スタバと煙草と俺の期待
「久しぶり」
「元気そうだな、唯」長野市のスタバで元カノと再開した。
彼女と別れたのは5年前。高校卒業と同時に俺たちの恋愛は幕を閉じた。
「東京で旅行会社に勤めてるって聞いたけど仕事か何かか?」
「ううん、こっちに用事があってちょっとだけ帰ってきたの」5年前は俺から別れようと言い出した。目指す大学もしたい仕事も全く違ったのだ。
でも俺は正直別れたくなかったのかもしれない。
俺は内心期待している。
もう一度付き合えるかもしれないと・・・。
「な、なぁ・・」なんとか話を繋げていいふんいきに持ち込むかと思い、話かけた瞬間、唯に話しを切られた。
「あのね、私結婚するんだ」思いがけない言葉ってやつかな。最初訳がわからなかった。
「そか。おめでと」少しの沈黙のあとその言葉だけ出た。
「明日、彼をお父さんとお母さんに紹介しに行くの」そりゃそうか。5年もほったらかしにしてたんだ。そりゃ誰かに取られるわ。
「あの、親父さんの事だ全力で邪魔されるな」なんとか笑って、締め付けられる心を押さえた。
「そうだね、あのね松本さんね、私と同じ会社に入ってるん・・・」それから何を話したかはあんまり覚えていない。
でも唯の笑顔は俺みたいな作り上げたものとは違い、自然な・・・そしてとても幸せそうなものだった。俺と付き合っている時よりも、もっと幸せな笑顔。
あぁ、悔しな。俺にはそこまでの、笑顔は作ってやれなかったのに。そいつは作れんのかよ。
「じゃあ私、そろそろ行くね。彼次の新幹線で長野駅に来るの」そういって唯は席を立った。
「金はいいよ、俺が払っとく」唯はありがとうと言って、スタバを後にした。
唯が立ち去った後、俺はマルボロの煙草に火を着ける。
「これ、だれにでもありそうだな」そう呟くと、煙草の灰が下に落ちた。
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