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第03話 罠を仕掛ける者あれば解く者あり(4)

 翌日、早朝から呼び出されて領主の屋敷に来てみれば、そこには変わり果てた領主の姿があった。


「があっはっは! お前か、ジュリオの孫というのは。ライゼルから聞いてはいたが本当に小さいな!」


 そう言って豪快に笑う領主に、真昼は自分の目を疑った。昨日見た時は死ぬ一歩手前のような顔をしていたのにどうゆうことだろうか。


「たった一晩でここまで回復するか、ふつー」


 真昼の言葉通り、今目の前にいるバアトは昨日の姿からは想像もつかないほど元気になっていた。ライゼルに負けず劣らずの高身長にがっしりとした身体。豪快な口髭と、こぶしが二つ丸ごと入るのではないかと思わせる大口にそこから繰り出される大きな声。


 昨日の衰弱した姿はどこへやら、まさに豪傑を絵にかいたような男がそこにはいた。


「まずはあれだな、俺の命を救ってくれた恩人に礼を言わねばなるまいな。本当に感謝している」

「いえ、人として当然のことを――」

「む! よく見ればお前さん、さすがは樹里男の孫だな、よく似ておる。特に目元がそっくりだな!」

「はぁ、そうです――」


「しかしジュリオの奴、いつの間にか死んでおったとはなぁ! まぁあいつは長生きはしないと思っておったが。あいつ、歳の割に随分と若々しい見た目をしておったから、やばい魔術に手を出していたのではと思っていたが、あながち俺の予想が合っていたのかもしれんなぁ!」

「はぁ」


「ライゼルに聞いたが、山賊や魔物を退治したことといい、俺を苦しめていた魔術をいとも簡単に消し去ったことと言い、やはりお前さんも魔術の腕は相当なもののようだな! 血は争えんということか!」

「はぁ」

「それにしてもお前さん本当に小さいな。ちゃんと食っているか? そんなに小さいと――」


 長い。長すぎる。いつまで一人でしゃべっているのか。それに小さいと連呼するのはやめろ。もう相打ちすら打たないでやろうか。

 真昼がそう思っていると、そんな様子を感じ取ったライゼルが止めに入る。


「父様、積もる話しもそれぐらいで。真昼様もお忙しいでしょうし、本題に入られた方が」

「む。そうだったな」


 バアトはうおっほんと大きく咳払いをする。あまりの大きさに息が真昼のところまで届いて不快だった。


「聞けばお前は俺を助けた見返りとして、自分の待遇を良くしろと、自分の使用人であるカルディナの待遇を良くしろと、そう町民に命令してほしい。そう言ったそうだな。それに間違いはないか?」


 なんだか随分と強気な内容になっているが間違いではないと真昼は思った。


「……はい。その通りです」

「そうか。それを聞いてな、俺は怒りを覚えたのだ。そんな願いをしてくるお前にも、それを承知したライゼルにも」


 真昼は嫌な予感がした。まさかバアトのカルディナ蔑視は相当なものでこんな事受け入れられないと言い出すのではないだろうか。

 バアトはその巨体を大きく動かし、大げさに太い両腕を胸の前で広げる。


「この! 俺の命がたったそれだけの見返りの価値しかないとお前は本当にそう思うのか? 違うだろうそんなはずはない! だから、これ以外にも褒美を取らせようと俺は考えたのだ」


 ということは真昼の願いも叶えられるということらしい。真昼はほっと胸をなでおろした。


「でだ、マヒルといったか? お前に聞きたい。お前は今意中の女はいるか?」


 突然の訳の分からない質問に首を傾げながらも、いいえと素直に答えた。


「そうか。メル! 入ってこい!」


 バアトの声に答えるように、真昼の後ろにある部屋の扉からメルトゥーリアが入ってきた。

 なんで今こいつ? と状況についていけていない真昼はぼんやりとメルトゥーリアの動きを目で追う。ゆっくりと歩きバアトの隣に立った。


「では、褒美として我が愛しの娘、メルトゥーリアをお前の嫁にやろう! 聞けばお前ももう十七と聞く、嫁の一人や二人居てもおかしくは無いだろう!」


 バアトはがははと豪快に笑う。

 意味が分からず、メルトゥーリアとバアトとを何度か見た真昼は、


「はぁ――――――――――⁉」


 事態を飲み込めた直後そう叫んだ。

 どうやら先ほどの悪い予感は当たっていたようだった。

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