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君に告ぐ  作者: ミズハラハヅミ
第二部 プラネタリウム心中
28/79

「で、それはそうでもないと分かって、俺に言わないなら、きっと家だなと思った。だから何も聞けなかった。……正直、聞きたくないような気がするし」

 そこは梓の懸案でもある。梓は多美をいつものパイプ椅子に座らせて、まっすぐに見つめた。

「でも俺が生きてるうちに出来ることがあるならやっておきたい。――おばさんかおじさんに、何があったの」

「――」

 多美は口をつぐんだ。梓が何をやっても、どうしたってそれは違うのだ。それは残された側の問題でしかない。梓がそこまで考える必要はない。

「多美」

 あの声できつく多美を詰め寄る。

 多美はぎゅっと両の手のひらを握り締めた。けれど梓も譲らなかった。

「多美」

 多美からとっさに出てきた言葉は、まったく予想もつかないことだった。

「梓はどうして実加を好きになったの」

 梓が面食らった顔をして、多美をまじまじと見つめた。多美も自分で言って驚いた。二人きり見つめあったまま黙り込んでしまった。なんで突然こんなことを、と思ったけれど、多美は気づいていた。


 ――実加の代わりに自分が梓の側にいることを気にしている。


 見ていて知っているのは、ただ離れがたく、いつまでも楽しそうに、囁きながら話していた二人の姿。

「なんで、私、梓にこんなに助けてもらっているのかな」

 今度こそ泣きたくなった。

「梓、実加に頼まれたんじゃないの? 私のこと。本当は私が梓のことを見送るためじゃなくて、私のことを梓にお願いしたんじゃないの? だってそうじゃないと、梓がなんでこんなに優しいのかわかんないよ。実加と何があったの。実加と何を話して何を決めたの。なんかあるんじゃないかって、疑うよ」

 梓は何も言わなかった。多美ももうこれ以上のことを言うことができなかった。多美の運んできた梓の誕生日プレゼントが、妙に大きく、置き場のない困った様子に見えた。

 梓は目の前に置かれていたその包みを、ゆっくりとはがした。

 中から出てきたのは簡単なプラネタリウムだ。モニターにつながれてずっと身動きできなかった梓が、寝たままでも楽しくいられるようにと思って選んだものだったが、梓の背中を押したのは、間違いなくそれが星空だったからだった。

「ねぇ、多美。車椅子まわして」

 梓はそう言った。その固い声に、多美は伏せていた顔をあげた。

「屋上に、いこうか」

 今日はそんなに寒くはない。けれど外気にあてて風邪でもひいたら一巻の終わりだ。多美は黙ったまま首を振った。梓はため息をついて立ち上がった。それなら歩いていくだけだ。別にその程度の距離ならば、歩けないわけではない。

「俺と実加ちゃんの、心中現場にさ」

「梓……?」

 愕然とした多美は、その言葉を信じられない気持ちで受け止めた。結局誰にも話さなかったあの事件のことが、今出てくるとは思わなかった。

 きっと俺のこと、軽蔑すると思うけど。

「聞く? 俺と実加ちゃんの思い出」

 梓はつまらなそうにそう吐き捨てた。




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