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3匹目

バイト終わりのチカから、歩きながらの電話が来た。


「私さ、多部君と付き合うことになったんだァ。」


アハハ、とあっけらかんとして、チカは言った。


私には今までの多部とチカとの話の中でそんな様子は少しも感じられなかった。つまり、彼女がそれまで幾度となくあったであろう恋愛的なフラグを私に話していなかったことが明らかになったのだ。それに加えて、付き合うという事実、すなわち彼女が私以上の存在を持つこと、私はそれに苛つき嫉妬した。


この時がそれまで多部の話を聞くたびに感じていた心の黒い霧が嫉妬であることに気づいた瞬間だった。


「ねぇ、この後ちょっと会おうよ!私今駅向かってるからさ。」


チカはいつも通り一方的に話していた。私は返事ができなかった。


「もしもし?予定あるの?」


私は反射的にいや、と返事をして、首を横に振った。


「じゃあ、駅来てよ。私待ってるから。」


私はわざと、ぶっきらぼうに返事をして、言われるがまま駅へ向かった。

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