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君に告ぐ  作者: ミズハラハヅミ
第一部 あたらしい日々
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 千葉さんは三組女子で早くもリーダー格になっている女の子で、何かイベントだのがあると、とりあえず彼女がその辺りを仕切っていた。ぱっと見で迫力のある女の子で、はっきりと自己主張する人だった。当たりはきつそうに見えるけれど世話焼きなところがあるのだろう。取りまとめだとかは、かなりきちんとやってくれている。

「じゃあ、女子はとりあえず自主申告で、希望のパートに名前を書いてください! あと門倉はパート指導よろしく」

 多美は千葉さんが苦手だ。千葉さん自体は嫌いではなくても、彼女の権力というか、逆らうといいことが何もないという勢いが苦手だ。こういう人たちには、なるべく目をつけられないようにしないと。とりあえずあっちゃんと一緒に、アルトの隅っこの方に名前を書いた。

 そうすると、早速黒板から離れたところで亜季が言った。

「ねぇ、千葉、なんであんたの命令きかなきゃいけないのー?」

 うわ、亜季、早速喧嘩売ってるし。千葉さんはむっとした様子を隠さずに言った。

「あんた合唱部だし、さっき歌ってたでしょう? 何の文句があるのよ」

 千葉さんと亜季の視線が、徹底交戦状態になっている。

 あれ、そういえば二人、おんなじ中学出身じゃなかったっけ? この二人なんかあったの? 微妙に険悪な状況に静かな割り込みが入った。

「アルトが多すぎ」

 古沢嬢だ。二人の雰囲気にはまったく頓着せずに、千葉さんに質問していた。

「こんなんでもとりあえず自分の希望は書いてもいいの?」

 二人のやりとりにまったく頓着をしていない質問に、気をそがれたらしい千葉さんは、回れるものならソプラノに行ってくれると嬉しいけど、と答えてきた。

 古沢さんは本当にそのあたりには無頓着で、黒板の前に来て、ちょっと悩んでいた。それからチョークを持って、名前を書いた。ソプラノだった。そしてまだ黒板の前にいた多美を見つけて、言った。

「多美はソプラノ駄目?」

「なんでそんなこと聞くの?」

「地声がそんなに低くないから歌えるような気がしただけ」

 確かに音楽の時間は、どっちでもいいやとしか思ったことがない。膨大なアルトの名前の数と、古沢さんの顔を思わず見比べた。どうしよう。

 悩んだけれど、亜季もソプラノだ。多美は名前をソプラノに書き直して席に戻った。

 千葉さんはそんな様子をじっと見ていて、それからうーんと唸った。

「ホントにアルトが多いな。じゃあ、どうしてもダメじゃない人いたら、ソプラノ回ってくれない?」

 クラス中がざわめいた。何かしら相談している組もある。

 あと二人が亜季に高音がどこまでかあるかを確認して、名前を移した。もうあと何人かが移って、やっとでちょっと見られるような感じになってきたところで、千葉さんが不意に言った。

「じゃあ、あとはじゃんけんでもする? ああ、門倉の親友なんだし、堀口さん、あんた移りなよ」

 あっちゃんは目に見えてびくりとした。おびえているみたいだった。亜季の視線がますます険悪になる。何かあるらしい――くらいのことしか私には分からない。次に始まったのは亜季対千葉さんの口喧嘩だった。

「アツはダメ。この子は声がそこまで出ない。アツよりあんたの方がよっぽど出るよ」

 亜季が真剣にダメだしをすると、

「条件は一緒じゃない。ならオトモダチ同士で同じところに入るほうがいいんじゃないの?」

 と千葉さんがとっても嫌味な言い方で言い返す。

 あっちゃんは亜季の腕をつかんだまま、何も言えずに二人を見ている。

「あんたの言い分は理屈になってない。声で決めないならじゃんけんで決めな」

「それでもいいけど、あんたがリーダーのソプラノだとついてくのも大変ね」

 なんでこの二人こんなに仲が悪いんだろう? それはいっそ見事なくらいの対立だった。こんなにあからさまなの、初めて見た。日頃温和でも、こういうときには強いあっちゃんが、亜季を止めないのがまた不思議だった。

 結局本当にじゃんけんすることになり決着がついたのだが、なんとも後味の残る幕開けになってしまった。



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