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魔族(あね)と俺の共同戦線  作者: 恵/.
第三話 拠点~・魔女編
46/60

特にイベントのない移動フェイズが続きます


  ◇



「おぉ……」

「……いい景色ね」

「うん……」

 艦橋の最上部までやって来た夜朗たちは、そこからの眺めに感激していた。艦橋から望む一面の海は、朝日を浴びてきらきらと輝いている。この時間だと、太陽の角度と艦橋の高さが丁度いい位置になるためだろう。

「不思議よね。今までにも綺麗な海は見たことがあったけど、だからって感動が消えたりしないなんて」

「まあ、あれだな。美しいものは何度見ても美しいってことだろ」

「……」

 夜朗と蝶香が会話する間、愛美は完全に眼前の光景に見入ってしまっていた。そんな彼女に釣られたのかは定かでないが、夜朗と蝶香も暫く無言で海を見続けていた。

「……よし、そろそろ次に行くか」

「ええ」

「うん」

 そして時間が経ち、日の傾きが変わった頃。海の輝きが薄れたために正気に戻った夜朗たちは、艦橋から降りるのだった。



  ◇



 ……そして、船内を探索し終えて。


「……ふぅ。大体こんなところか?」

「そうね。大分回ったんじゃないかしら?」

 船の内部、最下層まで探索した夜朗たちは、食糧貯蔵庫を出たところでそう言った。……尤も、実際にはまだ行っていない区画もあるのだが、扉にロックが掛かっていて入れなかった。恐らく、船の構造に関わる重要な設備などがあって、師匠が意図的にそうしたのだろう。

「食い物もパクって来たし、上の部屋で食べようぜ」

「そうね。そういえば朝食もまだだったし」

「賛成」

 そして彼らは食糧貯蔵庫で手に入れた乾パンを持って、上部の談話室へと向かう。……っていうか、勝手に持ち出していいのか? 師匠が持ち込んだと思われる食糧にはまだ余裕があったが、だからといって無駄に食べるのもまずいだろう。

「にしても、見た目の割にそこまで広くなかったよな」

「入れない部屋とかもあったし、そのせいじゃない?」

「思ったより物も多かったし」

「そうか、なるほどな。……ってか、人数分のベッドとか、どうやって用意したんだ?」

「師匠なら自分で作れそうだけど」

 船の感想を言い合いながら、階段を登る夜朗たち。……そういえば、各人の部屋にはベッドや家具が備え付けられていたな。殆どは氷で出来ていたが、毛布などは持ち込んだもののようだ。どんだけ持ち込んでるんだろうか? 魔法の収納鞄でも持ってるのか?

「んじゃあ、食うか」

 談話室に着いた夜朗たちは、乾パンを食べ始めた。乾パンだけだと喉が渇いてくるが、談話室には水道も完備されているので問題ない。海水を濾過しているみたいだ。……徹夜のノリで、色々と凝った機能を搭載していたのか。

「それにしても、「ガーディアン」地域ね……私たちもあまり行ったことがないわね」

「そうなの?」

 食事中の歓談の中。蝶香の発した言葉に、愛美が驚きの声を上げる。確かに、夜朗と蝶香は世界中あちこちへ行っているイメージがあったからな。

「まあ、用事があまりないからな。「キャプチャー」は魔族を虐げたり隷属させたりしてるし、「キラー」は魔族を殺害してる。けど、「ガーディアン」は隔離だからな」

「それも確かに許せないんだけど、どうしても優先順位が下がりやすいのよね。一応は保護の名目だし」

 他の組織が行っている非人道的な扱いよりも、「ガーディアン」による魔族隔離のほうがまだマシだ。なので、どうしてもそちらを優先しづらい。無論、蔑ろにするわけではないが、夜朗たちにその手の役目が回ってこなかったのだ。

「俺はともかくとして、二人は気をつけろよ。見ただけでは分からないとはいえ、魔族なんだからな。ただでさえ、普通にしてても目立つんだし」

「分かってるわよ。魔族であることを隠さなきゃいけないのは、「キラー」地域でも同じなんだし」

「大丈夫。これでも、ずっと正体を隠して日本で過ごしてきたんだから」

「だったらいいんだけどさ……」

 とはいえ、いやだからこそ、「ガーディアン」相手に油断は出来ない。魔族を外見で判別するのは困難だが、一定の検査をすれば容易に分かるため、安心は出来ない。見る人が見れば分かるものなので、油断していれば「ガーディアン」の捕縛隊に捕らえられることも十分に考えられるのだ。

「でも、心配してくれてありがと」

「当然だろ。仲間なんだから」

 いつになく心配性な夜朗に、蝶香は優しく微笑むのだった。



  ◇



 ……その後、夜朗たちはトランプで遊んでいた。起きてきた師匠やスノーも交えて遊んでいるうちに、やがて日が暮れ、就寝時間に。


「……で、これはどういうことなんだよ?」

 そして夜朗は、自身に宛がわれた部屋で、そんな言葉を口にしていた。その理由は至極簡単で―――

「あら、私がいたら邪魔なの?」

「夜朗お兄さんと一緒がいい」

「夜朗さん、ちょっと下半身が寒いので、暖めてください」

 夜朗の部屋にいるのは、三人の少女。言うまでもなく、蝶香、愛美、スノーの三人だ。彼女たちは毛布を手に、この部屋までやって来たみたいだな。

「私が夜朗と寝るなんて、今に始まったことじゃないでしょ?」

「そりゃそうだけど、態々個室があるのに来るって……」

「一緒に寝てもいい?」

「だから、自分の部屋があるのにどうして俺の部屋へ来るんだよ? 蝶香とかでもいいだろうに」

「私の下半身、変温なので冷えやすいんです。夜朗さんに添い寝して頂ければ、安心して眠れると思うんです」

「いや、毛布巻けよ。それでも足りないんだとしても、師匠にでも頼んで暖めてもらえよ」

 少女たちの理屈に反論していた夜朗だが、所詮は多勢に無勢。そのまま勢いで押し切られてしまう。

「……ったく。そこまで言うなら仕方ないが、頼むから大人しくしててくれよ」

「分かってるわよ」

「うん」

「はい」

 そして最終的には、夜朗が全面的に折れることとなった。……放っておいても女の子が添い寝を希望してくるとか、相変わらずの羨ましい環境だな。リア充爆発しろ。

「よ、っと」

 夜朗は毛布を抱えて、ベッドから降りた。女の子を床に寝かせて、自分だけベッドで寝ることは出来ないのだ。逆に女子たちをベッドに引き込む手もあったが、それはさすがに問題ありなので自重した。

「私、夜朗お兄さんの隣がいい」

「あ、私もです」

「ちょ、二人とも、夜朗の隣は危ないわよ……!」

「はい?」

「蝶香お姉さん。家族は並んで「川」の字が基本だよ?」

「カワ? 何ですか、それ?」

「日本人じゃない奴に漢字の話をするなよ……」

「もう……分かったわよ。―――ただし、スノーは駄目よ」

「どうしてですか!?」

「喧嘩するなって」

 わいわい騒ぎながら、床に寝転がる夜朗たち。その後もずっとお喋りを続け、深夜遅くになってようやく眠るのだった。

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