表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔族(あね)と俺の共同戦線  作者: 恵/.
第二話 中国・歌姫編
24/60

作戦なんて、大雑把で適当なほうが存外うまくいくものさ


  ◇



 ……問題は色々とあったものの、彼らはどうにか進んでいき、集合地点まで辿り着いた。


「さてと……エディから聞いてるとは思うけど、もう一度説明するわよ」

 グナリは一同を集め、作戦手順の再確認を行う。

「まず、私が部下に指示して、「キャプチャー」施設の警備を引きつけるわ。つまり、陽動ね」

「その後、私たちが突入します。最初は六人同時に、その後二手に分かれて内部を捜索します」

 まずはグナリたちが陽動し、エディたちが突入。そして手分けする。シンプルな作戦だな。

「一応、外からも援護要員をつけるけど。正直、あまり期待しないで頂戴。あくまで、エディたち強襲捜索班がメインよ」

 規模が大きい施設のようだが、内部探索はたったの六人。正直、全然人手が足りない。それでもやるのだろうか?

「囚われた魔族を見つけたら、援護要員が護送するわ。分かれるときは、壁抜きが出来る人をそれぞれに入れて頂戴」

「壁抜きが出来るのは、うちだとスティだけでしょうけど……夜朗班だと、愛美にお任せできますか?」

「うん……多分、大丈夫」

「そうなると、班ごとに分かれたほうがいいですね」

「ちょいまち」

 とんとん拍子で話が進み、チーム分けも普段通りにしようとしたら、フェアリーが異議を唱えた。

「蝶香とエディは交換して欲しい。……作戦中にエディとスティが喧嘩したらまずいからな」

「ちょ、フェアリー……!? さすがの私もそのくらい自重しますから……! それにそれなら、スティと愛美を入れ替えれば―――」

「アホか。愛美を慣れない面子の中に入れられるか。それに、今までどれだけ作戦中に喧嘩して、危なくなったんだと思っている? 折角、他と交換が出来るんだ。この機会に、少し反省しろ」

「そ、そんなぁ……」

 日頃からエディとスティの喧嘩に悩まされていたフェアリーは、これを機に、彼女を反省させることに。……うん、喧嘩の光景が目に浮かぶな。

「グナリ、それでいいか?」

「そっちのことは、私は関知しないわよ」

「だそうだ。蝶香もそれでいいな?」

「別にいいけど……」

 フェアリーの提案を、グナリも蝶香も了承した。蝶香のほうは不服そうだったが、事情が事情だからなのか、不満は口にしない。

「うぅ……フェアリーのいけず」

「ともかく、魔族を集めたら、壁を抜いてそこから外へ。エディ班が分かれるなら、内部構造を覚えてもらう必要はなさそうね」

 チーム換えを強制されていじけるエディ。彼女には構わず、グナリは作戦の説明を続けた。

「感知能力のある子に内部を精査させて、全員救出できたら撤退してもらうわ。エディ、フェアリー、これを」

 そしてグナリは、エディたちに何かを渡した。一見すると、白紙のカードに見えるが……何かのアイテムなのだろうか?

「それを使えば、短距離だけど音声通信が出来るわ。今までみたいに、伝達係を配置するのは手間だから、今後はこういう形で連携を取ることになりそうね」

 このカードは、どうやら通信機器らしい。蝶香たちの脳内チャットと、原理的には同じなのだろう。魔族の中には、こういうアイテムを作るのに特化したものもいるらしいな。

「ふむ……俺と蝶香が同じ班である以上、こういうものはあったほうがいいな」

「っていうか、今までが不便すぎたのよね……」

 スティの言うように、今まではかなり大変だった。テレパシーのような能力を持った魔族を司令部に配置し、襲撃班に命令を送っていたのだが、この方法だと相互通信が出来ない。つまり、現場でイレギュラーな事態があっても、指示を仰げなかったのだ。それも、このカードによって改善されるだろう。

「撤退後の逃走経路と集合場所はエディたちに教えてあるわ。……一応はこんなところだけど、何か質問は?」

「そうだな……夜朗たちは、何かないか?」

 エディがいじけて使い物にならないので、代わりにフェアリーがそう尋ねる。エディ班は予め聞いていたことも多いだろうが、夜朗たちは初めて聞かされただろうからな。

「陽動で全部の警備が引きつけられるわけじゃないし、非戦闘員もいるだろ? そういうのはどうするんだよ?」

「陽動はあくまで、戦力を分散させるものよ。過度な期待はしないで。スムーズに侵入するためだと思って頂戴。それと、非戦闘員は気絶でもなんでもさせればいいじゃない。その辺はそっちに丸投げするわ」

 夜朗の質問に、返ってきたのはご尤もな意見。……もしかして、この規模の施設には突入したことがないのか? だから、その辺のことは分かってないとか? そんなわけないよな……?

「じゃあ、私も一ついいかしら? もし、囚われてる魔族が救出を拒否した場合、どうすればいいの?」

「……そんなこと、あるの?」

 続く蝶香の質問に、グナリはそんな疑問を返した。……不当に囚われた魔族が、施設から出て行きたくないということがあるのだろうか?

「前に一度あったの。そのときは規模が小さかったから、十分に話し合う時間もあったんだけど……今回は、ちょっと無理そうだから」

「ああ、そういえばあったな。確か、マーメイドの女だったっけか?」

「ええ、その子よ。……あのときは、結局、無理に連れ出せなくて置いてきたんだけど」

「なるほどね……そういうこともあるか」

 過去にあった予想外の事態を聞いて、グナリは唸るように呟いた。暫し考えた後、対応を蝶香に伝える。

「その場合、無理に連れ出さなくていいわ。ただし、必ず報告はすること。でないと、内部精査班が混乱するわ」

「了解」

 質問も終わり、これで説明も終了だな。

「じゃあ、時間までここで待機。時間になったら移動するわよ。それまで各自休憩するなり、作戦会議するなりして頂戴」

「「「「了解」」」」



 ……というわけで、作戦開始までの自由時間となった。各自、突入時のチームに分かれて、事前の打ち合わせをすることに。


「うぅ……フェアリーと離れ離れなんて、この世の終わりです」

「いくらなんでも大袈裟だろ」

 さて、こちらはエディ、夜朗、愛美のチーム。フェアリーにチーム換えを強制されたエディが、未だにいじけていた。というか落ち込んでいた。

「夜朗は寂しくないんですか……? 蝶香と離れ離れなんですよ……? あ、愛美に乗り換えたから平気なんですね」

「だからなんでそうなるんだよ……。そりゃ、蝶香と離れるのは不安だけどさ。別に一人っきりなわけじゃないんだ。フェアリーやスティがついていれば、滅多なことがなければ大丈夫だろ?」

「……少し、蝶香に同情しました」

「何でだよ……?」

「えっと、二人とも……その、いいの? 打ち合わせしなくて」

 しかしながら、エディが終始こんな調子なので、こっちは全然打ち合わせが進まないのだった。……大丈夫なのか、本当。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ