セーラー服を着ているので機関銃を与えましょう
「ど、どうも」
俺は緊張した面持ちで対面する女性に挨拶をする。
「こちらこそ」
そつない返事。
しばらく沈黙が続く。
俺は必死に話題を提供していく。
「フクロウの神秘について興味ありますか?」
「・・・・・・チッ」
怖い怖い。
それが人に対する態度かよ。
泣くぞ俺、本当に泣いてやろうか。
「もっと女性が好むような内容を考えるべきですね」
女性は上から目線で俺を小ばかにする。
俺は流石にイラついて本を閉じる。
「物語終了」
そういうやいなや女は俺の前から姿を消した。
武南太郎はコミュニケーション能力が著しく低い。
いや、単純にチキンなだけかもしれない。
特に恋愛だと顕著に表れる。
ちょっとしたいざこざで自分が気に食わないとすぐに気持ちが冷めてしまうといった具合だ。
これこそ俺の魔法の欠点である。
本に書き記せば人間ですら生み出すことが出来る。
だが、俺は個性のない人間しか生み出せない。
簡単なことだよな。人間を理解してないってことだ。
いつからだっただろう、人といることに喜びを感じることが無くなったのは。
「ふう」
・・・・・・・・・寂しいー。
あるよねそんなとき。
人とつるむことが好きじゃないけれど、ずっといないのもヤダ。みたいな。
どうしよっかな。
町にいる貴族のメイドを召喚魔法で呼び寄せるか。
なんて考えていると、外から壁を叩く音が聞こえた。
この家には扉が存在しないため、俺は転移魔法を使用して音のしたところに移動する。
そこにいたのは、セーラー服を着た少女だった。
唐突のリアル女子。
こちとら自分で作り出した女ですら嫌われるほど会話がつまらんぞ。
セーラー服女は倒れこんで瀕死状態だった。
きっと最後の力を振り絞ってこの塔の中に入ろうとしたのだろう。
うん、推測することが面倒だからちゃっちゃか治療しますか。
今の俺は天才ドクターとなった。
手を女の前にかざすだけで彼女の生き死を回復させることに成功した。
目を覚ました女は俺を見るなり、
「ここはどこなんですか。こんな世界、もうこりごりです」
と言った。
いや、俺に言われてもね。どうもしようがない。
とりあえず会話だ。
「俺の名前は武南太郎。君の名前はなんだ」
すると彼女は抵抗なくすんなりと答えた。
「私は水瀬奈々です。高校生です。」
高校生なんて言っても理解できないでしょうがと彼女は付け加える。
よかったな、俺があっちの世界生まれで。
「安心しろ。俺はお前がいた世界出身だ。何でも聞いてくれ」
すると鎖から解き放たれたように陽気になる。
「えっそうなんですか。やった、やっと私のことを理解してくれる人に出会えることが出来た」