表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

4匹目

駅でチカと会った。チカは歩きながら上機嫌な様子で、多部と付き合うに至った経緯をペラペラと喋った。


「そんで、多部君が『付き合ってくれるんですか?』とか聞いてきて、」


私は彼女の顔を見ることができなかった。喋り続けるチカの声をBGMに考え込んだ。自分はなぜこんな思いをしてるんだろうか?苛ついた。チカにとって1番の親友は間違いなく自分だ。でも、そこに多部がいる。後からのこのこやってきて、私から、唯一の親友を、チカを奪うなんて許せない。いや、それでも、彼氏と友達は違うと論理的な自分が言う。チカは私に真っ先に多部とのことを話したのだから、私はやっぱりチカの1番の親友なんだ。でも、でも…


「ねぇ、どうしたの?」


チカは足元を見つめて歩き続ける私の顔を覗き込んだ。


「具合悪いの?」


チカは本当に心配そうだった。やっぱりチカは優しいのだ、私のことを大切だと思ってると確信できた。


「チカに彼氏ができて、私、嫉妬しちゃうな。」


私はわざとヘラヘラと冗談めかして言った。


「アハハ。ユウも彼氏作りなよ、楽しいよ。」


思っていた反応と違かったが、自分がどんな反応を期待していたのかはわからなかった。


「ねぇ、そうじゃなくて。私、」


言葉を区切って考えた。


私、何を言おうとしてるんだ?多部との交際を諦めさせる言葉なんて思いつかないし、この醜い嫉妬をチカに見せて、軽蔑されたくない。私は何を感じているんだろう。


チカとの出会いが私の心を変えてしまったと、はっきり感じた。


今まで誰とも心を許し合わなくても辛くなかったのに、チカともっと心を通じあわせてお互いにとって何よりも1番になりたい自分がいる。


「私、チカの1番になりたい。」


立ち止まって、声を振り絞って、私はそう言った。チカは不思議そうな顔でこちらを見つめている。私はチカに一歩近づき、手を広げ、抱きしめた。

今まで気づかなかったことがある。チカは胸が大きいのだ。ドキリ、とした。


「え?どういう意味?」


と、チカが笑いながら言った。


「そのままの意味だよ。」


私はいつもより低い声を出した。


「ユウは私の1番の親友だよ。」


私はチカを離して、顔を見つめた。彼女は苦笑いのような表情で何かを考えているふうだった。


「違う、私、多部君よりも1番がいい。」


言いながら、自分が何を言っているのかわからなかった。これってまるで


「私と付き合いたいってこと?」


私の思考より先にチカが答えを出した。困った顔をしていた。


「…わからない。」


私はつぶやいて、うつむいた。二人の間に沈黙が流れた。


「なんか、ごめん。」


私はそう言って、踵を返して家路についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ