいって活動してたんですよ?それは今まで通り変わりません。それに私はここで、神父とマーブルに代わって家事をすることぐらいしかできないですから」


 病弱なビスケではあるが、仮に健康体だったとしても同じことを言う気がした。


 「お前はすごいな。まだ、人を諦めていないなんて」

 「ん?それはマーブルも同じでしょう?」

 「いや、俺は……」


 言いかけて思った。

 俺は何故、諦めていないのだろう?


 黒球のアポストロスを倒す時にも思った疑問。

 心から、本能から望む願望。

 人類を、どうしても生かしたいと。

 何故かそう願ってやまないのだ。


 「……本来、人類は害悪でしかない」

 「マーブル?」

 「人間は傲慢で、強欲で、嫉妬深くて、何かに憤怒して、色欲に浸って、暴食で糧を得て、その上怠惰。人は罪の塊でしかない。七つの人類抑止力があって、ようやく人を律することができるくらいには愚かだ」

 「…………」

 「人は七つの力がなければ、戦争や差別を永遠に行ない続けただろう。人が悪を捨てる時、それは知性を捨てる時と同義だ。そして人は知性を捨てる気もなく、故に悪性を放棄することができない」


 そうだ。

 人は人を傷付け、果ては星の環境を汚染しているじゃないか。

 エコ活動をしている偽善者は、木を植えたりリサイクルして自然を回復する速度より、人が普通に生きること自体の汚染速度の方が高いことをまるで理解していない。

 人はただ、そこに生活しているだけで地球を蝕む、癌細胞のようなもの。

 母なる地球がその身を穢してまで育てた人類がこんな身勝手な滅びを迎えるなら、いっそ自分で滅ぼそうと思うのも当然だ。


 努力すれば必ず報われるとか、できないと思うから成功しないとか、そういう精神論を美化した下らない考えが正当化されて。

 そういう教育を施された人間は、ますます強者と弱者の格差を広げて。

 強者は子供が優しく育ってくれるようにと幸せな家庭を築いてる傍で、路上生活者のことを見下しながら見て見ぬふり。

 平等や優しさを謳った道徳は、本当の弱者にとって糞ほども恩恵がない。


 ……気持ち悪い。

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

 人など、死ねばいい。

 罪に満ちた生物として、報いを受ければいい。

 でも……


 「それでも、人を守り抜きたいんだ」

 「人を醜いと認めててもなお、人の存在を肯定するんですね、マーブルは」

 「どうしてだろうな?」

 「自分のことなのに分からないんですか?て言いたいとこですけど、実は自分のことって、自分が一番よく分かっていなかったりするんですよね」

 「人間の存在理由がよく分かってない時点で、自己理解の土台が崩壊してるんだもんな。自分のことをよく知ってるだなんて言う奴は、例外なくただの知ったかぶりだよ」

 「そこは私もそう思いますよ。でも、自分自身への理解が不十分であっても、まず自分にできることをこなしていかなくちゃなんですよ」

 「……俺の疑問はまだ当分解けそうもないな」

 「アイデンティティーの確立というやつか?かっこいいな、ヒトの王様?」


 神父が冗談っぽくニヤケて言い放つ。


 「バニラとプラムのたった二人ですら止められなかった俺が、人を守りたいんだ、なんていっちょ前に言って人類を守れるかどうかは分からないんだけどな」

 「いっちょ前にもっと宣言したらいい。目標を叶えた奴のどいつもこいつもが、一番最初は“口だけの人間”だったのだからな」

 「言うだけ言って目標達成できなかったら恥でしかないな」

 「恥など捨てて、自分のやりたいことをやればいい。目標がある限り、人は堕ちない」


 それは強者の言葉にも思えた。

 でも、神父の言い方そのものは優しかった。


 「あんた、こんな世の中じゃなきゃいい神父になってたかもな」

 「人類が再起したら、すぐにでもなってやろうじゃないか」


 大した自信だ。

 そういえば、神父もまた強い心の持ち主なのだった。

 人の心の躍動が止まった空白の社会。

 その中で、人に希望を与えようと布教活動に励んでいた。

 俺がここに来る前から行なってきたことなのだ。


 「あんたはすごい人間だよ」


 心からそう思う。

 俺のように大した力を持たずとも、今日までこの調子で生きてきたのだから。


 「本当はそんなことないのだがな」

 「あんたが謙遜するなんて、今日は雪でも降りそうだな」

 「……マーブル、貴様は本当にミーのことをなにも分かっていないな」

 「……?」

 「いや、懺悔の対象を前にして、軽率な発言だった」


 自信たっぷりなことを言ったかと思えば、次の瞬間には暗いことを言う。

 なにも、普段見る神父の態度が彼自身の全てだとは思わない。

 けど……


 「……あんたは、悔いていることがあるのか?」

 「これは前にも話したが、人には触れられたくない過去を持っている者もいる」

 「余計な詮索はするなと?」

 「人間関係とは、近すぎても遠すぎても壊れていくものだ。距離は適切に保たねばな」

 「そりゃそうだけど……」


 それは体の良い言い訳だった

 一般論を盾に正当性を確保した言葉の壁。

 壁を見せたということは、自分の中に閉じ込めたいものがあることを隠していないということだ。

 隠さない分、守りは堅牢だった。


 「俺はまだ、あんたの信用を得てないんだな」

 「いや、信用は十分だ。だが、話せない理由がある」

 「きっとそれも話せないんだろうな」

 「すまない」

 「いいんだ。仲間だから、それを許せる」

 「……助かる」

 「普段のあんたなら言いそうもないことを、この短時間で連発してくるよな」

 「そういう時もあるだろう。バイオリズムとでも思っておけばいい」


 人間に安定という言葉を当て嵌めようとするのは不適当だろう。

 何故なら、常に心や体のコンディションというのは変化するからだ。

 逆に俺は不調を知らない最良の肉体であるから、共感ができない。

 ただ、人が不完全であることを知っているだけ。


 「まあつまり、シスタービスケットで言うところの女の子の日ぶるぅああああああ!!??」


 隠し持っていた催涙スプレーを、ビスケが神父の顔面に噴射した!


 「うおおおお!!目が焼ける!?」

 「セクハラは重罪ですよ、神父」

 「ミ、ミーはただ三月三日のひな祭りのことを、女の子の日と言っただけなのだがあぁぁぁ(泣)」

 「バイオリズムの話からひな祭りの話に繋がるわけがないので、そのまま苦しんでいてください」

 「モリアーティィィ!!!」


 何故かコナン・ドイルの推理小説に登場する悪役の名を叫びながらのたうち回る神父。

 さっきまでの悲哀漂うシーンはなんだったのか……


 「ライヘンバッハの滝には勝手に一人で落ちてくださいね、教授?」

 「ぬおお……まさに鬼だな、シスタービスケットよ」

 「あらかじめ毒を盛ってから滝つぼに落として、窒息と毒のダブルパンチコースもありますよ?」

 「モリアーティーもびっくりなセリフでミー怖い」

 「女を恐れ、敬いなさい」

 「ハハー」


 目の充血した神父がビスケを見上げてひざまずく。

 そして彼女はとんでもなく冷たい目でそれを見下していた。

 もうこれ、主従が逆転してるじゃん……


 「俺、女尊男卑って嫌だなぁ」

 「女性専用車両、女性専用漫喫ルーム、女性専用ジムなどなど、女優遇のサービスを展開していた時代があった時点で、女性が男性よりも格上であることはもはや明白じゃないですか」

 「前時代的で無茶苦茶な考え方だぞそれ。しかも差別的だし」


 女人禁制、という言葉がある。

 宗教における修行で、煩悩を排斥するために女性を社寺に立ち入らせないというものだ。

 これは何も女は穢れてるから入るなってことじゃなく、ただ単に異性間の精神的なマナーから男女を隔離しているだけの話である。

 男性トイレと女性トイレが別々の場所にあるように、無駄に性欲を刺激していざこざを招く必要はない。

 女性専用車両も似たような理由で作られたのだから、必然的に必要な配慮なのである。


 「女性専用車両は元々痴漢防止を目的に始まったシステムだろ?普通に必要な配慮なんだから、女性優遇ってわけでもないじゃん」

 「じゃあ女性専用ジムとかはどうなんですか?これは痴漢とかは起きないでしょう?ほら、やっぱり女性はゴッドじゃないですか」

 「ゴッドて……」


 超ドヤ顔の彼女。

 きっと分かっててふざけてるんだろうな。


 「当時の日本は女性の要職が結構少なかったんだぜ?昇進の面では大した優遇もなかったし。で、同時に女性専用サービス店が多く見られたけど、それはあくまでお金を払う側なんだよ」

 「あくまで、売り上げのために優遇にしたと?」

 「女性を金ヅルとして見てるから専用とか優遇って言葉を使ってるのさ。だから、女が特別社会的に格上だなんて勘違いはするなよってことだ。どっちが上とかそういうのはないのさ」

 「分かってませんねぇ。そんな正論、私は求めていないんですよ。正直私は女尊男卑でも飽き足らないので、世の男達はみんな私だけを優遇すればいいんだとすら思ってます」

 「やっぱりそういうオチかこの野郎!!」


 何となく展開が読めていた辺り、彼女との絆を感じてちょっと嬉しくなってしまったのは内緒である。


 「私がセクハラ発言を許せないのは、女性の人権尊重とかそういう話じゃなくて、下等な男が生意気なことを口走ってるからですよ」

 「理不尽すぎて、ある種歪んでるな」

 「というのは冗談で、長々と下らない男女差別ネタで遊ぶのも飽きたのでご飯にしましょう」

 「急な路線変更キツすぎッス」


 自由で飄々とした彼女。

 暗く沈んだあの時の表情よりも、こっちの方が百倍良かった。


 「シュガー神父ももうおふざけに付き合わなくていいですよ」

 「そうか、ちょっと物足りなかったな」

 「あの催涙スプレーで満足できないのなら、今度は失明スプレーでも使用しますか?」

 「痴漢する奴が絶えたこの時代に、何故そんな恐ろしい護身用グッズを持っているのか……」

 「趣味です」

 「人を失明させる趣味があるとは、とんだじゃじゃ馬シスターだな」

 「それほどでもありませんよ」

 「褒めてないぞ、シスタービスケットよ」

 「うふふふふふ」

 「わははははは」


 父と娘の会話とはとても思えない、ふざけた内容であった。


 「ところで、今日の昼食は何を作る予定なのだ?」

 「今日は特別豪華ですよ。なんと、トースト二枚です」

 「ほほう、カロリーが二倍で幸せも二倍だな」


 俺の中ではがっかり感が二倍なのだが、そんなことを口にしたら言葉のリンチを浴びそうなのでやめておく。

 てかそれ、バニラとプラムの分なんだろうなぁ。


 「また明日から、三人での生活が始まるのか」

 「まあいいじゃないですか。そもそも、バニラは自室に引きこもってることが多かったし、プラムさんに至っては教会に殆どいなかったわけですし」

 「バニラは確か自室で、二十年前のオンラインゲームをたった一人でプレイしてたんだっけ、延々と。ぼっちプレイがオンラインの醍醐味だっつって」

 「プラムさんは食事の時だけ教会に来て、あとは外で宗教勧誘のビラ配りばっかりしてましたね」

 「食事の対価のためって言いながらな。本人としては、人を立ち上がらせるためにやったわけじゃないってことを強調したかったんだろうが……」

 「改めて考えてみると、素直じゃないメンバーばかりですね」

 「クセがあって面白いじゃないか」

 「前世紀社会においては邪険にされそうものですけどね。もちろん、私達も含めて」

 「だから今日まで、諦念に負けなかったんだよ」


 多様性を肯定した生物の進化を考えると、俺達のような個性も当然あっていいものだ。

 だって、人は人とぶつかり合って心を進化させていくのだから。

 人は、人の影響を受けずに生き残ることなどできないのだから。

 個性による摩擦が、心に熱を灯すのだ。


 「俺達の歩みは、なにも間違っちゃいない。短い間だったけど、あいつらと一緒にいた期間は無駄じゃないはずなんだ」


 全ては、未知への歩みのために。

 旅ができるように。

 人が人のまま、人らしく挑戦していけるように。

 例え争っても、醜くても、偽善的でも、全てが個性で、尊く、かつ美しいのだから。


 「人が生き残って先に進めるように、これから頑張っていこうぜ」

 「私はそもそもそのつもりなんですけどね」

 「ミーとしても、ナンパが成立するような活気ある世界を取り戻したいからな」

 「そういうことを言ってると私がいつか去勢しますよ?」

 「ミーのアイデンティティーを奪うのはやめてくれ……」

 「産めよ、増やせよ、地に満ちよとはよく言ったものですが、神父の子孫だけは地に満ちさせません」

 「私の娘が言うと、説得力の欠片もないな、シスタービスケットよ」

 「しまった!?私はこの欲情神父の娘でした!!」

 「酷い言われようだな、あんた……」

 「意地でも子孫繁栄するから安心しろ」

 「何を安心しろって言うんだよ。むしろ安心できないだろ……」


 そんな下らないやり取り。

 まだ、希望は残されている。

 俺に出来ることを、精一杯やっていこうと思った、その翌日のことだった。


 何の前触れもなく。

 不意に。

 誰の意思によるものなのかも分からず。


 神父が行方不明になった。



 ---



 一週間かけて都内全域を探したが、神父は見つからなかった。

 俺は色々なことができるが、知覚能力に関しては大して人間と変わらない。

 しかもここは大都市だ。

 アポストロスとの戦闘があったとはいえ、都内には未だ万を超える人々が存命している。

 そこに紛れ込まれたら、とても個人では探しきれない。


 前世紀の人間達は、こういう行方不明者を捜索する時にはどうしたのか?

 当時によく利用された方法が、一つある。

 ……心眼だ。


 人類抑止力の一つとして作られた、傲慢を司る心眼の在り方。

 それは人類一人一人を完全に監視して、平等に管理することにある。


 ある時期、人類抑止力用を目的として、人の出生時にナノマシンを注入することを世界中で義務化した。

 それは人の現在位置やバイタリティなどの個人情報を知らせ、犯罪行為を行おうものならすぐさま拘束できるようにと導入されたものだ。

 犯罪を実行に移せば必ずバレる。

 そんな認識を人々が持ち、気の狂ったサイコシス持ちによる事件以外はほぼ沈静化した。

 世界中の人間を個人レベルで監視するこのナノマシンシステムを、自由に出入りすることができるものとして作られたのが心眼である。


 人からプライバシーを奪ったことに反対する人間は多くいたが、犯罪発生率をゼロに近い状態にまで持ち込んだ監視システムによる圧倒的な結果に対し、廃止するに値する理由を反対派は提出できなかった。

 以降、他六つの抑止力の影響もあり、争いのない人間社会を実現することに成功したわけだ。


 心眼はその他にも世界中の監視システムにアクセスすることも可能だし、果ては宇宙空間に漂う衛星の映像も受信することも可能だ。

 電脳において、立ち入りのできない場所が存在しないのだ。

 社会全体が無人機械による現状維持に移行した現在は、心眼を設計した一族の末裔であるバニラが心眼にアクセスすることのできる端末を持っている。

 ということは、バニラがいれば簡単に神父を探し出せるのだが、肝心のバニラでさえどこに行ったのか見当もつかない。

 ……お手上げだった。


 「なあ、ビスケ。神父はわざと俺達を置いてどこかに行ったのかな」

 「私が知るわけないじゃないですか」

 「だよな……」


 俺とビスケは礼拝堂にて、長椅子に座りながら顔を埋めていた。


 「ビスケ、お前までいなくなったりしないよな」

 「私はマーブルがいなくならないか心配なんですけど」

 「……嬉しい言葉だね」

 「家族、ですから」


 まさか、ビスケの口からそんな言葉が出てくるとは……


 「前は恥ずかしがって言えなかったのに……」

 「最近、吹っ切れたような気がするんですよ」

 「なにを?」


 俺の問いに対して、ビスケが俺を指さし言葉を吐く。


 「最近まで私、マーブルって特別な存在なんだって思ってたんですよ。神様みたいに、何でもできちゃうんだって」

 「俺はなんでもできるわけじゃないぞ。現にこうやってうなだれてるしな」

 「そうなんですよ。マーブルってなんでもできるわけじゃないし、そうやって人間みたいに悩みもするんですよね」

 「それが普通のことだろ?」

 「ええ、普通です。だから、あなたが普通の、私達と変わりない“ただの存在”なんだってことに気が付けたんです」


 ……時には悩んでみるものだなと思った。

 まあ、悩みの中身が深いので、喜びの感情と帳消しになってしまったのだが。


 「それに私、実はあなたに惹かれてますしね」

 「……それって崇拝なのか?それとも……」


 俺が言葉を続けようとする直前、教会の扉から開閉の音が響いた。

 パブロフの犬よろしく反射的に目を向けると、そこには人がいた。


 ラフな格好をした、中肉中背の成人男性が一人。

 それだけならなんてことはない。

 遂に日頃の宗教勧誘に結果が伴ったと、二人で大喜びするだけだ。

 しかし、俺達は喜べなかった。

 こいつが明らかに異様な雰囲気を纏っているからだ。


 まず、目が虚ろだ。

 男の歩行も、どこか強張ったような動作だった。

 ……正気を失っている。

 無論、警戒体制へ。


 「お前は誰だ?」

 「------」


 それは、奇妙な言語だった。

 今の俺ならば、地球上の言語全てを聞き取れる。

 しかし、男の言葉を理解できない。

 ……地球外の言語だと断定。


 「また来たのか、アポストロス」

 「---ヒトの王よ。余のはらからである火星アモ・モルドール、そして金星ファーシュを殺した者よ」


 途中から言語を修正したのか、今度はしっかりと日本語で聞き取ることが出来た。

 アポストロスのはらから……つまり同胞ってことだ。

 同胞を殺した、ということは……


 「それが地球を襲ったアポストロスの名前か」

 「ヒトの滅びを受け入れよ。地球マーブルの声が聞こえぬ者よ」

 「お前は俺の話を聞いてないけどな」

 「今日という時間を持って、人類掃討を始めよう。命のやり直しを始めよう。」


 俺のセリフはスルーっすか。

 こいつとの意思疎通はできそうにないな。

 恐らく、自分の伝えたいことだけ伝える気なのだろう。


 「詩を歌おう。ヒトをヒトの手で清算させよう」

 「人の手で?」

 「ヒトの王よ。ヒトの滅びに抗いたくば、余が宿りしヒトを探し、殺すがよい。それをもって、ヒト種の可能性と認めよう」


 ……俺達を今すぐ殺す気はないってことなのか?

 こいつの言ってることがよく分からない。


 「では……命の限り、戦おう」


 そう言って、男はバタリと倒れた。

 遠目から確認したが、息はある。

 呼吸で胸が上下に動いていた。


 「……こいつはただ、操られていただけか?」

 「さっきのって、どう考えても宣戦布告ですよね」

 「戦いの合図、だろうな」


 アポストロスの出現はいつも唐突だ。

 いつ俺が命を落とすのか、予想できるものじゃない。

 生きる覚悟と死ぬ覚悟を同時に二つ、いつでも持ち合わせていなければならない。

 俺が死ぬか、相手が死ぬか。

 二つに一つ、枝分かれした道のどちらに進むことになるのだとしても、俺は突き進まなければならない。


 「ん……」


 と、そこで歌が聞こえてきた。

 遠く、遠くから運ばれてくる空気の振動。

 それはとても力強く、発声される音程にただの一か所も迷いがない。

 しかし、俺の耳まで届けられる音は非言語的で、母音の高低による単調な声の引き延ばしでしかなかった。

 数ある人の曲と比べても非常にシンプルで、だがそれ故に深い意味を持っているような、そんな感じ。

 ……なんとなくだが、確固たる目的を持って歌われている気がした。


 「モノフォニー、ですね」

 「単旋律……宗教音楽かなにか、ではないな」


 聖歌に似た部分は多いが、地球で歌われたことのあるものではないだろう。


 「歌声の響いてくる方向はなんとなく分かるが……なんだろうな、この直接頭の中に響てるみたいな聞こえ方は」

 「何だか、気味が悪いですね」

 「アポストロスの仕業なんだろうが、一体なんの意味が……」


 言いかけて、異変に気付く。

 目の前の倒れていた男が、急にのっそりと立ち上がる。

 それはまるでゾンビのようだった。


 「……!!!」


 立ち上がったその時、殺気を感じた。

 男がポケットから折り畳みナイフを瞬時に取り出す。

 直後、突進を仕掛けてきた。


 「マーブル!」

 「大丈夫」


 ナイフが俺の胸目がけて突き出される。

 殺人を一切躊躇わない、直線的な動き。

 ただ、動作に工夫がない分躱しやすくはある。


 余裕を持ってそれを回避し、カウンターを入れる形で掌底を男の腹に打ち込んだ。

 内臓にまで衝撃が届く、

 プロテクターを着用しない限り、どんな強靭な人間でも気絶は免れない一発。

 なのに、男はナイフを振るうことをやめなかった。


 「おいおい……!!」


 ナイフの刺突がゼロに近い距離から繰り出される。

 それでも俺の反応速度は常人より遥か上だ。

 ナイフを持った腕を瞬時に掴み、純粋な握力で骨を折った。

 そしてそこから、力を込めた二度目の掌底。

 男の体が五メートル後方へと吹っ飛んだ。


 「流石に気絶するだろ」


 手応えはあった。

 内臓のいくつかが損傷していてもおかしくない攻撃だったから。


 「……ダメか」


 男は即座に起き上がる。

 骨折した腕をブラブラさせ、反対側の手にナイフを握り締める。

 ……異常だ。

 顔色一つ変えやしない。


 こいつが超人だとしても、痛覚はあるはずだ。

 痛みで顔を歪めない人間はいない。

 なのであれば……


 「こいつ、脳を乗っ取られてるのか」

 「さっき、自分が宿った人を探せってアポストロスが言ってましたよね」

 「……宿ってるのはこいつじゃないな」


 もしこの男がアポストロスを宿しているのであれば、会話を終了した時点でいちいち倒れたりしないはずだ。

 あんなことをして、敵側にメリットがあるとは考えにくいからだ。

 あれは普通に考えて、アポストロスの意識体かなにかが離れたことを意味すると思っていいだろう。


 「でも、ここまでして気絶しないのなら……殺すしかない?」


 俺が、殺人を?

 人を守ろうと敵と戦っている俺が?

 ……そんな馬鹿な。

 人を殺せるわけがない。

 自分の守りたい命を摘めるわけがない。


 「……どうします?」

 「逃げるぞ」


 即答だった。

 俺ならどんな強大な相手とも戦えると思っていた。

 けど、目の前にいるのは小さな人間。

 俺なら一秒かからず、首を刈り取ることができるはずなのに。

 なのに、殺せない。

 だから逃げることを選択した。

 俺達がこの教会から退避しようとした次の瞬間。


 「……簡単には逃がしてくれそうにないな」


 全ての窓ガラスが一斉に割れて、外から濁流のようにも見える大勢の人達が教会に侵入してきた。

 その数は百人を優に超える。

 老若男女、共通性のない様々な人達だ。

 全員とは言わないでも、かなりの人数が武装していることから、敵意は明らかだった。

 おまけに銃器を所持している者もいる。

 廃棄された自衛隊基地から手に入れたのだろう。

 前世紀の兵器は近代の兵器に比べて厳重ではない場所に保管されている。

 なんにしても、ビスケに被弾すれば致命傷になりかねない。


 「クソッ!!」


 早速数人が銃を発砲した。

 唖然とするビスケを背後に庇い、盾状の透明なシールドを片手に形成。

 銃撃を防いでいく。

 多数の射撃と同時に、左右から挟撃する形で数人の男女が素手で殴りかかってくる。

 的確なコンビネーションでかなり驚いた。


 「おらぁ!!!」


 俺とビスケを中心とした全方向に、強烈な暴風を叩き込む。

 至近距離まで接近していた数人はもちろん、遠距離から銃撃を仕掛ける者達諸共教会の壁に叩きつけた。

 しかし奥からは、まだまだ雪崩のように大勢の人々が入り込んできている。

 壁に激突した者達もダメージはなく、人海に紛れて接近を開始していた。


 ……俺なら、あれらを対処することは容易い。

 人を殺す覚悟で大規模な火炎を人の大群にお見舞いしてやるだけでいい。

 それだけで、全員教会ごと燃えて消し炭になるだろう。

 でも……


 「んなことできるかよっ……!!」

 「きゃっ!」


 俺は踵を返し、ビスケを抱えて逃走を開始した。

 食堂への扉を蹴り破り、奥へ進んで二階へと駆け上がる。

 遅れて背後から銃撃が俺達を襲う。

 建物の障害物を死角にしながら走り続ける。

 そのまま二階の窓へ足を掛け、思いっきり跳躍。

 わずか数秒で、高度二百メートルに到達した。


 「ううっ……」


 高所へ飛ぶことの恐怖と、日光による不快感が彼女を呻かせる。


 「ごめん、少しの間耐えてくれ」

 「大丈夫……です」


 星の重力に引かれ、飛翔による運動エネルギーが完全に相殺されたタイミングで俺は力を使い、空中に浮かび続ける。

 ここからは、地上がよく見渡せた。

 その景色は、一言で言えば地獄だった。


 数百、数千万もの人間達が外をにいるのが視認できた。

 殺風景だったはずの新宿を、人海が埋め尽くしているのだ。

 東京中……いや、日本中の人間がここにいるのかと錯覚してしまうほどだ。

 全員、虚ろな目で飛翔する俺達を見つめている。

 全ての人達が、俺達を殺す気だった。


 向けられたおぞましい数の視線に、吐き気を催す。

 絶望感が俺の心を浸食し始める。

 操作されているのは、教会にいる人達だけではなかったのだ。

 

 実際には、もっと多くの人々が操作されているのかもしれない。

 日本と言わず、世界各地にアポストロスの力が及んでいることもあり得る。

 アポストロスのセリフから考えると、その中から本体を探し出し、殺して見せろってことになる。


 ……まず、無理だ。

 特定のしようがない。

 操作されている人間達と本体を区別せず、大技を叩き込むなら話は別だが……

 

 「この人達、全員敵なんですね……」

 「……だな」


 流石のビスケも、余裕がなさそうに見える。

 俺だってそうだ。

 どうしたらこの状況を打破することができるのか、分からないのだから。


 「あの人達にかかってる洗脳を解く方法ってないんですか?」

 「俺の力は人には無効だし、大きなダメージを与えてもまるで効果なかったし……アポストロス本体を倒すしかない方法はないだろうな」

 「……人、殺すんですか?」

 「……そうしない方向で努力する。幸い、アポストロス本体を探すための手掛かりはあるし」

 「さっきから聞こえてるこの歌のことですよね」

 「ああ」


 大勢の人々が俺達を攻撃することと、この歌が無関係とは考えにくい。

 両方アポストロスによるものだと考えるのが自然だろう。


 「この歌を止めることができれば、アポストロスによる操作が解除されるかもしれない」

 「やる価値は充分ってことですね」

 「強気だな。解除されない可能性も十分考えられるのに」

 「だとしても、選択肢がそれしか残されていないのであれば……」

 「やれるだけやるしかないんだよなぁ」


 朧な可能性に身を委ねる恐怖がそこにあった。

 全ての事象は結果論でしかないが、俺達はその当然の結果を予め知ることができない。

 そう……必死で頑張ったとしても、報われないことなど山のようにある。

 全身全霊で人生を歩んだ結果、無意味に死ぬことも珍しくはない。

 それが過酷な現実だ。

 でも、それでも俺達は進むことを止めはしないだろう。

 例えその到達点が破滅であろうとも、道を歩まぬ死ほど無意味なものはないから。


 「とにかく、歌の聞こえる方向へ……」

 

 途中で会話を止める。

 微かに違和感を感じたからだ。

 ……攻撃が来る予兆。

 俺の本能が、危険信号を発していた。


 「マーブル?」

 「ビスケ、しっかり掴まってろよ」


 言った傍から、風を噴射して横に急移動する。

 俺がいた個所に青色のレーザーが通過した。

 接触部分を焼き切る実体のない一瞬の攻撃。

 当たり所が悪ければ即死となる凶悪な攻性現象。

 攻撃の軌道を辿ってみると、複数の人間が高層ビルに設置されているレーザー砲を手動で操作していた。

 ……空中へ逃れることも想定内だったか。


 更に複数個所から攻撃の気配を感知。

 先ほどのレーザー砲と同様のものだ。

 三百六十度、あらゆる建築物の屋上から立体的に俺を打ち抜くつもりなのだろう。

 数は目視しただけで三十以上。

 本気で殺しにかかっている。


 レーザーの発射によるフラッシュが見えたと同時に、俺は右腕を掲げて極小のブラックホールを生成した。

 制御されているブラックホールに全ての攻撃が吸い込まれ、消えていく。

 予想したよりもレーザーの数が非常に多い。

 中には、俺達の頭上……宇宙空間からの狙撃も含まれていた。

 衛星に取り付けられた兵器を地上から遠隔操作しているんだろうな。


 「お返しだ!!!」


 俺は視力と腕力を強化して、ブラックホールを頭上に投擲。

 丁度、日本上空に漂う衛星にぶつかるよう音速で投げられた小さな黒星は、ホーキング放射の影響で蒸発、後に大爆発を起こし、目標物を巻き添えにした。

 これで上空からの狙撃に怯える必要がなくなった。


 続く第二波。

 今度はタイミングをズラした乱れ撃ちだった。

 四方八方からレーザーが飛び交うが、人を超えた反射速度と身体能力を駆使し、紙一重で回避しながら前進。

 そして攻撃の集中砲火網から一気に飛び抜ける。

 が、その先で待っていたのは三機の大型武装ヘリコプターだった。


 「しつこいんだよッ!!!」


 ヘリコプターがマシンガンの狙いを定め、容赦なく発砲してくる。

 対戦車用の弾丸を受けきるのは難しいため、瞬時に高層ビルの陰に飛び込んだ。

 殺傷力に優れた弾がビルのガラスを盛大に割っていく。

 だがいつまでも身を隠せるわけもなく、ヘリがそのまま追いすがってきた。


 弾丸の嵐が迫るが、高層ビルを死角にして逃げ続けていく。

 ヘリを攻撃してもいいのだが、その場合パイロットの死亡は避けられない。

 ヘリを壊すことは、人を殺すことと同義なのだ。


 「マーブル!前を見て!!」


 ビスケが叫んで俺達の正面を指を差す。

 その先には、ビルを垂直に駆け上がる三人の人間がいた。

 壁面のわずかな凹凸を足場にし、難なく昇るほどの身体能力。

 日本にもかつて警察庁お抱えの機動隊の中に超人が数十名在籍していたというから、きっとそのメンバーかなにかなのだろう。

 手には執行実包が握られている。


 背後にはマシンガンを乱射するヘリが三機。

 前方には超人三人。

 上に逃れれば超人を撒くことはわけないが、弾道を遮るものがない上空では銃器のいい的になることが目に見えている。

 真正面から奴らと戦うしかないだろうな。


 「ビスケ、目をつぶってろ」


 俺の指示に従って彼女が目を閉じる。

 奴らがビルの壁を蹴って俺達に肉薄するまで、わずか数秒。

 その間に、スタングレネードを片手に創り出した。

 ピンを引き抜き、放り投げる。

 奴らは常識外れの反射速度で非致死性兵器を認知し、目を閉じる。

 そこが狙い目だった。


 「くらえ!!!」


 超人相手に手加減はいらない。

 百キロの巨漢を優に蹴り飛ばす勢いで、正面にいた一人のわき腹を蹴り抜く。

 くの字に体が曲がり、背後にいた奴一人を巻き込んで後方のビルへと激突した。

 残る一人は回し蹴りの音を頼りに、こちらへ銃を連続で発砲してきた。

 冷静に、正確に手刀で弾を次々と切断していき、敵の一メートル範囲内まで接近。

 銃撃は無意味と判断したのか、銃を捨ててナイフを取り出し、すれ違いざまに切り付けてくる。

 空中で身を捻って躱し、回避を兼ねた回し蹴りで敵の背中からボレーシュートしてやった。

 そのままビルのガラスを突き破り、気絶。

 『超人』は一トンクラスの衝撃にも耐えられる骨格を有しているから、あの程度では死にもしない。


 「がっ……!!!」


 三人の超人を処理した直後、俺の左腕がレーザーに貫かれた。

 後ろを見ると、数キロも遠く離れた位置から超人と思われる男がレーザー砲で俺を撃ち抜いていた。

 超人の視力ならば、この距離からでも俺を狙うことは難しくない。


 肉の焼ける痛みに悶絶する。

 一部の筋肉が破壊され、ビスケを持つ手がだらりと垂れる。

 その隙を狙ってか、後方から追いついてきたヘリの乗員が飛び出して、俺へと急接近してきた。

 異常な跳躍力……こいつも超人か。


 「一体何人いるってんだよ……」


 男が拳で俺の顔面を殴ろうとするが、右腕でガードする。

 腕の骨がメキメキと砕け、結局頭ごと殴り抜かれる。

 勢いを殺しきれず、俺は地上へと吹っ飛ばされた。

 俺に掴まっていた、彼女も振り落とされる。


 「ビスケェェ!!!!」


 墜落。

 脳震盪でも起こしたのか、視界が歪む。

 体が……動いてくれない。

 この高度からの落下であれば、まずビスケは助からない。

 なのに体は少しも言うことをきいてくれない。

 燃料切れの飛行機に乗った乗客のように、ただただ墜落する瞬間を恐怖して待つことしかできなかった。

 そして……その時がやってくる。


 背中から地面に叩きつけられて、俺はグチャグチャになった。

 内臓は全て潰れ、五感の機能が喪失する。

 何も聞こえないし、何も見えない。

 痛みすらない。

 ただ、冷たいだけだ。

 死の冷たさだった。


 ……世界は元々冷たかった。

 それに抗うように熱がある。

 熱は命を生み出す温床となったが、それが故に俺達は世界に満ちる冷たさと闘うこととなった。

 命と熱は、ほぼ同義なのだ。


 熱というものは、いつか必ず拡散して消える性質を持つように。

 いずれ命も尽き、世界から消えていくだろう。

 命の温もりが消える時、それは死ぬ時を意味している。

 だから、死というものはこんなにも冷たいのだろう。


 ……でも。

 俺は死なない。

 “みんな”と繋がっているから。


 強制的に全身の細胞が活性化されていく。

 肉体の内部構造を再び再構築するために、"みんな"の所有する様々な情報を元に再生を開始。

 代価は“みんな”の命を少しずつ。


 我らが地球の創り賜うた俺という存在が、神秘に包まれていく。

 これこそが命の御業だった。

 命は万物の元に成り得る奇跡そのものなのだ。


 そう……命さえあれば、俺はどんなものだって創り出せる。

 “みんな”が命を与えてくれる限り。

 これこそが、俺の力の正体なのだろう。


 「うっ……っああ、いてぇ」


 体が元に戻っていた。

 俺が壊れてから再生するまで、約十秒を要していた。

 命の取り扱いに習熟すれば、過程をすっ飛ばして結果だけを手にすることさえ可能となる。

 現代に残された数少ない神秘の一つ。

 人には理解仕様もない、世界の理の一部。


 「ビスケ……」


 ビスケは、どこにいるのか?

 彼女のことが心配だ。

 何よりも大切な人だ。

 死んでほしくない。

 長く、生き続けてほしい。


 立って、周囲を確認する。

 アポストロスによって操作されている人々に囲まれていた。

 一万人?十万人?

 数が多すぎてよく分からない。

 見渡す限り、人の大群が一面に広がっている。


 「ビスケ……ビスケェェ!!!!!」

 「マー……ブル……」


 応える声があった。

 微かだが、俺の強化された聴覚は確かにそれを聞いたのだ。


 声のした方向を振り向く。

 そこには、ぐったりしたビスケを担ぐ一人の男がいた。

 彼は数十メートルを跳躍して、歌声の響く方へと彼女を連れ去っていく。

 俺は追いかけようとするが、それを阻むように武装ヘリ三機が低空飛行で現れた。


 「そんなに……お前らは俺達を滅ぼしたいのか」


 強固な意思を感じた。

 人への憎しみではなく、使命感によるもの。


 彼女が遠ざかっていく。

 酷く、孤独を感じた。

 そうだ。

 俺はずっと彼女のことを想っていた。

 ずっと、彼女の傍にいたいと思ったんだ。


 人類を傷付けたくないと思っている俺の気持ちは、確かに本物だ。

 だが、彼女と人類を天秤をかけた時、俺の中でどちらに傾くのだろうか?

 全ての人か、たった一人の女性か。

 自分を優先するのか、人類を優先するのか。


 ……そもそも。

 ビスケの願いを叶えたいと願ったから……俺は人類の守護者で在ろうと。

 世界に誕生したんだ。

 彼女が、いたから。


 ……ああ、なるほど。

 今、やっと分かった。

 俺は、生まれる前から彼女を求めていたんだ。


 そう、理解した途端。

 心の天秤が、完全に彼女の方へ傾いて。

 自身の中にある、狂おしいほどの欲求が渦巻いて。

 彼女の為に、全てを犠牲にする覚悟で。

 自身の行おうとしていることが、完全なエゴだと分かっていながら。

 圧倒的な力を持って。


 俺は人類を攻撃した。

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