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エキ・者・カタリ  作者: すかーれっとしゅーと
12/12

辛子明太子のようにホットな駅<後編>

おかげさまで、12話まで書くことができました。

ここまで読んで下さってる方々、ありがとうございます。

~まもなく、博多、博多です。鹿児島線はお乗り換えです~


何か聞こえている。気のせいかな。

そんなことよりも、ケイくんに会ったときのことを考える。

許してくれるとは、言っていた。けど、ホントかな。

ケイくんの住んでいるところについて、そういえば聞いたことなかったなぁ・・・

アパートなのか、マンションなのか、会社の寮なのか。

寮だったら、会社のひとたちにも挨拶することになるのかなぁ・・・

ケイくんは、私のことをどう紹介するんだろう・・・

「彼女」かな、もしかしたら「嫁」?早すぎるよね、ない、ない!

もしそんなことがあれば、私はばっちりファッション決めて、恥ずかしくないようにしなくちゃ。

ケイくんに恥をかかさないように・・・うん、うん。

少し未来のことを考えるのは楽しい。顔が火照ってくる。


~チンコン、チンコン。プシュー~


そんな音が聞こえる。あれ・・・?

私は、目線を左に向ける。左にある、窓の外の様子を伺う。

真横に銀色の柵が見える。動いていない。駅のホーム?

続いて、右を見た。通路には、出口に続く長い列ができていた。

これって・・・駅・・・博多に到着したってこと?

ヤバイ、気がついてよかった。降り忘れたら大変なことになる。

私は、慌てて立ち上がる。右手には、ハンドバッグを持っている。

席を離れて、列の最後尾に続く。溜息を1つ。油断してた。

ホームに降り立つ。同じように降りたひとの後ろに続く。

あと少しで、ケイくんに会える。

彼の前では・・・彼の前では・・・冷静な行動をしないと・・・

本当は、すぐにでも抱き着きたい。でも、彼は、ベタベタしてくるのは嫌い。

抱き着いたら・・・冷静でいないと・・・せっかく許されたのに、また嫌われる・・・

でも、私自身の感情を、押さえつける自身がないよー

そんなことを考えている最中に、目には黒と黄色の動く階段が映っていた。

動きに身を任せて、階下に降りていく。

この時間でも、ひとの多さは地元並みだ。目には映っているけど、気にならない。

ケイくんともうすぐ対面する。緊張してきた。

今日、名古屋で久しぶりに会ったとき以上のドキドキ感。

彼の態度が予想できないからなの?・・・安心感がないから?

彼は許してくれる・・・はず。それに関しては自信がある。

自信があるなら、堂々とできるはずなのに、そこは無理だという私自身がいる。

もう1つの階段を下る。地元の大学の広告が目に映る。

自動改札が見える。切符を用意しないと。

階段を下り切った私は、財布を取り出しながら、改札に向かっていった。


★★★


博多駅筑紫口。

腕時計を見る。9時40分過ぎか。

未だに里美から「乗ったよー」という連絡はない。

博多に着いて、里美とメールをやり取りしてしばらくは、考え事をして時間を潰せていた。

会ったときにどんな行動を取ろうか、そんなことを考えていた。

怒ったふり?無視を決め込む?抱きしめる?

今回はいろいろ振り回されたので、それくらいは許されるだろう。

だが、結論が出なかった。そして、時間潰しにも向かなかった。

仕方がないので、スマホでネットサーフィンをして過ごしていた。

ただし、改札前で待っていると、先に見つかる。

そうなると、先手を取れないので、若干移動している。

筑紫口を少し外に出た、郵便ポストがある辺りだ。

壁に背を預けて、ふう、とため息をつく。

この連絡無精なところは、指摘した方がいいかなと、苦笑する。

スマホでの時間潰しにも限度がある。最後のメールがあって1時間少し。

乗ったら早いはずなのだが・・・鈍行に乗ってないよな?

メールや電話をしてみるか。

ふとそう思いつく。そして、自分に苦笑い。

今までなぜ、それを思いつかないかな・・・俺。

それも余裕がなかったからなのか。

今日はつくづく自分に自信を無くす日だな、そういう日もあるってことなんだろうか。

自分自身に苦々しく思いながら、メール画面を開く。

操作を始めたのと同時に、着信画面!里美からである。

会ったときにどんな態度を取ろうか、そう悩んでいた相手からの、いきなりの電話である。

俺は、気分を落ち着かせるために、一息をついた。落ち着け、俺。

よし、大丈夫だ。スマホを操作し、電話をつなげる。

「里美?」

「ケイくん・・・えっとね、あのね」

電話から聞こえる、彼女の声。何か慌てている。

これは、何かあったのだろうか。彼女を落ち着かさないと、何も聞けないな。

「・・・どうしよう、ケイくん、どうしたらいい?」

「落ち着け、落ち着いて」

「あ!・・・うん、わかったよ、ケイくん・・・」

「で、どうしたんだ?」

彼女が落ち着いてきたみたいなので、質問してみる。

「あのね、新幹線の切符がないのー!どうしよう・・・」

そういうことかー・・・と、言うことは、今はこっちにいる!

「・・・今はどこにいる?」

「改札の前!どうしよう・・・」

「あー、わかった。そこから外は見える?」

俺は電話をしながら、筑紫口から駅ビルに入り、近くの改札口方面に向けて歩く。

「うん、見える・・・あ、ケイくんが見えたー!」

「じゃあ、改札の横にある、案内所に向かって。俺も行くから」

「わかったー助かったよ、ケイくん」

電話を切る。改札の向こうに見慣れた茶髪の女性の姿が見える。

俺は、改札の隣の、案内所に向かった。


★★★


無事に清算を済ませた2人は、筑紫口付近にいた。

1人は茶髪でセミロングの女性。もう一人は、黒髪短髪の男性。

「ケイくん、本当にごめんね・・・」

女性は、男性に向けて一生懸命謝っている。男性は、無言である。

「・・・怒ってる・・・?」

「ああ。」

女性の問いに、短く答える男性。シュンとなる女性。

それを見て、男性はニヤッとしている。女性に見えないように。

女性の方は、ものすごく落ち込んでいる。

その様子を見て、男性は小さく、そして聞こえるようにつぶやく。

「本当にな。」

さらに言葉を続ける。

「顔合わせたときにどうしてくれようかと、こっちはいろいろ考えていたのにな」

女性は男性の方を見る。男性はなおも続ける。

「それが全部無駄になってしまった。ホントにお前ってヤツは」

そう言いながら、男性は女性を捕まえて、正面に向き合う。

女性は全く抵抗をする素振りもない。

「見ていて飽きないよ、存分に頼ってくれ、俺を」

そんな言葉を吐き出して、両手で抱きしめる。彼女も抱きしめ返す。

「ようこそ、博多へ。俺も里美が来てくれて、嬉しい」

彼女の耳元で囁く。

彼は照れくさいのか、そっぽを向いた。顔が赤くなっている。

彼女は、呆然としていた。しばし無言だったが、ぼそっと彼に問う。

「私、ケイくんのそばに、ずっと居て、いいのかな?」

「ああ、ずっと、隣にいてくれ」

彼は答える。彼女はニコッとして、彼から離れる。

「ミッション、コンプリート!」

彼女は叫んだ。彼は驚いた顔をしている。

「えっ?どういうこと?」

さっきまでの雰囲気がどこかに行ってしまった。彼は慌てている。

「ふふん、私、ケイくんのお嫁さん。ふふん」

「・・・え?どういうこと?」

「ふふふ・・・」


博多の夜はまだ始まったばかり。

2人の博多での生活は始まってもいない。

様々な人の生活を眺めてきたであろう、駅前の郵便ポストだけが、新たな2人のスタートを見守っていた。

この2人の話はひとまず終了です。

次回以降は、週1ペースで投稿する予定でがんばります。

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