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水差しのなかの孤独な水面に、
呼吸を震わせつつ近付き、
夜明けの消え入る明かりの、その喪に
触れえよ。降りゆく下弦月、
光が欲しいのならば、窓を
開いて風を迎えよ。どちらの
御手を伸ばされるのか、喉を
絞って音を発せよ。ファとラの
調和にガラスが響いて、そこからあなたが、
二重の道をやってくる。いいえ、
出向くべきはこの私、どうか、
天に足を戻されて――そうか、
たゆたう香り、揺れている、この家、
あらゆる水気が目覚めて落ちゆく夜長。
――――解題――――
この詩のイメージは、神秘学的知識がある程度ないと難しいかもしれない。言葉通りに受け取ってもらえれば良いのだが、その言葉が示す本来の意味=イメージが何を象徴しているのかについては、少しばかり助けがあったほうがよいかとは思う。だが、ここで神秘学の知識についてひとつひとつ書いていくわけにもいかないので、最も困難な部分である「ファとラ」についてだけ述べることにする。これらの音は三度の関係にあり、三度の音は霊界への窓となりうる。ファとラはアルファベットにするとFとAである。ここからは私が独自に考えた象徴になるが、Aはアルファベットの最初にして、「在る」を意味し、Fはその形が魚に似ていることから、「Fish」のF、魚はもちろんキリストを象徴するので、キリスト存在こそが、「私は在る」を地上に紹介した、ということを意味する。