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「おはよう。今日はいい秋晴れだな」
一年三組担任の日本史・多田先生は、開口一番そう言った。
「今日のSHRは今月のボランティアワークについて決めてもらうことを先に話しておきます。七限目のHRでやってもらうから、浅沼、頼むな」
浅沼くんが、またかよーという顔をモロに出しながらも、ハイと答えた。
それから多田先生は手持ちの黒い台帳を開いた。
「じゃ、出席取ります。浅沼」
「はーい」
「安藤、伊東……あれ、伊東休みか?」
伊東の返事がないところで早速つまづく。「誰か理由聞いてる奴いるかー?」
教室の後ろの方で、数人の男子が手をあげた。同じサッカー部の友人たち。
「伊東、なんかカキにあたったみたいってメール来てましたー」
「アホでぇー、あいつー」
少しだけ千葉の顔が心配そうに曇る。
「欠席連絡は親御さんから学校に直で電話しろってメール打っといてくれ」
「了解でーす」
「今すぐ打て。打ったら即電源切ってカバンの中な」
「かしこまりー」
学校内ではメールを含めたケータイの使用が、始業前、昼休み、放課後以外完全禁止されている。
「続けるぞー。井上、宇佐美、尾崎、……っと梶原は休み。門倉、工藤、」
亜季は返事をしながら、多美の欠席の理由に思いを馳せる。昨日ケータイメールに連絡があった。敦子と古沢の三人への一斉送信で、とてもシンプルな内容だった。
「なんだかなー」
亜季がぼそりと呟いた独り言は、誰にも聞こえない。
「古沢、堀口、宮岸、」
古沢はSHRの間中ずっとノートを書いている。予習部分。これに授業中を足して完璧なノートになる。古沢のノートはクラス内でもかなり評判で、しょっちゅう見せてと頼まれているが、常に断っている。それは自分の悪筆を見せたくないからだが、今日のノートは後でコピーして渡すことになるからと、丁寧に字を書き直している。
敦子もやはりメールの文面を、何度も繰り返し思い返している。
『明日は梓が亡くなったのでお葬式に行ってきます。』
悲しいとか辛いとか、いっそ大丈夫だよとか、心情が一切入っていない業務連絡に、敦子は大きくため息をついて、窓の外を見つめた。
外では秋特有の高い青空が、抜けるように美しく広がっている。
本日より最終章となります。思っていたより長かったですが、あと少しですので、最後までおつきあいいただけると嬉しいです。




