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庭はこの、見えない光の
従属で、彼女は枯れ木の
先にさえ、赤い定めの
薔薇を呼ぶ。家の窓辺の
陽だまりに、彼女を覚ます
鈴がある。己を明かす
覚悟があれば、手に取り呼吸と
意識を合わせ、鳴らせよ風雨と。
彼女はあらゆる医術、そして狂える
破壊の衝動。大鎌の、
うなりと冷気が示すあの、
激しく跳ねる鍵盤。細く憂える
病を熱し、彼女の髪が
揺れる。金地に降りゆく闇が。
――――解題――――
「彼女」とは、この一連のソネット群に登場する第三の人物である。語り手の私、高次の霊的存在であるあなた、そして私と共に庭を生きる者が彼女である。彼女はすなわち私である。だが私は、彼女を通じて庭以外のものとも繋がっている。




