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タイトルの無い小説
ちょ、ちょっと待って。たぶん、頭がサキから離れたがらなくて勝手にそう聞こえたのかもしれない。
そうじゃなきゃ、こんな偶然。
「...センセ?」
「おおぉ、...ごめんな。その、
「やだ!もう行かないと!!ホラ、真理子!じゃ、先生。失礼いたします。ほほほ」
バシバシと子の背中を叩きながら歩く親子の後ろ姿をボーっと見送り、やっぱり何か勘違いしたようだと、鉛のように硬くなった足をどうにか動かしながら駅へ向かおうとした時
ベシッ!と何かが背中に当たった。それが足元に落ちた気配がして視線を下げると
そこには
一冊の小説が
「 」
タイトルの無い表紙の下に
小さな字で書かれた作者の文字
そこには、
-サキ-
そう書かれていた。