19/19
19
19
一本の木がすでに、思考によって
そびえだした。豊かに伸びる枝にそって、
林檎、蜜柑、葡萄に檸檬、香り立つ
本来の顔が目覚めて降り立つ――
何を彼らは眠っていたのか。知られぬこと、
あらゆる人が通り過ぎ、わずか一個と
少しばかりの実だけ思われ、幹に流れる
力強さを、運命を、皆、忘れる。
だが今、星座が輝き、木々の形を
結んだ御手よ、人はおそらくあなたに倣い、
数々の奇蹟へと心を洗い、
長い時を待つでしょう。誰かが命を
測りだす。しかしそこには終わりがない。
一本の木と同じように、限りない。
――――解題――――
この詩における木は、霊的な成果を象徴している。だがここでは時間の経過も存在しており、はるか過去から現代までの流れがある。かつては思考によってそびえた木が、現代では「あなた」の技によって人々の内に形成される。人間は、それを意識していかなくてはならない。




