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魔族(あね)と俺の共同戦線  作者: 恵/.
第一話 日本・闇天使編
9/60

なんか人間が一番人間離れしてる件


 ……その頃、愛美は。


「……っ」

 夜朗たちがいると思われる地点まで、全力で飛行する愛美。……闇天使の姿になった彼女は、背中の翼と魔法の補助で、蝶香よりも容易に浮遊や飛行ができる。彼女の場合は、蝶香たちツインズのように特殊な処置を必要とせず、種族特性として魔法が扱える。

「あっ……!」

 その途中、愛美に向かって何かが飛来してきた。彼女には知識がなかったが、それは「キラー」が放ったミサイルだった。夜朗たちに向けて放たれたものが、愛美の進路と被ったのだろう。

「くっ……!」

 知識がなくとも、それが危険物であることは容易に分かった。愛美は反転し、ミサイルに向かい合って、身構えた。

「はぁ……!」

 そして、背中の翼を羽撃かせ、魔法を発動させる。夜の闇を利用して、風に闇の加護を与え、刃に変えて撃ち出す。風の刃による攻撃だ。

「っ……!」

 闇は光を遮り、相互作用を絶つ。その加護を受けた風が、ミサイルを分解し、文字通り粉々にしてしまった。起爆装置も分解したせいか、ミサイルは爆発することもなく、夜風に吹かれて流れてしまう。

「……初めてだったけど、いける」

 愛美は別に、闇魔法の特性を理解しているわけではない。というか、自分が使っているのは魔法だという意識も皆無だ。けれども、そうすれば対処できると、本能的に察していた。

「……まただ」

 だが、ミサイルはまだ終わっていない。追撃がまだ残っている。愛美はそれを、気配だけで察していた。それは闇天使の種族特性故か。それとも、彼女自身の危機察知能力なのか。

「……やる。何度でも」

 自分の背後には、夜朗と蝶香がいる。向こうは気づいていないようだが、愛美の目は彼らの姿を捉えていた。……というか、愛美は闇天使の特性によって、夜目が利くのだが。ともかく、すぐ近くにいるのだが、守らなければならない。幸い、自分ならそれは容易だと、先程証明されたばかりだ。

「……すぅ」

 一度深呼吸し、気持ちを落ち着ける愛美。そして、漆黒の眼で、次に来るであろう兵器を睨みつけるのだった。



 ……その頃、夜朗は。


「はぁっ……!」

 夜朗の刀が腹に直撃し、「キラー」が一人吹き飛ばされる。しっかり刃を立てていたのだが、受けた相手に怪我がないのを見るに、刃は潰してあるらしい。

「おらっ……!」

 返す刀でもう一人の銃を払い、そのまま腹に突きをお見舞いする。飛ばされた「キラー」が後方の数名を巻き込み、一気に数を減らす。銃を使う都合上なのか、あまり密集してはおらず、将棋倒しになる心配はなさそうだな。それでも衝撃で纏めて倒す辺り、夜朗が規格外なのか。

「くそっ……!」

「うらっ……!」

 「キラー」の一人が発砲するも、夜朗は銃弾を刀で弾いた。そして、そのまま射手を切り伏せる。……無茶苦茶するなぁ。

「か、囲んで撃つんだ……!」

「「「はっ!」」」

 指揮官と思しき「キラー」がそう叫ぶと、三人の「キラー」が拳銃を構えて、夜朗を取り囲む。多方向から狙われれば、さすがに銃弾を弾ききることなど無理だろう。

「へっ……」

 対する夜朗は、右手に握った刀を逆手に持ち替えた。すると、柄の先―――柄頭と呼ばれる場所から、銀色の鎖が飛び出した。鎖は夜朗の右腕に巻きつき、背中を通って左腕に絡まり、左手のひらに収まる。更にそこから、鎖の代わりに刃が迫り出してきて、もう一本の刀を作り出した。……二刀流という奴だな。そんな機能がついているのか。

「「「……!」」」

「らぁ……!」

 「キラー」たちが驚きながらも、それぞれが引き金を引いた。けれども、夜朗は回転しながら、二振りの刀で銃弾を弾いてしまう。……ここまで来ると、最早曲芸だな。

「せいっ……!」

 回転の勢いを生かして、夜朗は二人の「キラー」を吹き飛ばす。その反動を利用して、もう一人にも二本の刀を叩きつけた。一斉に三人が飛ばされて、その後方にいた「キラー」も巻き込んで、纏めて戦闘不能に追い込まれる。その中には指揮官クラスもいたようで、「キラー」たちの動きが一気に鈍くなった。

「くっ、化け物が……!」

「俺はお前らと同じ人間だっての……!」

 一人の「キラー」が漏らした言葉に、夜朗はそう突っ込みながら、刀で殴って黙らせる。……これで、公園内にいた「キラー」は粗方片付いたな。

「おら、まだやるか?」

「ひぃ……!」

「た、助けてくれ……!」

「こ、殺される……!」

 そして、まだ残っていた「キラー」も、涙目になりながら逃走する。人間離れした彼の振る舞いに、ただならぬ恐怖を感じたのだろう。まあ、あんな常識外れな大技を連打されたら、いくら少年相手でも怖いだろうな。

「……蝶香。まだ来ないのか?」

 周囲を警戒しつつ、夜朗は上空にいるであろう蝶香へ呼びかけた。声が届く距離ではない。だが、彼女の魔法は風を操る。夜朗の声を拾うくらい、そして自分の声を彼に届けるくらい、どうってことない。

「……蝶香? どうした? 返事しろよ」

 しかし、彼女は一向に返答を寄越さない。まさか撃ち落されたのか……? と思うが、上空はずっと銃弾が届きにくい。至近距離の自分が対処できて、風を操れる蝶香が対処できないわけがない。彼女の魔法なら、ミサイルを回避しつつ銃弾を防ぐくらいは簡単だろう。今は夜朗という荷物を抱えていないのだから、余計にだ。

「上で、何かあったのか……?」

 となれば、何かのトラブルを疑うべきだ。しかし、彼女が撃ち落された気配はない。もしそうなら、周りの「キラー」たちはもっと騒がしくするはずだ。それなら愛美が合流したのかとも考えたが、それこそ夜朗に呼びかけて、一緒に撤退するだろう。だから、トラブルの正体は、もっと別にある。夜朗には想像もつかないような、想定外の事態なのだろう。

「くそっ……!」

 それならば彼は、せめて時間稼ぎに徹するしかない。幸い、「キラー」たちは怖気づいたようで、襲ってくる様子はない。このまま睨み合いをするのが一番有効だろう。とはいえ、ただ突っ立っていればいいわけではない。向こうの出方を窺いながら、常に警戒しなければならないのだ。はっきり言って、普通に戦うよりも辛い。気力も体力も、じっとしているだけで大分削られるのだから。

「蝶香……無事でいてくれよ」

 相棒であり、パートナーであり、大切な姉代わり。そんな少女のことを思いながら、夜朗は刀を構えるのだった。

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