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梓の誕生日が近いので、学校帰りにプレゼントを探しにプラザに寄ったら、千葉さんと伊東くんを見かけた。二人きりでまるでデートみたいだった。どうしようと思ったら、千葉さんに見つかった。この場合はよかったかもしれない。後で見ちゃったというより、挨拶するほうがずっと気が楽だ。
「梶原さん! どうしたの~」
「うん。誕生日プレゼントを探しに」
「あ、奇遇ね。私たちもよ」
私たち、と勝手にペアにされた伊東くんは、ある棚で真剣に何かを見つめている。多美たちがそこへいくと、伊東くんが見ていたのはワールドカップ仕様のマグカップだった。
「……梶原?」
「どうも。お誕生日プレゼントは伊東くんが探してるの?」
「そうよ。なんか見立ててほしいって頼まれて」
「頼んでないって。偶然一緒になったから、一緒に来ただけだろう」
にこにこして答えたのは千葉さんの方で、困惑したように伊東くんは文句を言う。
「だって、伊東くんって、この間なんか、小学生相手でもないのに、バーバパパのしゃぼん玉なんかあげちゃうし。なんだか心配でさー」
「え?」
バーバパパのしゃぼん玉?
千葉さんの言葉に、多美はふと、梓が楽しそうに遊んでいた姿を思い出す。
「あーれーは、お見舞いだからだろ。子供と遊べる道具がいいって頼まれたから!」
伊東くんの反論に、多美はますます違和感を覚えた。
「はいはい。でもその手でもいいなら、あっちにもいいものあるかも。見てくるね」
千葉さんは思い立ったらすぐに行動らしい。すぐに別のコーナーへ消えていった。
なんとなく二人で残されて、多美と伊東くんは顔を見合わせる。
――聞くべきなのかな。
「もしかして、梓のこと、知ってるの?」
「……どうして?」
「しゃぼん玉。楽しそうに遊んでたから。お友達からもらったって、嬉しそうに」
伊東くんはちょっとだけ軽く息をついた。
「……うん」
伊東くんは今度こそ、言葉を濁さずに教えてくれた。
「中学んときの、サッカー部の先輩なんだよ。とはいっても、先輩もう学校来なくなって三年は経ってるだろう? もう俺くらいなんじゃないかな、見舞い行ってるのも」
たまに梓の元に、お見舞いに来ている友達がいることには、気づいていた。けれど、多美とかちあったことがない。
「なんで今まで言ってくれなかったの」
多美の問いかけは、少し言葉が鋭くなった。伊東は当たり前のように言った。
「先輩から梶原のこと、きちんと聞かされてたわけじゃなかったから」
「ならどうして私と梓のことを知ってるの?」
「……梶原を一回見かけたんだ、病院で」
多美は知らなかった。
「病室行ったら留守だったから、外に出てみたら、庭に二人でいて。どっかで見かけた顔だなと、その時は思ってたんだけど、まさかクラスメートだったとは。次の日の朝、教室で見つけて、ちょっとびびった」
そこまで言って、伊東くんは多美に聞いた。
「梶原は実加ちゃんっていう、先輩の前の彼女のことは、知ってるの?」
そんなことまで知ってるのか。多美はすごく驚いた。この人、本当に定期的にずっと梓のお見舞いをしていたんだと思った。
「知ってるわ。……よく、知ってる」
「そう……。俺、あの子苦手だったし、今梶原が先輩の側にいる方が、ずっとマシかなって思ってさ。がんばってくれないかなあって思ってたんだ」
実加の悪口は聞きたくなかった。けれど怒りを抑えて尋ねてみた。
「なんであの子が苦手だったの?」
伊東はためらいつつも、厳しい一言を言った。
「――先輩をあっという間に殺してしまいそうだったから」




