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その日は朝から風もなく、晴れ渡っていた。
日差しは穏やかで、窓から降り注ぐ光は温かだった。
保育園の近所にある佐藤さんちのおじいさんとおばあさんは、いつものように二人そろって縁側でお茶を飲んでいた。
「今日は良い天気ですねえ、おじいさん」
「うむ、縁側で日向ぼっこするには絶好の天気じゃのう、ばあさん」
「ねえ、おじいさん」
「なんだい、ばあさん」
「あたしの目の錯覚かもしれませんがね。空をソリに乗ったサンタさんが飛んで行ったような気がしますよ」
「わしもじゃよ、ばあさん。わしも同じものが見えた気がするのう」
「おや、おじいさんもですか」
「うむ、ばあさんと同じ空を飛ぶサンタさんが見えた」
そろって湯飲みに入った熱いお茶をすする。
ふうっと息を吐き出す。
「あたしの生まれた時分には考えられませんでしたがね。サンタさんも空を飛ぶ時代になったんですねえ」
「うむ、どうりでわしらも年を取るわけじゃ。サンタさんが空を飛ぶ時代になるなんてのう」
「時代は進みましたねえ、おじいさん」
「うむ、そうじゃのう。ばあさん」
窓から差し込む午前中の明るい光に二人は目を細める。
「そういえば、もうすぐクリスマスですか」
「うむ、クリスマスじゃのう」
「クリスマスが来たら、孫たちにプレゼントを渡さなければいけませんね」
「うむ、近所に住む孫たちのプレゼントは何が良いかのう。息子、娘夫婦と相談して、決めておかないといけないのう」
縁側に座るおじいさんとおばあさんは、午前中のんびりと日向ぼっこを楽しんでいた。