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君に告ぐ  作者: ミズハラハヅミ
第二部 プラネタリウム心中
35/79

16

 合唱コンクールはとても天気のいい春の終わりだった。

「うわー、なんか人のを聞いてても、自分らが終わらないと全然落ち着かない~!」

 あっちゃんが見た目にも分かるくらいに緊張している。落ち着きなよという多美でさえ、内心はドキドキしている。亜季はどっちかというとわくわくしているし、古沢さんはもともとこういうものに動揺する性質の人ではない。

 三組はくじ引きで五番目を引いていた。今は八組が一青苭のハナミズキを歌っている。うーん、いい曲だ。比較的ポップスが多いけれど、やっぱり平井賢は三クラスがダブっていた。ダブるとはっきり上手い下手が分かるので、避けてよかったんだろうな。

「うちくらいじゃない。ロシア民謡」

 正統派でコーラスを重ねる練習だったが、ハモるのは基本的にとても楽しかった。

「田島くん、すっごいがんばって指導してくれたもんね」

 あっちゃんがそこだけは力説する。三組がどうにかこうにか形になったのは、ひとえに田島総監督のおかげである。千葉さんと亜季の仲介に入ったり、男子をあれだけしごいたりと、彼の大活躍でどんどん上達し、上手くなったと分かってからは、みんな割と歌うことを楽しんでいたような気がする。

「かったるいだけだと思ったのにな。けっこう楽しかった」

「多美が楽しいならよかった。なんかうっとうしいことがあったら、腹から声出すとすっきりするし」

 実に亜季らしい、単純明快なストレス発散法かもしれない。

「だって黙ってるから溜まってくるんだぞ。なんでもいいから大声出せば、すっきりもするよ」

「そう?」

「うん、だから多美にはぜひ合唱部に入ってほしい」

 スカウトは諦めていないらしい。

「だから興味ないって」

「そんなの歌ってみないとわかんないだろ?」

「トレーニングがやだ。面倒」

「それは一理ある。――でも、多美、あんまり溜め込むなよ。愚痴とかそういうのでもなんでもいいからさ」

 多美は思ってもみなかったことを言われて、きょとんとした。

「……亜季がそんな心配してくれるなんて思ってなかった」

「多美は口にしなさすぎ。友達がいのない……」

 あっちゃんに言われるなら分かるけど、まさか亜季に言われるとは思わなかった。

「ほれ、笑え」

「ふにぇええ?」

 背後からほっぺたをつままれて、うにっと引っ張られた。こんなことを突如するのは古沢さんしかいない。

 やっとで離してもらって、ひりひりする頬を撫でていると、千葉さんが呆れた顔で、多美たちを呼びにきた。

「もうあんたたちは何度集合かければいいのよ。はーやーく袖でスタンバって!」

多美たちは慌てて待機コーナーに向かって走りだした。




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